新事業進出補助金でグランピング開業はできる?統合後の新制度と要件を解説

「新事業進出補助金でグランピングを開業できないか」と調べている方に、まずお伝えしたい重要な変化があります。新事業進出補助金は2026年に他制度と統合され、現在は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として公募が行われています。旧制度を前提とした情報のまま準備を進めると、要件やスケジュールを見誤るおそれがあるため注意が必要です。

監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)

結論をいえば、グランピング事業は統合後の新制度でも補助対象になり得ます。この記事では、制度統合の経緯と最新の公募スケジュール、グランピングが対象になる条件とならないケース、従業員規模別の補助上限額、採択に向けた事業計画のポイントまでを一次情報にもとづいて解説します。
目次

新事業進出補助金は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に統合

2026年度の制度再編の経緯

新事業進出補助金は、事業再構築補助金の後継として2025年に始まった制度でしたが、単独の制度としては2026年6月19日受付分の第4回公募をもって区切りを迎えました。そのうえで2026年6月29日、ものづくり補助金と統合した「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募要領が公開され、制度は新しい形に引き継がれています。

統合後の制度は、技術的革新性のある製品・サービスの開発や、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出などに係る設備投資を支援するものです。グランピングへの参入で使うのは、このうち旧・新事業進出補助金の内容を引き継いだ「新事業進出枠」になります。

旧名称で情報収集している方へ

「新事業進出補助金 グランピング」で見つかる記事の多くは、統合前の旧制度をもとに書かれています。要件・補助上限・スケジュールは統合後に変わっている可能性があるため、これから申請するなら統合後の公募要領を基準にしてください。

第1回公募のスケジュール

統合後の第1回公募スケジュールは、公募開始が2026年6月29日、申請受付が2026年9月30日、申請締切が2026年10月30日の18:00まで厳守、採択発表が2027年1月予定とされています。

参照元:中小企業庁「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました」

グランピング事業は補助対象になるのか

新事業進出枠の対象要件(新規性・新市場の考え方)

新事業進出枠の対象は、新たに製造・提供する製品やサービスが自社にとって新規性を持ち、かつその市場が自社にとって新たな市場であることです。ここでいう新規性は申請する事業者にとっての新規性であり、日本初・世界初である必要はないとされています。新たな市場も、既存事業で対象となっていなかった顧客層を指すという整理です。

この定義に当てはめると、たとえば飲食店が宿泊業へ、農業者が観光事業へ進出してグランピング施設を開くケースは、典型的な「新市場への進出」として説明しやすい構図になります。既存の旅館・ホテルであっても、これまで対象にしていなかった顧客層に向けた新しい業態と位置づけられれば、検討の余地は十分にあるはずです。

参照元:中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」

グランピングが対象になり得る理由と過去の傾向

前身にあたる事業再構築補助金では、グランピング事業で数多くの採択事例があったとされています。地域資源を活かした観光事業として政策目的と合致しやすく、統合後の制度でも同じ文脈で事業を組み立てられることが、対象になり得るとされる根拠です。

ただし裏を返せば、それだけ多くの事業者が同じ発想で申請してきた分野でもあります。事業再構築補助金の時代にはグランピング事業での申請が集中した経緯があり、ありきたりな計画では埋もれてしまう点は、あらかじめ覚悟しておくべきでしょう。

参照元:モノコト・サポート「新事業進出補助金でグランピングは補助対象?」補助金プラス「新事業進出補助金はグランピング事業で申請できる?」

対象外になるケースに注意

見落としやすいのが対象外の規定です。従業員数0人の事業者や、新事業進出枠では設立・創業後1年未満の事業者は対象外とされています。つまりこの補助金は、既存事業を営む事業者がグランピングへ多角化するための制度であり、これから初めて創業する方向けの制度ではありません。

純粋な新規開業でグランピングを始める場合は、小規模事業者持続化補助金や自治体の創業支援など、別の制度を軸に検討するのが現実的です。グランピングで使える補助金の全体像は、こちらの記事で整理しています。

参照元:中小企業経営支援事務所「第1回公募開始!新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を徹底解説」

