グランピング事業計画書の書き方|融資・補助金で評価される項目と収支計画

グランピングやキャンプ場の開業準備が具体化してくると、必ず向き合うことになるのが事業計画書です。融資の審査でも補助金の申請でも提出を求められる書類でありながら、「宿泊業の計画書に何をどこまで書けばいいのか」をグランピングに即して解説した情報は多くありません。

監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)

この記事では、グランピング事業計画書の書き方を、盛り込むべき項目・収支計画の立て方・許認可の書き方の順に解説します。日本政策金融公庫の創業計画書の様式をベースに、グランピングならではの補強ポイントを整理したので、融資や補助金の申請を控えている方はそのまま作成の手引きとしてお使いください。
目次

グランピング事業計画書が必要になる3つの場面

事業計画書は、創業動機や事業の内容、資金計画、収支の見通しなどをまとめた書類です。自分の構想を整理するためのものであると同時に、対外的には次の3つの場面で提出や説明を求められます。

金融機関からの融資審査

日本政策金融公庫や民間金融機関から開業資金を借りる際、審査の中心になるのが事業計画書(創業時は創業計画書)です。グランピングは設備投資額が大きくなりやすい業態のため、返済原資となる収支の見通しをどれだけ具体的に示せるかが審査の行方を左右します。

補助金・交付金の申請

国や自治体の補助金でも、事業計画書は審査書類の核になります。融資向けとの違いは、地域経済への波及効果や事業の新規性といった政策目的への合致が評価される点です。活用できる制度の全体像は、こちらの記事で整理しています。

自治体・地権者・協力者への説明

見落とされがちですが、土地の賃借交渉や自治体への相談、工事業者・運営パートナーとの協議でも事業計画書は説得の道具になります。書面で構想を示せる事業者は、それだけで信頼度が変わってくるものです。

事業計画書に盛り込む基本項目

日本政策金融公庫「創業計画書」の10項目がベースになる

何を書くべきかは、日本政策金融公庫の創業計画書の様式を土台にすると迷いません。様式は公庫の公式サイトからダウンロードでき、次の10項目で構成されています。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 従業員
  5. 取引先・取引関係等
  6. 関連企業
  7. 借入の状況
  8. 必要な資金と調達方法
  9. 事業の見通し
  10. 自由記入欄

金融機関に提出する場合はこの様式が実務の標準になり、補助金申請でも求められる情報の骨格はほぼ共通です。まずはこの10項目を埋める前提で情報を集めていきましょう。

参照元:融資・事業計画サポートオフィス「【日本政策金融公庫】創業計画書の書き方・ポイント」

グランピングならではの補強ポイント

様式を埋めるだけでは、グランピング事業の説得力は伝わりきりません。主要な項目ごとに、宿泊業ならではの補強ポイントを対応表にまとめました。

スクロールできます
創業計画書の項目グランピングでの補強ポイント
創業の動機その土地・地域でやる理由を語る。地域資源との結びつきは補助金審査でも効く
経営者の略歴等宿泊・観光・接客の経験がなくても、運営体制や外部パートナーで補完できる根拠を示す
取扱商品・サービス宿泊プランの単価・想定季節・ターゲットを具体化。サウナや焚き火など付帯体験も明記
取引先・取引関係等予約経路(OTA・自社サイト)と手数料、食材や備品の仕入先を整理
必要な資金と調達方法設備の見積書と紐づけて内訳を提示。自己資金の割合と準備の経緯が信頼につながる
事業の見通し棟数×稼働率×客単価の計算根拠を示す(詳細は次章)

グランピング特有の収支計画の立て方

事業計画書の中で審査担当者が最も時間をかけて読むのが、収支計画です。グランピングの収支には宿泊業ならではの型があるので、その型に沿って組み立てていきます。

売上は「棟数×稼働率×客単価」で組み立てる

グランピングの月間売上は、棟数×営業日数×稼働率×1棟あたり客単価で計算するのが基本形です。たとえば3棟・稼働率50%・1棟あたり4万円なら、30日営業で月商180万円という見通しになります。

