「従業員の休憩スペースを確保したいが、建築コストや工期がネックになる」「仮設テントでは夏暑く冬寒い」
そうした悩みに応えるのが、名古屋工業大学発の技術をもとに開発された「インスタントハウス」です。
監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
本記事では、休憩スペース用途でのインスタントハウス活用を検討する方に向けて、製品特徴・設置条件・法規制・導入の流れまでを解説します。
簡易休憩スペースでよくある悩み(設置前に整理したいポイント)

休憩スペースの新設・改善を検討する際、現場担当者が直面しやすい代表的な課題を整理します。事前にポイントを把握しておくことで、導入手段の比較検討がスムーズになります。
夏は暑く冬は寒い…「短時間でも休めない」問題
簡易テントやプレハブを休憩スペースに充てている現場では、断熱性能の不足が大きな課題です。夏場は内部温度が外気温以上に上昇しやすく、冬場はヒーターを使っても足元から冷えが伝わるため、短時間の休憩であっても身体が十分に回復しません。工場・倉庫・建設現場など屋外作業の多い環境では、熱中症対策や低体温リスクの観点からも、断熱された休憩空間の確保は安全管理上の重要テーマです。
見た目が仮設っぽくて、来客・採用にも影響する
仮設テントやコンテナをそのまま置いた休憩所は、施設全体の印象を損なう場合があります。来客時に目に入る場所であれば企業イメージに関わりますし、採用活動においても「従業員が快適に過ごせる環境を用意しているか」は求職者の判断材料のひとつです。見た目と機能性の両立は、導入時に検討すべき要素です。
工期・手間・コストが読めず、導入が進まない
一般的な建築物として休憩室を新設する場合、設計・建築確認申請・基礎工事・本体施工と複数の工程があり、数週間〜数カ月の工期が必要です。コストも設計料・申請費・基礎工事費・本体工事費と積み上がりやすく、予算の見通しが立ちにくいことが導入の足かせになりがちです。
インスタントハウスとは?”空間プロダクト”としての特徴
インスタントハウスは、テント生地と硬質ウレタンフォームを組み合わせたドーム型の構築物です。従来の建築とは異なるアプローチで空間をつくる、新しいカテゴリの製品として注目されています。
名古屋工業大学発の研究から生まれた新しい構築物
インスタントハウスは、2011年の東日本大震災での被災地支援をきっかけに、名古屋工業大学大学院・北川啓介教授が発明した構築物です。株式会社LIFULL ArchiTechが製品化・販売を行っています。空気で膨らませたテント生地の内側から硬質ウレタンフォームを吹き付け、外膜と一体化させることで、高断熱・高気密の空間を短時間で構築する技術です。名古屋工業大学から技術移転を受けた大学発ベンチャーとして、グランピング・都市型活用・災害支援など多様な分野で導入実績があります。
断熱性・デザイン性を兼ね備え、休憩の質を上げる
壁・天井の全面が硬質ウレタンフォーム(断熱材)で構成されているため、外気温の影響を受けにくい室内環境を実現します。素材には防炎ポリエステル生地と硬質ポリウレタンフォームを採用しており、断熱材を360°に使用することで季節を問わず快適な空間を維持できるとされています。ドーム型の独特なフォルムはデザイン性が高く、仮設感の少ない外観も特徴のひとつです。
設営開始から完了まで「数時間」で使える(スピード導入)
インスタントハウスの設営時間は数時間(約6時間)です。分割して移設可能な「パージ型」でも約1.5日で完了します。一般的な建築物の工期が数週間〜数カ月であることと比較すると、大幅な短縮が可能です。基礎工事が不要で、ペグやビスで地面に固定する方式のため、工事の規模自体が小さくなります。

