
グランピングを開業したいけど、初期費用ってどのくらいかかるの? 本当に儲かるのか、収益のイメージも知りたい…
グランピング開業の費用が気になって調べている方は多いはずです。実は、グランピング事業の初期費用は規模や宿泊ユニットの種類によって数百万円〜数億円まで大きな幅があります。
一方で、ホテルや旅館と比べると初期投資を抑えやすく、投資回収も早い傾向にあるのがグランピング事業の魅力です。ただし、費用を正確に把握しないまま開業に踏み切ると、資金ショートや過大投資で失敗するリスクもあります。
監修者


株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
この記事では、グランピング開業費用の内訳から宿泊ユニット別の投資効率比較、収益モデルのシミュレーション、そして事業計画書の作り方まで、開業準備に必要な数字をまとめて解説します。
グランピング開業費用の全体像と内訳
グランピング施設を開業するために必要な初期費用は、5棟規模の施設で最低4,000万円程度が一つの目安とされています。ただし、この金額はあくまでスタートラインであり、立地条件やインフラの整備状況、宿泊ユニットの種類によって大きく変動します。
初期費用の相場感(規模別の目安)
グランピング開業の初期費用は、棟数と施設のグレードで大きく変わります。目安は以下のとおりです。
| 規模 | 棟数の目安 | 初期費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 3〜5棟 | 4,000万〜8,000万円 | 個人開業・無人運営向き |
| 中規模 | 8〜10棟 | 8,000万〜1億5,000万円 | 有人運営の標準モデル |
| 大規模 | 15棟以上 | 1億5,000万円〜 | ブランド施設・高付加価値型 |
有人施設で開業する場合は最低5〜6棟(7,000万〜1億円)、無人施設であれば1〜2棟(4,000万〜8,000万円)が安定的な計画を描けるラインとされています。
費用の内訳を項目別に解説
初期費用の内訳は大きく分けると、土地取得費、インフラ整備費、宿泊ユニット費、共用施設費、許認可関連費、備品・家具費の6項目です。
| 費用項目 | 費用目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 土地取得・賃借 | 数十万〜数千万円 | 5棟規模なら約2,000㎡が必要。地方と人気エリアで大きく差が出る |
| インフラ整備(造成・給排水・電気) | 600万〜4,800万円 | 給排水だけで500万〜1,000万円のケースも。浄化槽設置でさらに増加 |
| 宿泊ユニット(テント/ドーム/コテージ) | 1棟あたり100万〜2,000万円以上 | ドームテントなら購入費約100万円、建設・内装込みで800万〜1,000万円 |
| 共用施設(管理棟・シャワー・トイレ) | 数百万〜数千万円 | 新築するか既存建物を活用するかで大きく変動 |
| 許認可関連費 | 50万〜100万円 | 旅館業法に基づく簡易宿所営業許可の申請費用 |
| 備品・家具・設備 | 約70万円〜 | BBQグリル、焚き火台、寝具、調理器具など |
見落としやすい費用項目
土地やユニットの費用には意識が向きやすいですが、次のような費用を見落とすケースが少なくありません。
- 消防設備(自動火災報知設備・誘導灯)…1棟あたり30万〜50万円
- 保険関連(施設賠償責任保険・火災保険・PL保険)…初期費用で約30万円
- ITシステム導入(監視カメラ・Wi-Fi・PMS予約管理)…合計約70万円
- キュービクル(高圧受電設備)…300万〜500万円が必要になるケースあり
- アクセス道路の拡幅工事…1mあたり30万〜50万円
これらの「隠れコスト」を合計すると数百万円規模になることもあります。事業計画の段階で必ず織り込んでおきましょう。
宿泊ユニット別の費用と投資効率を比較
グランピング施設の宿泊ユニットは大きく「ドームテント型」「コテージ/ヴィラ型」「トレーラー型」の3タイプに分かれます。どのユニットを選ぶかで初期費用も投資回収のスピードも変わるため、事業計画の初期段階でしっかり比較しておくことが大切です。
ドームテント・コテージ・トレーラーの費用比較
| 項目 | ドームテント | コテージ/ヴィラ | トレーラー |
|---|---|---|---|
| 1棟あたりの費用(設置込み) | 800万〜1,000万円 | 2,000万円〜 | 500万〜1,500万円 |
| 耐候性 | 中〜高 | 高 | 高 |
