
グランピング施設を始めたいけど、宿泊棟って1棟あたりいくらかかるの?構造によって全然違うって聞くけど、実際どれくらい差があるんだろう…
グランピング施設の開業を検討するとき、最も気になるのが宿泊棟1棟あたりの費用ではないでしょうか。ドームテントやインスタントハウスなど、グランピング向けの宿泊構造物にはさまざまな選択肢がありますが、本体価格だけでなく付帯費用まで含めた「1棟あたりの導入総額」を把握しておかないと、予算計画が狂ってしまいます。
監修者


株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
この記事では、グランピング宿泊棟の1棟あたりの費用を構造タイプ別に比較し、本体価格の内訳や追加コスト、費用を左右する要因まで、公式情報をもとに解説します。
グランピング宿泊棟の1棟あたり費用はいくらかかるのか
結論から言うと、グランピング宿泊棟の1棟あたり費用は、構造タイプや仕様によって約95万円〜500万円程度の幅があります。ただしこれは「本体価格」の話で、実際に施設として営業するための「導入総額」はさらに上がります。
構造タイプ別の1棟あたり価格帯一覧
現在、国内のグランピング施設で採用されている主な宿泊構造物の本体価格帯を整理しました。
| 構造タイプ | 1棟あたり本体価格帯(税込) | 価格の根拠 |
|---|---|---|
| ドームテント(deluxs) | 約95万〜263万円 | deluxs公式サイト(直径5m〜10m、フレーム+外幕のみ) |
| ドームテント(FDomes) | 約179万〜388万円 | ドムハカタログ(スタンダードセット 20㎡〜75㎡) |
| インスタントハウス | 約224万〜495万円 | インスタントハウス公式メディア(シンプル43〜ベーシック60、本体+標準設営費込み) |
同じ「グランピング宿泊棟」でも、構造タイプによって価格帯はまったく異なります。ここで注意したいのが、各メーカーの「価格に含まれる範囲」が統一されていないという点です。
「本体価格」と「1棟あたりの導入総額」は別物
メーカーが公表している価格は、あくまで「本体価格」です。グランピング施設として実際に営業するためには、ウッドデッキ、空調設備、内装・家具、電気工事など、本体以外の費用が追加で発生します。
たとえばdeluxsのドームテント(直径6m)は本体価格が約114万円ですが、これにはフレームと外幕しか含まれていません。内張シートやドア、カーテンなどは別途購入が必要で、ウッドデッキを施工すると1棟あたりの導入総額は大きく変わります。
一方で、FDomesのスタンダードセットには外幕・フレーム・内張・ドアなどがセットになっており、インスタントハウスは本体+標準設営費が価格に含まれています。「表示価格に何が含まれているか」を確認しないと、正確な比較はできません。
1棟あたりの費用に含まれる項目の内訳
グランピング宿泊棟を1棟導入する際に発生し得る費用項目を整理します。
| 費用項目 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 宿泊棟本体 | フレーム・外幕・内張・ドアなど(製品により含まれる範囲が異なる) | 約95万〜495万円 |
| ウッドデッキ | 宿泊棟の床面・テラス部分の施工 | インスタントハウス公式の参考事例では6m×6m平坦地で約130万円(税込) |
| 空調設備 | エアコン本体+設置工事 | 製品・設置条件による |
| 家具・インテリア | ベッド、ソファ、テーブル、照明等 | 構成による |
| 電気・給排水工事 | 電源引き込み、水道接続 | 設置場所の条件による |
| 建築確認申請 | 構造が「建築物」に該当する場合に必要 | 設計費・申請費等(構造による) |
本体価格が安くても、オプション品やデッキ施工を加えると総額が高くなるケースがあります。逆に、本体価格に設営費や断熱材が含まれている製品は、追加費用が少なく済む場合も。見積りを取る際は「この価格で何が揃うのか」を必ず確認しましょう。
ドームテントの1棟あたり費用
グランピング施設で最も採用実績が多い構造タイプの一つが、ドーム型テントです。ここでは、国内で公式価格が確認できる2つのメーカーの費用を詳しく見ていきます。
FDomes(ポーランド製)のサイズ別価格
FDomesは、ポーランドのFdomes社が製造するジオデシック構造のドームテントです。日本では正規代理店(FDomes.jp)を通じて販売されています。