休憩スペース用途で選ばれる理由

インスタントハウスが休憩スペースとして評価される背景には、断熱・換気・メンテナンスの3つの実用性能があります。
外気の影響を受けにくく、空調効率が高い
インスタントハウスは壁・天井の全面が断熱材そのもので構成されているため、外気温の変化を室内に伝えにくい構造です。断熱材を360°に使用することで様々な気象環境でも快適な住環境を実現します。夏はスポットクーラーや壁掛けエアコン(オプション下地が必要)を設置でき、冬はオイルヒーターや電気ファンヒーターの使用が推奨されています。断熱性能が高いぶん、小型の空調機器でも効率よく室温を管理できます。
自然換気(重力換気)でこもりにくい空気環境
インスタントハウスは常時新鮮な空気が循環する設計になっています。重力換気によって湿気をため込みにくい室内環境を維持でき、壁・天井が断熱材で構成されているため室内側で結露しにくく、カビも発生しにくい構造です。密閉されがちな休憩スペースで、空気のこもりを抑えられる点は実用面で重要です。
メンテナンスの手間が少ない運用設計
インスタントハウスは基本的にメンテナンスフリーです。購入後1年間の製品保証があり、外壁の破損時には補修キットが提供されます。内壁の場合は再吹付けで対応可能です。
どんな場所で使える?設置イメージと活用シーン
インスタントハウスは、設置スペースさえあれば場所を選ばず建てられる柔軟性を持ちます。ここでは、休憩スペース用途として想定される代表的なシーンを紹介します。
工場・倉庫:従業員の休憩室/熱中症対策の”涼み処”
工場や倉庫の敷地内に設置することで、夏場の熱中症対策を兼ねた休憩スペースを短期間で確保できます。断熱性能が高いため、空調を効かせた涼しい空間を効率よく維持しやすく、作業員の体調管理に寄与します。既存建物の増築と異なり、原則として建築確認申請が不要(※行政判断による)なため、導入検討から稼働までの期間を短縮できます。
建設現場:待機所/安全ミーティング用スペース
建設現場では、作業員の待機所や朝礼・安全ミーティング用の屋内スペースが求められます。インスタントハウスは工期が短く、現場の工程に合わせて迅速に設置・撤去が可能です。パージ型であれば分解してトラックで別の現場へ移設することもできるため、複数現場を持つ事業者にとっても運用しやすい選択肢です。
商業・レジャー:ゴルフ練習場・ジム等の休憩ラウンジ
ゴルフ練習場やフィットネスジムなどの商業施設では、利用者向けの休憩ラウンジとして活用できます。実際に、東急目黒線の高架下ではLIFULL ArchiTechが新開発したパージ型インスタントハウスによる個室フィットネス施設「roobby-fit」が開設された実績があります。ドーム型の外観が施設の差別化要素にもなります。
引用:LIFULL ArchiTechが組み立て式「インスタントハウス・パージ型」と東急の個室シェア事業と連携 – 株式会社LIFULL
防災・BCP:一時的な休憩・待機の次世代仮設住空間として
災害時のBCP(事業継続計画)の一環として、従業員の一時的な休憩・待機スペースに転用できる点も注目されています。能登半島地震の被災地では2024年12月までに240棟が設置された実績があり、災害時の迅速な空間確保においてもその有用性が実証されています。平時は休憩スペースとして、有事には避難者の待機所として活用する「フェーズフリー」な運用が可能です。
引用:LIFULL ArchiTech、カトープレジャーグループとインスタントハウスのフェーズフリー活用を開始 災害時避難シェルター想定キャンプ施設がオープン
サイズはどう選ぶ?(導入で迷いやすい判断基準)
インスタントハウスには複数のサイズバリエーションがあります。用途・人数・設置スペースに応じて最適なサイズを選ぶことが導入成功のポイントです。
少人数の休憩に:43サイズ相当(省スペース重視)
43サイズ(直径約430cm)は、少人数での休憩や落ち着いた空間として適しています。設置面積が比較的小さいため、敷地に余裕がない場合や、複数棟を並べて設置したい場合にも対応しやすいサイズです。
ゆったり使う:50サイズ相当(椅子・テーブル配置)
50サイズは、椅子やテーブルを配置してゆったりとした休憩空間を確保したい場合に向いています。5〜6名程度がくつろげる広さがあり、休憩だけでなく簡単な打ち合わせスペースとしても活用しやすいサイズ感です。
複数人・多目的:60サイズ相当(用途分けもしやすい)
60サイズは、7〜8名が同時に利用する休憩室や、休憩エリアとミーティングエリアを分けて使いたい場合に適しています。広さに余裕があるため、家具レイアウトの自由度が高く、多目的な運用が可能です。
快適性を上げるおすすめオプション

