グランピング施設の立地選びガイド|山林・農地・市街化調整区域の法規制と土地探しの方法

グランピング施設の成否を分ける最大の要素は「立地」です。どんなに客室や設備にこだわっても、立地選びを誤ると集客に苦戦し、投資を回収できないリスクが高まります。逆にいえば、グランピングに向いた土地を見極められれば、開業後の経営を大きく有利に進められます。

監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)

この記事では、グランピング施設の立地選びで押さえるべき条件を5つの軸で整理したうえで、山林・農地・市街化調整区域といった土地タイプ別の法規制と活用可否を解説します。
目次

グランピング施設の立地選びが経営を左右する理由

グランピング経営において立地は「変えられない要素」です。客室やサービスは開業後に改善できますが、立地は変えようがありません。ホテル・旅館利益向上プロジェクトの解説でも、市街地から車で2時間以内に行ける場所にある立地が理想的とされており、それ以上遠くなる場合にはサービスを充実させて特徴を出す必要があるとされています。

グランペディアの事業計画解説でも、用地選定には開発許可申請の有無や上水下水の引き込み工事の必要性にも注意すべきで、広大な土地でロケーションが良いという理由だけで選定すると想定外の支出が必要になることもあると指摘されています。

参照元:ホテル・旅館利益向上プロジェクト「グランピングの経営の始め方」 / グランペディア「グランピング事業の開業準備と事業計画立案のポイント」

つまりグランピングの立地選びでは、「ロケーションの良さ」だけでなく「法規制」「インフラ」「アクセス」「コスト」を総合的に判断する必要があるのです。

グランピング用地に求められる5つの条件

グランピング施設の土地を選ぶ際に検討すべき条件を5つの軸で整理します。すべてを完璧に満たす土地は稀ですが、優先順位をつけて判断するための基準として活用してください。

条件1.アクセスの良さ(市街地から車で2時間以内)

ホテル・旅館利益向上プロジェクトでは、市街地から車で2時間以内がグランピング施設の理想的な立地とされています。グランピングのターゲット層はキャンプ初心者やファミリー層が中心のため、「気軽に行ける距離感」が集客力に直結します。高速道路のICから30分以内に到達できる立地であれば、アクセス面でのハードルはかなり低くなるでしょう。

条件2.自然環境・ロケーションの魅力

グランピングの本質は「自然の中での贅沢な体験」です。海・山・湖・川・森林など、ゲストが「わざわざ行きたい」と思えるロケーションであるかが重要な要素になります。MEGABOXのグランピング立地解説でも、自然環境との調和がグランピング施設の競争力に直結すると述べられています。

参照元:MEGABOX「成功するグランピング施設の立地選びと収益最大化のための戦略」

条件3.法規制のクリア(都市計画法・農地法・森林法)

立地とロケーションが良くても、法規制をクリアできなければ開業できません。グランプレスの土地選び解説でも、選ぶ土地によっては市街化調整区域に該当し建物が建築できないケースがあるため注意が必要だと指摘されています。土地タイプ別の法規制については次のセクションで詳しく解説します。

参照元:グランプレス「グランピング施設の計画からオープンまでの流れ【1】土地選びのポイントや注意点」

条件4.インフラの整備状況

グランピング施設の運営には、最低限の電気・水道が必要です。グランペディアの解説でも、上水下水の引き込み工事の必要性に注意すべきとされています。インフラが未整備の山林や原野の場合、引き込み工事だけで数百万円のコストが発生するケースもあるため、土地の購入価格だけでなくインフラ整備コストまで含めた総額で判断する必要があります。

条件5.土地の広さと地形

グランピング施設は客室間のプライベート感が重要なため、テント間・ドーム間に十分な距離を確保できる広さが求められます。ホテル・旅館利益向上プロジェクトでも、土地はある程度の広さがあると独自のサービスが展開しやすくなる一方、広過ぎると管理が難しくなるとも指摘されています。5〜10棟規模の小型施設なら1,000〜3,000㎡程度、大型施設なら5,000㎡以上が目安になるでしょう。