| 断熱性 | 中 | 高 | 中〜高 |
| 建築確認 | 不要な場合が多い | 必要 | 不要な場合が多い |
| 集客面での特徴 | 非日常感・写真映え | 快適性・高級感 | 気軽さ・ユニークさ |
ドームテントは1棟あたりの費用がコテージの半額以下で済む点が大きなメリット。近年は価格面・運営面・集客力の3拍子が揃ったドームテントを選ぶ事業者が増えています。


投資回収期間の違い
ユニットの選択は投資回収期間にも直結します。初期投資が小さければ、金利や減価償却費の負担も軽くなり、黒字化のハードルが下がります。
テント型の場合、管理棟の新築が不要なケースでは初期投資の回収が1〜2年で実現する事例もあります。2016年にオープンした繁盛施設では、2〜3年で初期投資を回収した例が複数報告されています。
コテージやヴィラで整備する場合は億単位の投資が必要になるため、回収期間は5〜7年以上になるのが一般的です。ただし、建物としての資産価値が残りやすく、将来的な売却(イグジット)の選択肢が持てるという違いがあります。
一方、テントやトレーラーはコテージやヴィラに比べて初期投資はおさえやすいものの、メンテナンスや維持管理の手間とコストがかかることや、数年で資産価値がほとんど残らないという点に注意が必要です。
全国グランピング協会は、初期投資の目安を「年間予測売上高の2倍まで」としており、これを超える投資は過大投資のリスクがあると指摘しています。そこで、新たな選択肢として注目されているのがインスタントハウスです。テントよりも高い居住性と耐久性を備えながら、一般的な建築物よりも初期費用を大幅に抑えて手軽に導入できます。
初期投資は抑えたいものの、メンテナンスコスト、耐久性も重要です。 そこで、新たな選択肢として注目されているのがインスタントハウスです。テントよりも高い居住性と耐久性を備えながら、一般的な建築物よりも初期費用を大幅に抑えて手軽に導入できます。


グランピング経営の収益モデルと利回り
グランピング事業が注目される最大の理由は、ホテルや旅館に比べて高い収益性が見込める点にあります。ここでは、売上の計算方法と経費構造、そして利回りの実態を整理します。
売上の計算式
グランピング事業の売上は、次の計算式でシンプルに算出できます。
年間売上 = 客単価 × 稼働率 × 棟数 × 365日
(例)客単価3万円 × 稼働率50% × 5棟 × 365日 = 年間約2,738万円
グランピング施設の宿泊料金は1人1泊あたり2万〜3万円程度が相場です。1室あたりの年間売上高が1,500万円を超えると、繁盛施設の水準とされています。
経費率の目安と変動費化のコツ
グランピング事業の経費は「変動費の比率が高く、固定費の比率が低い」という特徴があります。この構造のおかげで、閑散期でも赤字になりにくいビジネスモデルになっています。
| 経費項目 | 売上高に対する目安比率 | 分類 |
|---|---|---|
| 人件費 | 20%以内 | 固定費+変動費 |
| 食材費 | 10〜15% | 変動費 |
| 集客手数料(OTAなど) | 10〜15% | 変動費 |
| クレジット手数料 | 3〜5% | 変動費 |
| その他固定費(地代・保険・リース料等) | 合計で10〜20% | 固定費 |
全国グランピング協会によると、売上高に対する人件費比率を20%以内に抑えることが、収益性の高いグランピング経営の必須条件とされています。
繁忙期・閑散期の稼働率差をどう見るか
グランピング事業は季節による繁閑差が大きいビジネスです。事業計画を立てるときは、年間平均の稼働率だけでなく、時期ごとの差を把握しておく必要があります。
| 時期 | 稼働率の目安 | 主な客層 |
|---|---|---|
| 繁忙期(GW・夏休み・連休) | 65〜90% | ファミリー・カップル |
| 通常期(春・秋の平日) | 40〜55% | 若者グループ・ママ会 |
| 閑散期(1〜2月の平日) | 30〜45% | 学生グループ・インバウンド |
閑散期の稼働率が30%を切ると収支が厳しくなります。冬季の集客コンテンツ(温泉、サウナ、焚き火イベントなど)を強化できれば、1〜2月の黒字化も視野に入ってきます。


規模別シミュレーションで見るグランピング投資回収
ここからは、小規模・中規模の2パターンで収支シミュレーションを組んでみます。あくまで概算値ですが、事業計画を作る際のたたき台として活用してください。
小規模(5棟)モデルのシミュレーション
| 項目 | 保守的 | 標準的 |
|---|---|---|