ドムハカタログの情報によると、スタンダードセット(外幕・フレーム・内張・ドアなど宿泊に必要な基本装備のセット)の価格は以下のとおりです。
| 面積 | スタンダードセット価格 | セット内容 |
|---|---|---|
| 20㎡ | 1,792,000円 | 外幕・フレーム・内張・ドアなど基本装備 |
| 40㎡ | 2,809,000円 | 同上 |
| 75㎡ | 3,875,000円 | 同上 |
FDomesのスタンダードセットは、宿泊に必要な基本装備が含まれているため、追加購入が必要な項目が比較的少なく済みます。フレームはCEマーク認証を取得したスチール製で、溶融亜鉛メッキ+パウダーコーティングが施されています。メーカー保証は3年。なお、為替レートやメーカーの価格変更により、価格は変動する場合があります。
ただし、ウッドデッキ、空調設備、家具・インテリアはスタンダードセットに含まれていません。グランピング施設として営業する場合、これらの費用が1棟あたりの導入総額に上乗せされます。
deluxs(国内代理店)のサイズ別価格
deluxsは、グランピング用ドームテントの販売・レンタルを行う国内の代理店です。deluxs公式サイトに掲載されている価格は以下のとおりです。
| 直径 | 面積 | 価格(税込) | 価格に含まれる範囲 |
|---|---|---|---|
| 5m | 19.6㎡ | 947,100円〜 | フレーム+外幕のみ |
| 6m | 28.2㎡ | 1,144,440円〜 | フレーム+外幕のみ |
| 7m | 38.4㎡ | 1,554,300円〜 | フレーム+外幕のみ |
| 8m | 50.2㎡ | 1,692,900円〜 | フレーム+外幕のみ |
| 10m | 78.5㎡ | 2,626,800円〜 | フレーム+外幕のみ |
deluxsの価格は「フレーム+外幕のみ」の金額です。外膜はPVC膜(防水・UV耐性・難燃材)で、フレームは溶融亜鉛メッキ鋼板を使用。公式サイトでは耐用年数5年と記載されています。納期は入金後約2か月程度です。
ドームテントで見落としやすい追加費用
ドームテントの場合、本体価格以外に以下の費用が1棟ごとに発生します。特にdeluxsのように「フレーム+外幕のみ」の価格設定の場合、追加費用の比重が大きくなります。
- 内張シート(断熱・結露防止)… deluxs公式では断熱性能有・結露防止・熱反射率85%のシートを用意
- ドア … deluxsではLIXIL製アルミドアを採用(防水性・防音性・断熱性を兼備)
- カーテン … ドームテント専用設計の遮光カーテン(カーテンレール付き)
- ウッドデッキ … サイズ・地盤条件により費用が変動
- 空調設備 … エアコンの設置が通年営業には必須
インスタントハウスの1棟あたり費用
ドームテントとは構造が根本的に異なる選択肢として、インスタントハウスがあります。2011年の東日本大震災での被災地支援をきっかけにした名古屋工業大学大学院の北川啓介教授の研究をもとに、LIFULLと名古屋工業大学大学院による共同研究にて開発した新しい構築物です。
シンプル / ベーシック ラインナップ別の価格
インスタントハウス公式サイトによると、ラインナップと価格は以下のとおりです。価格には本体+標準設営費が含まれています。
| ラインナップ | サイズ | 価格(税込) | 備考 |
|---|---|---|---|
| シンプル | 43 | 2,244,000円 | 本体+標準設営費込み |
| シンプル | 50 | 3,080,000円 | 同上 |
| シンプル | 60 | 4,356,000円 | 同上 |
| ベーシック | 43 | 2,475,000円 | 本体+標準設営費込み、22色カラー対応 |
| ベーシック | 50 | 3,278,000円 | 同上 |
| ベーシック | 60 | 4,950,000円 | 同上 |


シンプルとベーシックの違いは主にカラーバリエーションで、ベーシックでは22色から外装色を選べます。いずれも本体価格に標準設営費が含まれているわかりやすい価格設定で、離島・山間部・降雪地などは現地条件や輸送で加算が発生します。
主なオプションと追加費用
インスタントハウスには用途に応じた各種オプションが用意されています。公式サイトに掲載されている主なオプション価格は以下のとおりです。
| オプション | 価格(税込) |
|---|---|