参照元:ホテル・旅館利益向上プロジェクト「グランピングの経営の始め方」

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条件理想的な状態妥協可能な範囲
アクセスICから30分以内・市街地から車2時間以内2時間を超える場合は独自の体験価値で補う
ロケーション海・山・湖・森林などの自然景観田園風景でも「非日常感」があればOK
法規制市街化区域・用途制限なし市街化調整区域でも工作物で対応可能な場合あり
インフラ電気・上下水道引き込み済み電気のみでも浄化槽+井戸で対応可能
広さ3,000㎡以上1,000㎡でも5棟以下の小型施設なら対応可能

土地タイプ別の法規制と活用可否|山林・農地・市街化調整区域

グランピングに向いた土地は、その多くが山林・農地・市街化調整区域に該当します。それぞれ異なる法規制がかかるため、「その土地でグランピング施設を開業できるのか」を事前に確認することが不可欠です。

山林でグランピングを開業する場合

山林はグランピングのロケーションとして最も人気が高い土地タイプです。森林に囲まれた非日常感はゲストの満足度に直結します。一方で、森林法による規制がかかるため、事前確認が欠かせません。

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規制内容対応
林地開発許可1ha以上の民有林を開発する場合、都道府県知事の許可が必要開発面積を1ha未満に抑えるか、許可申請を行う
保安林規制保安林に指定されている場合、立木の伐採や土地の形質変更が制限される保安林の解除は困難。保安林指定の有無を事前確認
伐採届・造成届1ha未満でも立木を伐採する場合は伐採届が必要市町村の林務課に届出

山林でグランピングを開業する場合、大規模な造成を避けて既存の地形を活かす設計がコスト面でも法規制面でも有利です。基礎工事不要の構築物を使えば、林地開発許可の対象にならない規模で施設を設置できる可能性が高まります。

農地でグランピングを開業する場合

農地でグランピング施設を開業するには、原則として農地転用の手続きが必要です。グランプレスの農地転用解説では「農地をそのままではグランピング施設にすることはできない」と明言されており、農地転用の手続きを経て認められればできる場合と、農地としてしか使えない場所で基本的には転用が難しい場合があるとされています。

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農地の区分転用の可否グランピングへの適性
農用地区域内農地(青地)原則不可× 農振除外の手続きが先に必要で、ハードルが非常に高い
甲種農地原則不可× 大規模で条件の良い農地のため保護が厳しい
第1種農地原則不可(一部例外)△ 例外的に認められるケースは限定的
第2種農地条件付きで可能○ 代替性がないことの説明が必要
第3種農地原則可能◎ 市街地化が進むエリアの農地で、転用のハードルが低い

参照元:グランプレス「農地でグランピング施設やキャンプ場の開業は可能?」

農地転用の手続きは市街化区域内なら届出制で比較的スムーズですが、市街化区域外では許可制となり審査に数か月かかることもあります。手続きの窓口は市町村の農業委員会です。農地転用が認められるためには、転用後の事業計画が確実に実行される見込みがあることが審査のポイントになります。

市街化調整区域でグランピングを開業する場合

市街化調整区域は原則として建物の建築が制限されるエリアですが、グランピング施設の場合は構築物の選び方次第で開業の可能性が残ります。

  • 建築物を伴わない形式……テントサイトのみの簡易キャンプ場であれば、建築物に該当せず開発許可が不要になるケースがある
  • 工作物を活用する形式……建築基準法上の「建築物」に該当しない工作物であれば、開発許可の対象外になる可能性がある。ただし自治体によって判断が異なる
  • 都市計画法第34条の特例……観光施設として地域活性化に資する場合に、例外的に許可が下りるケースもある

いずれの場合も、都市計画課への事前相談が必須です。旅館業法の許可は都市計画法とは別に保健所で取得する必要があるため、都市計画課と保健所の両方に並行して相談を進める必要があります。

土地タイプ別の相談窓口
  • 山林……都道府県の林務課(林地開発許可)+市町村の林務課(伐採届)
  • 農地……市町村の農業委員会(農地転用)
  • 市街化調整区域……自治体の都市計画課(開発許可)
  • 共通……保健所(旅館業許可)+消防署(消防設備)

グランピング用地の探し方|土地探しの具体的な方法

グランプレスの土地選び解説では、自分の財産として遊休地を持っている場合やキャンプ場を経営している場合を除いて、ほとんどの事業者はまず土地探しから始める必要があるとされています。グランピング用地を探す主な方法を整理します。