インスタントハウスには、用途に応じて快適性や機能を拡張するオプションが用意されています。休憩スペースとしての質を高めるための代表的なオプションを紹介します。
入口扉で”休憩室らしさ”とセキュリティを両立
標準仕様ではカーテン式の出入口ですが、オプションで木扉を取り付けることが可能です。扉があることで「休憩室」としての空間的な区切りが明確になり、防犯性も向上します。来客時の見た目の印象にも配慮したい場合に有効です。
窓・網戸で通風性アップ(季節の過ごしやすさを改善)

窓と網戸のオプションを追加することで、自然通風を積極的に取り入れることができます。窓に網戸をつけることで通気性がよくなり、春・秋の中間期には空調を使わず快適に過ごしやすくなります。虫の侵入を防ぎながら外気を取り込める網戸は、郊外や自然環境に近い設置場所では特に重宝します。
エアコン下地で壁掛け空調も想定した設計に
事前にオプションで壁に下地を設置することで、壁掛けエアコンの取り付けが可能になります。夏場の冷房や冬場の暖房を本格的に運用したい場合は、導入時にエアコン下地を追加しておくと後から空調設備を柔軟に選べます。下地なしの場合でも、置き型スポットクーラーの設置は可能です。
ウッドデッキで設置性とデザイン性を底上げ

ウッドデッキオプションを追加することで、設置面の安定性が向上し、出入り口の段差も緩和されます。見た目にもナチュラルな雰囲気が加わり、休憩スペースとしての居心地や施設全体の景観と調和しやすくなります。
設営条件のチェックリスト(見積前に確認)
インスタントハウスの設営をスムーズに進めるためには、事前にいくつかの現場条件を確認しておく必要があります。見積依頼の前にチェックしておきたいポイントをまとめます。
地盤・固定方法(ペグ/ビス等)と安全性の考え方
インスタントハウスは基礎工事なしで設置できますが、安全に運用するためには地面への固定が必要です。土の地面であればペグで固定し、コンクリートやウッドデッキの上であればビスで固定します。ペグによる地面固定で風速80m/s程度まで耐えることができる設計になっています。設置場所の地盤の種類(土・砂利・コンクリート・アスファルト等)を事前に把握しておくと、適切な固定方法の選定がスムーズです。
搬入動線:トラックの横付け可否と距離
設営時にはテント生地・ウレタン材・設営機材などの資材を搬入します。設置場所までトラックが横付けできるかどうか、搬入経路の幅や高さ制限を確認しておきましょう。車両が近づけない場合は、設置可否の検討が必要となり、設置できる場合も距離や高低差によっては追加の作業時間や費用が発生する場合があります。
傾斜地・段差がある場合の対処(水平面の確保)
インスタントハウスは水平な面への設置が前提です。設置場所に傾斜や段差がある場合は、整地やウッドデッキ等で水平面を確保する必要があります。事前に設置予定場所の傾斜角度や段差の程度を確認しておくと見積もりがスムーズに進みます。
雪への備え:積雪40cmまで(耐雪仕様の場合は60cmまで)
インスタントハウスの屋根は45°傾斜設計で雪が積もりにくい形状に加え、積雪40cmまで対応しています。耐雪仕様の場合は60cmまで対応可能です。豪雪地域での導入を検討する場合は、積雪量の実績データと照らし合わせて仕様を選定する必要があります。なお、接地面に積雪がある場合は雪を取り除いてから設営する必要があります。