| テント生地カラー変更(ベーシック・標準色) | 99,000円〜198,000円(サイズによる) |
| 入口 木扉を追加 | 341,000円 |
| 入口 アルミ扉を追加 | 396,000円 |
| 入口 ガラス扉を追加 | 506,000円 |
| 窓数追加(2→5窓) | 132,000円 |
| エアコン下地を追加 | 33,000円 |
| 耐雪仕様(壁厚追加+4cm) | 165,000円〜275,000円(サイズによる) |
| パージ型(分割移設可能型)へ変更 | 528,000円〜748,000円(サイズによる) |


ウッドデッキについては、公式サイトの過去参考事例として6m×6m・平坦地施工で約1,300,000円(税込)と記載されています。地盤状況・木材・時期・エリアにより変動するため、個別の見積りが必要です。
ドームテントとの費用構造の違い
ドームテントとインスタントハウスでは、費用の構造に大きな違いがあります。
ドームテント(特にdeluxsなどフレーム+外幕のみの価格設定の場合)は、本体価格が安く見えても、内張・ドア・カーテンなどのオプション品を積み上げていくと1棟あたりの総額がかさみやすい構造です。
一方、インスタントハウスは本体価格に標準設営費が含まれており、素材自体が断熱材(断熱材を360°に使用)のため、断熱ライナーの追加購入が不要です。出入口はファスナー式が標準で、扉の追加はオプションとなっています。「どこまでが標準に含まれていて、何がオプションか」がはっきりしているため、導入総額を見積りやすい費用構造になっています。
ドームテントとインスタントハウスの費用を比較する際は、「断熱材込みかどうか」「設営費込みかどうか」「ドアは標準かオプションか」など、含まれる範囲を揃えた上で比較しないと正確な判断ができません。メーカーに見積りを依頼する際は、「グランピング施設として営業開始できる状態にするための総額」を明確にしてもらうことが重要です。
1棟あたりの費用を左右する3つの要因
同じ構造タイプを選んでも、条件次第で1棟あたりの導入費用は変わります。ここでは、費用に影響する主な要因を3つ解説します。
建築確認の要否と追加コスト
宿泊棟が建築基準法上の「建築物」に該当するかどうかは、1棟あたりの費用に大きく影響します。建築物と判断された場合、建築確認申請の費用、構造計算書の作成費、設計士への報酬などが追加で発生するためです。
全国グランピング協会によると、大阪市、神奈川県、北関東、中国地方、九州の一部の土木事務所では、海外製ドームテントが建築物と判定される可能性が高いエリアもあるとされています。
参照元:一般社団法人全国グランピング協会「グランピング開発における建築基準法」
インスタントハウスのように法的に「工作物」として扱われる構造物は、建築確認申請が原則不要(行政判断による)なため、この追加コストが発生しません。構造選びの段階で建築確認の要否を確認しておくことが、費用管理の面でも重要になります。
設置場所の条件(地盤・アクセス・気候)
宿泊棟の設置場所も費用に影響します。たとえば、山間部や離島では資材の輸送コストが上がりますし、傾斜地や軟弱地盤では基礎・造成の工事費用が加算される可能性があります。
インスタントハウス公式サイトでも「離島・山間部・降雪地などは現地条件や輸送で加算が発生します」と明記されています。降雪地域で使用する場合は、耐雪仕様への変更(壁厚追加+4cm)が推奨され、追加費用として165,000〜275,000円(税込、サイズにより変動)が発生します。


耐用年数から見た「1年あたりコスト」の考え方
1棟あたりの費用を比較する際、初期投資額だけで判断するのは得策ではありません。耐用年数が異なれば、「1年あたりのコスト」も変わってくるためです。
たとえば、deluxsのドームテントは公式サイトで耐用年数5年と記載されています。仮に直径6mモデル(約114万円、フレーム+外幕のみ)を導入した場合、本体だけで1年あたり約23万円のコストになります。
FDomesはフレーム部分について、溶融亜鉛メッキ+パウダーコーティングにより海岸地域でも25年持つとされていますが、幕体部分は使用環境によって交換時期が異なります。
参照元:deluxs公式 ドームテントページ / ドムハカタログ FDomes紹介ページ
構造タイプ別の1棟あたり費用比較表
ここまで解説してきた各構造タイプの費用情報を、1つの表にまとめます。いずれも公式サイトまたは公式情報をもとにした数値です。