| 棟数 | 5棟 | 5棟 |
| 客単価(1室1泊) | 2.5万円 | 3.5万円 |
| 年間平均稼働率 | 40% | 55% |
| 年間売上 | 約1,825万円 | 約3,511万円 |
| 営業利益率 | 20% | 30% |
| 年間営業利益 | 約365万円 | 約1,053万円 |
| 初期投資額 | 5,000万円 | 5,000万円 |
| 投資回収期間(単純計算) | 約13.7年 | 約4.7年 |
保守的シナリオでは回収に10年以上かかる計算になります。小規模で開業する場合、客単価を上げるか稼働率を高める工夫がないと厳しくなるのがわかります。
中規模(10棟)モデルのシミュレーション
| 項目 | 保守的 | 標準的 |
|---|---|---|
| 棟数 | 10棟 | 10棟 |
| 客単価(1室1泊) | 3万円 | 4万円 |
| 年間平均稼働率 | 45% | 60% |
| 年間売上 | 約4,928万円 | 約8,760万円 |
| 営業利益率 | 25% | 35% |
| 年間営業利益 | 約1,232万円 | 約3,066万円 |
| 初期投資額 | 1億円 | 1億円 |
| 投資回収期間(単純計算) | 約8.1年 | 約3.3年 |
10棟規模になると売上のスケールメリットが効き始め、標準シナリオでは3〜4年での投資回収が見えてきます。
Dot Homesが運営するグランピング施設では、投資規模の平均が約2億円に対し年間売上が約1億円、表面利回りは50%(実質利回り約25%)という数値が中央値として報告されています。
損益分岐点の考え方
グランピング事業の損益分岐点は、テント型であれば稼働率20%程度から採算が合い始めるケースもあるとされています。固定費が小さいビジネスだからこそ実現できる低いハードルです。
ただし、これは管理棟の建築が不要で初期投資を極限まで絞った場合の話です。融資の返済がある場合は、月次のキャッシュフローベースで損益分岐を計算し、少なくとも固定費の6ヶ月分の運転資金は確保しておくべきです。
シミュレーションは保守的・標準的・楽観的の3パターンを用意し、保守的シナリオでも事業が成り立つかどうかを判断基準にするのが鉄則です。
グランピング事業計画書の作り方
事業計画書は、自分自身の判断軸になるだけでなく、融資審査や補助金申請でも提出が求められる必須書類です。グランピング事業ならではのポイントを押さえた計画書を作成しましょう。
事業計画で押さえるべき5つのポイント
大都市圏から車で2時間(150km)圏内が理想的な立地とされています。アクセスの良さ、景観、周辺の観光資源、そして都市計画法上の規制(市街化調整区域の有無など)を調査し、その土地を選んだ理由を明記しましょう。
全国グランピング協会は、初期投資額の目安を「年間予測売上高の2倍まで」と提唱しています。宿泊ユニットの種類と棟数を決めたら、この基準に照らし合わせて投資額が適正か確認してみてください。
年間平均稼働率だけで計画を組むと実態と乖離します。繁忙期(65〜90%)と閑散期(30〜45%)を分けてシミュレーションし、保守的・標準的・楽観的の3シナリオを用意するのが現実的なアプローチです。
グランピング事業の強みは「変動費率が高く、固定費率が低い」こと。収支計画では固定費(人件費・地代・減価償却費・リース料など)と変動費(食材費・集客手数料・クレジット手数料など)を明確に分けて記載し、損益分岐点を算出しましょう。
開業後は想定外の出費が発生しがちです。月間固定費の6ヶ月分を運転資金として確保するのが鉄則。さらに、資材高騰や工事遅延に備えた追加融資枠(1,000万〜2,000万円程度)を残しておくと安心です。
融資・資金調達の選択肢
グランピング事業の資金計画では、自己資金と借入のバランスが重要です。初期投資額の30%を自己資金で準備するのが理想的とされています。
| 資金調達方法 | 特徴 |
|---|---|
| 日本政策金融公庫(新規開業資金) | 金利1.5〜2.5%と低め。最大7,200万円まで融資の可能性あり |
| 地方銀行・信用金庫 | 地域密着型の融資。事業計画書の精度が審査を左右する |
| 補助金・助成金 | 小規模事業者持続化補助金など。返済不要だが採択審査あり |
| クラウドファンディング | 認知拡大と資金調達を同時に実現。開業前のファンづくりにも有効 |
たとえば初期投資4,000万円の場合、自己資金1,200万円+融資2,800万円という組み合わせが一つのモデルケースになります。融資を受ける際には、根拠のある数字で収支予測を組み立てた事業計画書が不可欠です。