法規制・扱いの考え方(トラブル回避の要点)
インスタントハウスの導入を検討するうえで、建築基準法上の位置づけや税務上の取り扱いは事前に整理しておくべき重要な論点です。
「建築物として扱われない」ケースと注意点
インスタントハウスは基礎を作らず地面に直接置くことができ、重量は200kg程度と軽量で、人力で容易に移動できるため、建築確認申請を要する「建築物」に該当しないとされています。ただし、この判断は自治体の行政判断に委ねられるため、LIFULL ArchiTechでは設営前に設営地の自治体へ確認を行っています。都市計画区域の用途制限を受けないケースが多く、市街化調整区域や国定公園内に設営した実績もありますが、個別案件ごとの事前確認が不可欠です。
建築物に該当するかどうかの最終判断は、各自治体の建築指導課などが行います。同じ構造の構築物であっても、自治体によって見解が異なる可能性があるためご注意ください。
固定資産税・不動産取得税など、コスト面での考え方
インスタントハウスは土地に定着しない構築物であるため、税法上は「動産」として扱われるのが一般的であり、固定資産税・都市計画税・不動産取得税は発生しないとされています。一般的な建築物と比較すると、建築確認申請費用(約10〜30万円)、設計監理費(建築費の5〜10%が目安)、毎年の固定資産税といったコストが不要となるため、トータルの導入・運用コストを抑えられます。ただし、事業用として設置する場合には償却資産税の対象となるケースがあるため、導入前に税理士や自治体への確認が推奨されます。
導入までの流れ(最短で休憩スペースを立ち上げる)
インスタントハウスの導入プロセスはシンプルで、相談から設営完了までの各ステップが明確です。
相談→現地確認→プラン提案→発注→設営・引渡し
導入フローは、「問い合わせ→申込書の記入・送付→銀行振込→設営・お引き渡し」というステップです。設営場所の条件確認(地盤・搬入経路・行政確認)を経て、サイズやオプションを含むプランを決定します。見積内容に合意したら発注・支払いへ進み、設営日を調整のうえ、現地で設営・引渡しとなります。
納期の目安:立地・棟数・時期で変動/特注は受注生産方式のため約1〜3週間
納期は設置場所の立地条件、発注棟数、時期によって変動します。標準仕様であれば最短1週間で納品可能ですが、特注サイズ、特注の形状希望等のカスタマイズを行う場合は、特注設計が必要となり製作期間が必要です。繁忙期には納期が延びる場合もあるため、早めの相談が推奨されます。
当日の立会いは最小限でOK(運用側の負担を減らす)
設営作業はLIFULL ArchiTechまたは指定の設営代理店が行うため、導入側の作業負担は最小限で済みます。設営当日は設置場所の最終確認や納品確認など、要点のみの立会いで対応可能です。
よくある質問(休憩スペース用途で多いもの)
休憩スペースとしてインスタントハウスを検討する際に寄せられることの多い質問と、回答をまとめます。
- 電気はどうする?
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延長コード等で室内に電気を引き込むことが可能です。通気口が室内への引き込み口として使用できます。照明・空調・スマートフォン充電など、休憩に必要な電気設備は外部電源からの延長で対応できます。
- 水回り設備は置ける?(キッチン・給排水の可否)
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外部の給排水管との接続ができないため、インスタントハウス内にキッチン等の水回り設備は設置できません。休憩スペースに給茶機やウォーターサーバーを置く場合は、排水不要なタイプを選ぶか、別途仮設トイレやコンパクトトレーラーハウスなどとの組み合わせで機能を補う方法があります。
- 室内で火は使える?
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室内は火気厳禁です。冬場の暖房にはオイルヒーターや電気ファンヒーターの使用が推奨されています。石油ストーブやガスコンロなどの裸火を使う暖房・調理機器は使用できません。
- 強風・地震・雪は大丈夫?
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ペグで地面に固定した場合、風速80m/s程度まで耐えられます。また、震度6強の地震でも崩壊しない性能を持っています。積雪については屋根の45°傾斜設計で雪が積もりにくい形状に加え、積雪40cmまで対応し、耐雪仕様では積雪60cmまで対応可能です。水平かつ平滑であれば、コンクリート、アスファルト、ウッドデッキ、土等、地盤の種類は問いません。所定の耐力を確保できるか導入前に現地確認を行います。
まとめ|”簡易”でも妥協しない休憩スペースをつくるなら
インスタントハウスは、従来の「簡易な休憩スペース=快適性を妥協するもの」というイメージを覆す選択肢です。数時間の短工期、断熱材360°による快適な室内環境、ドーム型のデザイン性を兼ね備えており、原則として建築確認申請不要・固定資産税不要というコスト面の優位性もあります。
短工期×快適性×デザインで「休める場所」を最短で実現
「休憩スペースが必要だが建築工事には時間もコストもかかる」という課題に対して、インスタントハウスは短工期・高断熱・デザイン性の3つを同時に満たすソリューションです。工場・倉庫の熱中症対策から、商業施設の顧客向けラウンジ、防災備蓄を兼ねた多目的スペースまで、幅広い用途に対応できます。
まずは用途・人数・設置場所を伝えて、最適サイズから見積へ
導入検討の第一歩は、用途(休憩・ミーティング・複合利用)、想定利用人数、設置場所の条件(地盤・搬入経路・面積)などをご相談ください。これらの情報をもとに最適なサイズ・オプションの提案と見積が行われます。まずは問い合わせフォームからの相談がスムーズです。