| 比較項目 | deluxs ドームテント | FDomes ドームテント | インスタントハウス |
|---|---|---|---|
| 1棟あたり本体価格帯(税込) | 約95万〜263万円 | 約179万〜388万円 | 約224万〜495万円 |
| 価格に含まれる範囲 | フレーム+外幕のみ | 外幕・フレーム・内張・ドアなどセット | 本体+標準設営費 |
| 断熱対応 | 内張シート別途購入 | 内張はセットに含む(断熱ライナーは追加オプション) | 素材自体が断熱材(断熱材を360°に使用) |
| 出入口 | ドア別途購入(LIXIL製ドアなど) | ドアはセットに含む | ファスナー式が標準(扉はオプション) |
| 設営 | 組み立て式 | 組み立て式(レクチャーオプションあり) | 数時間(約6時間)、設営費は価格に含む |
| 基礎工事 | ウッドデッキ等の施工が一般的 | ウッドデッキ等の施工が一般的 | 不要(ペグやビスで固定) |
| 建築確認 | 自治体により判断が分かれる | 自治体により判断が分かれる | 原則不要(行政判断による) |
| 耐用年数 | 5年(公式記載) | フレーム25年(幕体は使用環境による) | 公式未公表 |
| メーカー保証 | 要確認 | 3年 | 1年(保証期間中の故障は無償対応) |
参照元:deluxs公式 / ドムハカタログ / インスタントハウス公式
この表を見ると、「本体価格が安い=導入総額が安い」とは限らないことがわかります。フレーム+外幕のみの価格に、内張・ドア・デッキ・設営費を加算していくと、最終的な1棟あたりの費用が逆転するケースもあり得ます。見積りを取る際は、「営業開始できる状態にするための総額」を各メーカーに確認しましょう。
グランピング宿泊棟の費用でよくある質問
- グランピング宿泊棟は1棟あたり何万円から導入できますか?
-
本体価格だけであれば、deluxsのドームテント(直径5m)が約95万円(税込・フレーム+外幕のみ)から導入可能です。ただし、グランピング施設として営業するには内張・ドア・空調・ウッドデッキなどの追加費用が発生するため、導入総額はこれより高くなります。
- ドームテントとインスタントハウス、1棟あたりのコストはどちらが安いですか?
-
本体価格だけで比較すると、フレーム+外幕のみのドームテント(deluxs)のほうが安価です。ただし、インスタントハウスは本体価格に標準設営費が含まれ、素材自体が断熱材のため断熱ライナーの追加費用が不要です。導入総額で比較するには、各メーカーに「営業開始可能な状態での見積り」を依頼してください。
- 宿泊棟の建築確認が不要な構造はありますか?
-
インスタントハウスは法的に「工作物」として扱われるため、建築確認申請が原則不要です(行政判断による)。基礎工事も不要で、ペグやビスで固定する構造です。ドームテントの場合は自治体によって建築物と判断されるケースもあるため、計画地の土木事務所に事前相談が必要です。
- ウッドデッキの施工費はどのくらいかかりますか?
-
インスタントハウス公式サイトの過去参考事例では、6m×6m・平坦地施工で約1,300,000円(税込)と記載されています。ただし、地盤状況・木材・時期・エリアにより変動するため、実際には個別の見積りが必要です。
- 複数棟まとめて導入すると割引はありますか?
-
メーカーや販売店によって対応が異なります。複数棟での導入を検討する場合は、各メーカーに直接問い合わせて、ボリュームディスカウントの可否や見積り条件を確認してください。
まとめ
- グランピング宿泊棟の1棟あたり本体価格は約95万〜495万円と構造タイプにより大きな幅がある
- メーカーごとに「価格に含まれる範囲」が異なるため、本体価格だけで比較すると判断を誤る
- ウッドデッキ・空調・内張・ドアなどの追加費用を含めた「導入総額」で比較することが鉄則
- 建築確認の要否は追加コストとスケジュールに直結する。工作物として扱われるインスタントハウスは原則不要(行政判断による)
- 耐用年数を考慮した「1年あたりコスト」の視点も持つと、長期的に最適な判断ができる
グランピング宿泊棟の1棟あたりの費用は、構造タイプの選択と付帯費用の有無で大きく変わります。「本体が安いから総額も安い」とは限りません。
この記事で紹介した公式価格と比較ポイントを参考に、自施設の条件に合った構造タイプを選んでください。各メーカーへの見積り依頼は、「営業開始できる状態の総額」で出してもらうのがおすすめです。