グランピング開業の初期費用を抑える3つの戦略
初期費用を抑えることは、投資回収を早め、事業リスクを下げることに直結します。ここでは、実際に活用されている3つの戦略を紹介します。
土地は購入より賃貸で確保する
全国グランピング協会は、土地はできる限り賃貸で確保することを推奨しています。土地は減価償却の対象外のため、購入費用を損金処理できません。人口減少が進む日本の地方部では土地の価格上昇も見込みにくく、長期間にわたって資金が固定されるリスクがあります。
賃貸であれば初期費用を大幅に圧縮でき、もし事業がうまくいかなかった場合の撤退コストも軽減できます。
建築確認不要の宿泊ユニットを選ぶ
グランピング施設を検討する際、建築基準法上の「建築物」に該当するかどうかで、費用と手続きの負担が大きく変わります。
テントやドームテントなど、建築物に該当しないユニットを選べば建築確認申請が不要になるケースが多く、設計費用や確認申請費用を削減できます。都市計画法上の開発許可についても、建築物を建てない前提であれば手続きが簡略化される場合があります。


管理棟として使える既存建物が付帯した土地を選ぶと、新築費用(数千万円規模)を丸ごと節約できます。管理棟の整備費はグランピング開業コストの中で最も大きくなりやすい項目です。
補助金・助成金を活用する
グランピング事業で活用できる可能性のある補助金・助成金は複数あります。
- 小規模事業者持続化補助金(販路開拓や設備投資に対する補助)
- ものづくり補助金(革新的なサービス開発や設備投資を支援)
- 各自治体独自の観光振興・地域活性化関連の補助制度
補助金は公募期間や採択条件が年度ごとに変わります。最新の正確な情報は中小企業庁の「ミラサポplus」や各自治体の公式サイトで必ず確認してください。
グランピング開業費用・収益モデルに関するよくある質問
- グランピング開業の初期費用は最低いくらかかりますか?
-
5棟規模の施設で最低4,000万円程度が目安とされています。ただし、土地の取得方法(購入か賃貸か)やインフラの整備状況、宿泊ユニットの種類によって大きく変わります。無人運営の1〜2棟なら4,000万〜8,000万円程度で開業できるケースもあります。
- グランピング経営の利回りはどのくらいですか?
-
施設の規模や運営状況により異なりますが、適切に集客できれば表面利回り30〜50%を実現している施設もあります。ランニングコストを差し引いた実質利回りは25%前後が一つの目安です。ホテルや民泊と比べると高い水準にあります。
- グランピングは個人でも開業できますか?
-
個人でのグランピング開業は可能です。個人経営の場合は人件費を抑えやすく、小規模施設なら管理の負担も比較的軽くなります。ただし、旅館業法の許認可申請や会計管理、法規制への対応などは専門家への相談を検討してみてください。
- グランピング施設の開業に必要な許可は何ですか?
-
宿泊料を受けて人を泊まらせる場合、旅館業法に基づく「簡易宿所営業」の許可が必要です。食事を提供する場合は食品営業許可も求められます。そのほか、消防法への対応、都市計画法上の規制確認、農地の場合は農地転用の手続きなども必要になります。
- グランピング事業計画書には何を書けばよいですか?
-
創業動機と事業目的、立地選定の根拠、施設のコンセプト、初期費用の内訳、売上・経費の予測(保守的・標準的・楽観的の3シナリオ)、資金調達計画、そして想定より収益が上がらなかった場合の対応策を盛り込みましょう。融資審査では根拠のある数字が重視されます。
まとめ
- グランピング開業の初期費用は5棟規模で最低4,000万円が目安。土地・インフラ・ユニット・管理棟が主な内訳
- ドームテントはコテージの半額以下で導入可能。建築確認不要のユニットを選べばコストと手続きの両面で有利
- 売上は「客単価×稼働率×棟数×365日」で計算。営業利益率は20〜50%を目指せるビジネスモデル
- 投資回収は2〜3年の事例もあるが、保守的シナリオで計画を組むことが鉄則
- 事業計画書では繁閑差を反映した3シナリオの収支予測と、運転資金(固定費の6ヶ月分)の確保が重要
- 土地は賃貸、補助金の活用、既存建物の活用で初期費用を圧縮できる
グランピング事業は、初期費用を適切にコントロールすれば高い収益性が見込めるビジネスです。ただし、過大な投資や楽観的すぎるシミュレーションは失敗の原因になります。
まずは保守的なシナリオで事業計画を組み、そこから段階的にスケールアップしていくアプローチが、長く事業を続けていくための最善策です。