参照元:グランプレス「グランピング施設の計画からオープンまでの流れ【1】」

STEP
不動産ポータルサイト・山林売買サイトで探す

田舎の土地や山林を専門に扱うサイト(山林バンク、田舎暮らし物件など)で候補地を探す方法です。立地・面積・価格で絞り込めるため、広域で候補を洗い出すのに向いています。ただし掲載されている土地の法規制やインフラ状況は自分で確認する必要があるため、気になる物件が見つかったら現地確認と自治体への相談を並行して進めましょう。

STEP
地元の不動産業者・自治体の空き地バンクに相談する

ポータルサイトに掲載されていない未公開の土地情報は、地元の不動産業者が握っているケースが少なくありません。自治体が運営する空き地バンク・空き家バンクも有力な情報源です。開業予定エリアが決まっているなら、現地の業者と直接コンタクトを取るのが効率的です。

STEP
既存施設(キャンプ場・ホテル・農園)の遊休地を活用する

すでにキャンプ場やホテルを運営している事業者が、敷地内や隣接する遊休地にグランピングエリアを増設するパターンです。インフラが既に引かれている場合が多く、許認可も変更届で対応できるケースがあるため、新規に土地を取得するよりもハードルが低い選択肢といえます。

STEP
農地の一時転用で試験営業する

グランプレスの解説でも触れられている方法で、農地法に基づく一時転用(3年以内)を活用して、テントサイトや簡易なグランピング施設を期間限定で運営する方法です。一時転用で市場の反応を確認してから、本格的な農地転用に切り替えるという段階的なアプローチが可能になります。

立地制約を乗り越える構築物の選び方

山林・農地・市街化調整区域に共通する課題は「建築物を建てるハードルが高い」ことです。建築確認申請の手続き、基礎工事の造成コスト、開発許可の取得。これらの壁は、構築物の選び方で乗り越えられるケースがあります。

構築物タイプ別のグランピング適性比較

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構築物タイプ建築確認基礎工事山林との相性市街化調整区域
木造コテージ必要必要△ 造成コスト大× 開発許可必要
コンテナハウス規模により必要必要な場合が多い△ 搬入路の確保が課題× 開発許可必要
ドームテント自治体判断不要な場合が多い△ 自治体判断
ベルテント不要が多い不要○ テント貸与業として
インスタントハウス原則不要(行政判断)不要◎ 造成最小限○ 工作物として対応可能性あり

グランピング用地としてのインスタントハウスの活用

インスタントハウスは、2011年の東日本大震災での被災地支援をきっかけにした名古屋工業大学大学院の北川啓介教授の研究をもとに、LIFULLと名古屋工業大学大学院による共同研究にて開発した新しい構築物です。法的に「工作物」として扱われ、グランピング施設の立地制約を緩和する特性を複数持っています。

  • 建築確認申請が原則不要(行政判断による)……市街化調整区域や農地転用後の土地で、建築物を建てるハードルが高いケースでも、工作物であれば対象外になる可能性がある
  • 基礎工事不要・ペグやビスで固定……山林の斜面や農地の軟弱地盤でも造成を最小限に抑えられ、土地への負担が小さい
  • 設営は数時間(約6時間)……土地取得から開業までのリードタイムを短縮できる。繁忙期に間に合わせたい開業にも対応しやすい

断熱材を360°に使用しているため外気温の影響を受けにくく、標高の高い山林や冬場の寒さが厳しい立地でも通年営業が可能です。サイズを調整することも可能なため、客室棟だけでなく、受付棟・ラウンジ・BBQ屋根スペースとしても活用できます。

本体価格に設営費が含まれているわかりやすい価格設定で、特注仕様の場合は製作期間が別途必要です。動産として扱われるのが一般的で、撤去・移設の柔軟性も確保できます。

また、断熱材の発泡ウレタンを用いた独自の構造により、高い断熱性能と熱循環効率を実現した新しいサウナであるインスタントサウナは、100V電源で運用可能な電気サウナストーブを採用しており電気工事が不要です。グランピング施設の付加価値設備として、インスタントハウスと組み合わせて導入することで、客単価アップと差別化を同時に実現できます。

自治体への事前確認は必須

工作物として扱われるかどうかの最終判断は自治体(都市計画課・土木事務所)が行います。候補地が決まったら、土地の法規制確認と合わせて、構築物の設置可否についても事前相談を行ってください。

グランピングの立地・土地選びでよくある質問

グランピング施設の立地として理想的な条件は?