審査で問われるのは、この計算式に入れた数字の根拠です。客単価は周辺の競合施設の料金帯から、稼働率は競合の予約カレンダーや地域の観光統計から導いた根拠を添えると、机上の数字ではないことを示せます。初年度の稼働率は認知が育つ前提で保守的に置き、2年目以降に段階的に上げていく設計が現実的です。

季節変動・繁閑差の織り込み方

グランピングは繁閑差の大きいビジネスとされており、年間を平均稼働率だけで語る計画は実態とずれやすくなります。ハイシーズン・ミドル・オフの3区分で稼働率と料金を分けて試算し、月別の資金繰り表まで落とし込んでおくと、審査側の不安を先回りして解消できます。

オフシーズンの打ち手(平日プラン・企業研修・サウナなど通年型の付帯体験)を計画段階で書き込んでおくことも、閑散期対策を考え抜いている証明のひとつです。

変動費中心の費用構造を計画の強みに変える

グランピング事業は、食材費やリネン費など売上に連動する変動費の比率が高く、固定費の比率が低い費用構造になりやすいとされています。固定費が軽い事業は売上が落ち込む月でも赤字になりにくいとされるため、この構造自体が計画書でアピールできる強みになるわけです。

逆にいえば、借入返済や地代など毎月固定で出ていく費用をどれだけ抑えられるかが、事業の耐久力を決めます。初期投資と固定費を軽くする設備選定の考え方は、記事の後半で取り上げます。

参照元:リゾートグランピングドットコム「グランピング経営情報/事業計画・モデル収支・開発費用」

許認可・法規制の見通しも計画書に明記する

収支と並んで実現可能性の評価を左右するのが、許認可への対応状況です。「開業できるのか」という前提が揺らぐ計画は、数字がどれだけ良くても評価されません。

旅館業法など許認可の確認状況を書く

宿泊料を受けて人を宿泊させるグランピング施設は、旅館業法の営業許可(簡易宿所営業など)の取得が必要とされています。食事を提供するなら飲食店営業許可、サウナや入浴設備を設けるなら公衆浴場法との関係も確認事項に加わります。

計画書には「どの許可が必要で、どこまで確認済みか」を時系列で書いてください。保健所への事前相談の実施日や担当窓口まで書かれた計画書は、準備の実行力を示す何よりの証拠です。開業までの手続き全体の流れは、こちらの記事が参考になります。

施設の設置に関わる手続きの見通しを書く

宿泊棟の種類によっては、建築基準法や都市計画法の手続きが計画の工期と費用を大きく動かします。市街化調整区域では建物を建てられない場合もあるため、候補地の区域区分と、選ぶ宿泊設備が法律上どう扱われるかは、資金計画の前に確認しておきたいポイントです。

設置予定の構造物ごとの法的な扱いを整理したうえで、「行政への確認結果」を計画書に一文添えるだけで、審査側が抱く不確実性は大きく減ります。詳しくは次の記事をご覧ください。

融資・補助金で評価される計画書に仕上げるコツ

数字に根拠を持たせる

評価される計画書とされない計画書の差は、数字の裏に根拠があるかどうかに尽きます。競合施設の料金表、現地の交通量や観光入込客数、設備の見積書といった一次情報を集め、計画書の数字とひとつずつ紐づけてください。裏づけ資料を別紙として添付する形にすると、本文も読みやすくなります。

リスクと対策をセットで書く

天候不順、閑散期の落ち込み、競合の新規参入。リスクを書くと審査に不利になりそうで避けたくなりますが、実際は逆です。リスクを自覚し、対策(料金の柔軟化・法人利用の開拓・付帯体験の追加など)まで用意している計画は、経営者としての解像度の高さを印象づけます。

自己資金・経歴との一貫性を保つ

創業計画書の審査では、項目を埋めること以上に、内容の一貫性や数字の根拠、自己資金の準備状況が評価されるとされています。動機・経歴・資金・見通しがひとつのストーリーとしてつながっているか、提出前に第三者へ読んでもらい、話の飛びがないか確かめておくと安心です。

参照元:マネーフォワード クラウド会社設立「日本政策金融公庫の創業計画書とは?書き方を注意点とあわせて解説」

初期投資の設計が計画書の説得力を決める

設備選定で初期費用と回収期間が大きく変わる

グランピングの初期投資は宿泊棟の選定でほぼ決まります。大型のドーム型施設を複数建設する前提では、宿泊事業として成り立つ状態まで1棟あたりおよそ2,000万円の初期費用が必要という試算もあるほどです。