補助上限額・補助率・満たすべき要件

従業員規模別の補助上限額

新事業進出枠の補助上限額は、従業員数に応じて次のように設定されています。

スクロールできます
従業員数基本の補助上限額賃上げ特例適用時
1〜20人2,500万円3,000万円
21〜50人4,000万円5,000万円
51〜100人5,500万円7,000万円
101人以上7,000万円9,000万円

注目したいのは補助下限額が750万円と定められている点です。小さすぎる投資計画は申請の土俵に乗らないため、宿泊棟の複数導入や水回り・受付棟まで含めた、まとまった規模の設備投資で組み立てる制度だと理解しておいてください。補助率は事業者の規模や特例の適用によって2分の1から3分の2の範囲で設定されているため、自社がどの条件に当たるかは公募要領での確認が必要です。

賃上げ要件など事業計画で満たすべき条件

統合後の制度では、補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、付加価値額の年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上といった要件が定められています。給与関係の要件は目標未達の場合に補助金の返還義務が生じるとされており、軽い気持ちで数字を置ける項目ではありません。

事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準に保つ要件などもあるため、グランピングの収支計画には人件費の伸びを最初から織り込んでおく必要があります。要件の全文は必ず公募要領の原文で確認してください。

参照元:中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」城陽商工会議所「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」

補助対象経費とグランピングでの使いどころ

グランピング事業の計画では、対象経費のうち建物費と機械装置・システム構築費が中核を占めるとされています。宿泊棟やサニタリー棟の整備、予約・決済システムの導入といった、開業に不可欠な投資がここに乗ってくるイメージです。

一方で、土地の取得費のように対象外となる経費もあります。どの投資が対象経費のどの区分に当たるかは採択後の手続きにも影響するため、見積もりの段階から経費区分を意識して整理しておくと後がスムーズです。

参照元:Glampedia「【2026年最新】グランピング補助金の完全ガイド」

採択に向けたグランピング事業計画のポイント

申請が集中した過去があるからこそ差別化が最重要

前述のとおり、グランピングは補助金申請の定番テーマになった歴史があります。審査側は「ドームテントを建てて自然の中で宿泊を提供する」という計画を何百件も見てきているはずで、施設の形だけでは差がつきません。

差別化の軸になるのは、その土地でしか成立しない体験です。地域の食材・温泉・アクティビティとの組み合わせ、ターゲット顧客の絞り込み(ペット同伴・ワーケーション・インバウンドなど)、通年集客の仕掛けを、既存事業の強みと接続して語れるかが勝負どころになります。

地域資源との結びつきと数字の根拠

付加価値額4.0%以上の成長という要件がある以上、事業計画は「想い」だけでは通りません。棟数×稼働率×客単価の売上構造、季節変動の織り込み、人件費の伸びまで、数字の根拠を積み上げた収支計画が不可欠です。

申請の流れと注意点

電子申請の準備とスケジュール逆算

STEP
公募要領の確認と要件チェック

自社が対象者に当たるか、投資計画が補助下限額750万円を超えるかを最初に確認します。

STEP
電子申請アカウントの取得

電子申請に必要なアカウントは取得までに時間がかかる場合があるため、真っ先に手続きしておくのが安全です。

STEP
事業計画書の作成と見積もり収集

宿泊棟や設備の見積もりを集め、収支計画と要件(付加価値額・賃上げ)の整合を取りながら計画書を仕上げます。

STEP
申請受付期間内に提出

第1回公募の受付は2026年9月30日から10月30日18時までです。締切直前はシステムが混み合いやすいため、余裕を持って提出してください。

交付決定前の発注NG・後払いの原則

補助金全般に共通する注意点として、交付決定前に発注・契約した経費は補助対象外になるのが一般的です。採択の連絡だけで動かず、交付決定を待ってから設備の発注に進んでください。

入金は事業完了・実績報告後の後払いが原則のため、数千万円規模の投資をいったん立て替える資金繰りも必要になります。金融機関からの融資と組み合わせる前提で、早めに金融機関へ相談しておくのが現実的です。