市街地から車で2時間以内のアクセス、海・山・湖などの自然景観、法規制をクリアできる用途地域、電気・水道のインフラ、客室間の距離を確保できる広さの5条件が基本です。すべてを満たす土地は稀なため、アクセスと法規制を最優先に絞り込み、他の条件はコストや構築物の工夫でカバーするのが現実的です。

農地でグランピング施設を開業できますか?

農地のまま開業することはできず、農地転用の手続きが必要です。第3種農地は転用のハードルが比較的低く、第2種農地も条件付きで転用が可能ですが、農用地区域内農地(青地)や甲種農地は原則として転用できません。農業委員会への事前相談で自分の土地の区分と転用可否を確認してください。

山林でグランピングを開業するにはどんな許可が必要ですか?

1ha以上の開発なら林地開発許可、1ha未満でも立木の伐採には伐採届が必要です。保安林に指定されている場合は伐採・形質変更が制限されるため、事前にハザードマップと保安林指定の有無を確認してください。旅館業法の許可や消防設備の届出は山林でも共通して必要です。

市街化調整区域でグランピング施設は開業できますか?

構築物の選び方次第で可能性はあります。テントサイトのみの形式や、建築基準法上の「建築物」に該当しない工作物を活用する形式であれば、開発許可の対象外になるケースがあります。ただし自治体によって判断が異なるため、都市計画課への事前相談が必須です。

グランピングの土地探しはどこから始めればいいですか?

まずは開業したいエリアを決め、不動産ポータルサイト・山林売買サイト・自治体の空き地バンクで候補を洗い出します。候補地が見つかったら、法規制の確認(都市計画課・農業委員会・林務課)とインフラ状況の確認を同時並行で進めてください。既存のキャンプ場やホテルの遊休地を活用する方法も有力な選択肢です。

グランピング用地にインスタントハウスを使うメリットは?

建築確認申請が原則不要(行政判断による)で基礎工事も不要なため、山林の斜面や市街化調整区域でも造成を最小限に抑えて施設を設置できる可能性があります。設営は数時間(約6時間)で完了し、断熱材を360°に使用しているため通年営業が可能です。動産として扱われるのが一般的で、撤去・移設の柔軟性も高い点がメリットです。

まとめ

グランピングの立地・土地選び 成功のポイント
  • 立地選びでは「アクセス」「ロケーション」「法規制」「インフラ」「広さ」の5条件を軸に判断する
  • 山林・農地・市街化調整区域はそれぞれ異なる法規制がかかるため、候補地が見つかったら即座に自治体への事前相談を行う
  • 農地でのグランピング開業には農地転用が必須。第2種・第3種農地なら転用の可能性あり
  • 市街化調整区域では、工作物として扱われる構築物を活用すれば開業の道が開ける可能性がある
  • 土地探しは不動産サイト・自治体の空き地バンク・地元業者への直接相談を組み合わせる
  • 建築確認が原則不要で基礎工事不要のインスタントハウスは、立地制約の大きい土地でグランピング開業を検討する際の有力な構築物の選択肢

グランピング施設の成否を左右する最大の要素は立地であり、立地は開業後に変えることができません。だからこそ、土地選びの段階で法規制・インフラ・アクセス・ロケーションを総合的に検討し、「この土地で本当に開業できるのか」を確認しておくことが重要です。

法規制のハードルが高い山林や市街化調整区域の土地でも、構築物の選び方次第で開業の道が開ける場合があります。建築確認が原則不要で基礎工事も不要なインスタントハウスのような工作物を選択肢に加えることで、立地の制約を超えてグランピング施設を実現できる可能性が広がります。候補地が見つかったら、まずは自治体への事前相談から動き出してみてください。

監修者

山中典(やまなか つかさ)

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO/名古屋工業大学共同研究員。インスタントハウスの開発・事業を軸に、災害支援から多様な空間活用まで幅広く展開している。

東証プライム上場LIFULLグループ|導入実績240棟以上

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