初期投資が膨らむほど、借入額と毎月の返済という固定費が重くなり、損益分岐点も上がります。融資審査の視点でも、投資回収期間の長い計画はリスクが高いと映るため、宿泊棟の単価を抑えて回収期間を短くすることは、計画書の説得力を直接高める打ち手になります。少ない棟数で始めて、稼働実績を根拠に増設するシナリオを計画書に描ければ、審査側との対話もかみ合いやすくなるでしょう。

参照元:起業コンパス「グランピングの事業計画書3つのポイント!」

インスタントハウスで投資を抑えた計画に

2011年の東日本大震災での被災地支援をきっかけにした名古屋工業大学大学院の北川啓介教授の研究をもとに、LIFULLと名古屋工業大学大学院による共同研究にて開発した新しい構築物であるインスタントハウスは、初期投資を抑えたグランピング計画と相性のよい宿泊棟です。

基礎工事が不要でペグやビスによる固定で設置でき、設営は数時間(約6時間)で完了します。本体価格に設営費が含まれているわかりやすい価格設定のため、事業計画書の「必要な資金と調達方法」欄に見積もりをそのまま落とし込みやすく、資金計画の透明性という面でも扱いやすい設備です。断熱材を360°に使用した構造で外気温の影響を受けにくく、通年営業の計画も組み立てやすくなります。

サイズを調整することも可能なため、貸切1棟から始める小規模プランにも、複数棟展開にも対応できます。製品の詳細は下記からご覧ください。

グランピング事業計画書に関するよくある質問

事業計画書のテンプレートはどこで入手できますか?

融資を視野に入れるなら、日本政策金融公庫の公式サイトで配布されている創業計画書の様式をベースにするのが実務的です。補助金申請では制度ごとに指定様式がある場合が多いため、公募要領で確認してください。

キャンプ場とグランピングで事業計画書の書き方は違いますか?

基本の構成は同じです。異なるのは収支の中身で、グランピングは宿泊棟への設備投資と客単価が大きく、キャンプ場は区画貸し中心で単価が低い代わりに投資も軽くなります。自分の業態に合わせて数字の前提を組み替えてください。

稼働率はどのくらいで見積もればよいですか?

立地や競合状況によって大きく異なるため、一律の目安を置くより、周辺施設の予約状況や地域の観光統計から根拠を持って導くことが大切です。初年度は保守的な数字で組み、悲観・標準・楽観の複数シナリオを用意しておくと審査でも説明しやすくなります。

事業計画書は専門家に頼らず自分で作るべきですか?

税理士や商工会議所の支援を受けるのは有効です。ただし融資では面談があり、数字の根拠や動機を自分の言葉で語れるかが見られるため、丸投げは避けるべきとされています。骨子は自分で作り、仕上げを専門家に磨いてもらう分担が現実的です。

まとめ|事業計画書は「根拠の束」で仕上げる

この記事のポイント
  • グランピング事業計画書は融資審査・補助金申請・関係者への説明の3場面で必要になる
  • 盛り込む項目は日本政策金融公庫の創業計画書10項目をベースに、宿泊業ならではの情報で補強する
  • 収支は棟数×稼働率×客単価で組み立て、季節変動と変動費中心の費用構造まで織り込む
  • 許認可の確認状況と初期投資を抑えた設備選定が、計画の実現可能性を裏づける

事業計画書づくりは、書類仕事のようでいて、実は事業設計そのものです。数字の根拠を集める過程で立地の弱点や料金設定の甘さに気づけたなら、その計画書はすでに役割を果たし始めています。

完璧な文章より、根拠の束を。競合施設の料金表を1枚集めるところからでも、計画書の説得力は今日から積み上げられます。

監修者

山中典(やまなか つかさ)

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO/名古屋工業大学共同研究員。インスタントハウスの開発・事業を軸に、災害支援から多様な空間活用まで幅広く展開している。

株式会社LIFULL ArchiTechは、東証プライム上場企業である株式会社LIFULLの子会社です。

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