宿泊棟の選定で補助後の自己負担も変わる

補助率が3分の2でも、残りの3分の1と立て替え資金は自己負担です。採択されるかどうかに意識が向きがちですが、宿泊棟の選定次第で補助後の自己負担額と事業リスクは大きく変わります。

インスタントハウスなら投資圧縮と短工期を両立できる

2011年の東日本大震災での被災地支援をきっかけにした名古屋工業大学大学院の北川啓介教授の研究をもとに、LIFULLと名古屋工業大学大学院による共同研究にて開発した新しい構築物であるインスタントハウスは、補助金を活用したグランピング計画の宿泊棟として相性のよい選択肢です。

基礎工事が不要で、ペグやビスによる固定で設置でき、設営は数時間(約6時間)で完了します。補助事業には完了期限があり、期限内に設備の導入と支払いを終えて実績報告まで進む必要があるため、工期の短さは補助事業を計画どおりに完了させるうえでの強力な保険になります。天候による工事遅延のリスクが小さいことも、屋外開発では見逃せない利点です。

本体価格に設営費が含まれているわかりやすい価格設定のため、申請書類の経費内訳にも落とし込みやすく、断熱材を360°に使用した構造で外気温の影響を受けにくいことから通年営業の収支計画とも整合します。サイズを調整することも可能なため、複数棟でまとまった投資規模を組む計画にも対応しやすい設計です。

新事業進出補助金とグランピングに関するよくある質問

これから初めて創業する個人でも申請できますか?

難しいと考えられます。新事業進出枠では設立・創業後1年未満の事業者や従業員数0人の事業者は対象外とされているためです。純粋な新規開業の場合は、小規模事業者持続化補助金や自治体の創業支援制度を軸に検討するのが現実的です。

旧・新事業進出補助金で申請準備をしていました。どうすればよいですか?

統合後の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の公募要領を確認し、新制度の様式・要件で準備し直してください。事業計画の骨子は活かせるはずですが、賃上げ関係の要件や補助上限は旧制度と異なる可能性があるため、原文での再確認が必要です。

補助金はいつ受け取れますか?

事業完了後の後払いが原則です。設備の導入と支払いを終え、実績報告の確認を経てからの入金となるため、投資額をいったん立て替える資金計画が前提になります。金融機関の融資と組み合わせて設計するのが一般的です。

グランピング事業の採択率は公表されていますか?

業種・テーマ別の採択率は公表されていないのが一般的です。前身の事業再構築補助金ではグランピングでの申請が集中した経緯があるとされるため、地域資源と結びついた差別化と数字の根拠が採択の鍵になると考えられます。

まとめ|旧制度の情報を捨て、統合後の要領で組み立て直す

この記事のポイント
  • 新事業進出補助金は2026年に「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」へ統合され、第1回公募の申請受付は9月30日から10月30日18時まで
  • グランピングは新事業進出枠の対象になり得るが、設立1年未満・従業員0人の事業者は対象外で、既存事業者の多角化向けの制度
  • 補助上限は従業員規模別に2,500万〜7,000万円(特例適用で最大9,000万円)、下限は750万円で、賃上げ関係の要件には返還義務もある
  • 申請集中の歴史があるテーマだからこそ、地域資源と結びついた差別化と数字の根拠、そして宿泊棟選定による自己負担の設計が鍵になる

制度の名前が変わった今は、情報の鮮度そのものが競争力になるタイミングです。旧制度ベースの記事や記憶で判断せず、統合後の公募要領を原文で確認するところから始めてください。

第1回公募の受付開始まで、準備期間は限られています。要件チェックと電子申請アカウントの取得、宿泊棟の見積もり収集を並行で進めれば、まだ十分に間に合うスケジュールです。

監修者

山中典(やまなか つかさ)

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO/名古屋工業大学共同研究員。インスタントハウスの開発・事業を軸に、災害支援から多様な空間活用まで幅広く展開している。

株式会社LIFULL ArchiTechは、東証プライム上場企業である株式会社LIFULLの子会社です。

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