キャンプ場開業に必要な許可・申請一覧|旅館業から消防法まで解説

キャンプ場の開業では、提供するサービスの内容によって必要な許認可が変わります。利用者が自分のテントを張るだけのシンプルなキャンプ場と、グランピングテントやコテージを備えた施設では、必要な手続きがまったく異なります。

「旅館業の許可は必要なのか」「食材を提供するなら何が必要か」「消防への届出はどうすればいいか」。開業を検討している方にとって、これらの疑問を一つずつ解消しておくことが、スムーズな開業準備の第一歩です。

監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)

この記事では、キャンプ場開業に必要な許可・届出を体系的に整理し、旅館業許可の要否判断から消防法、食品衛生法、トイレの設置基準まで、事業者向けに解説します。
目次

キャンプ場開業に必要な許可・届出の全体像

まず、キャンプ場の開業で必要になる可能性がある許可・届出の全体像を把握しましょう。

許可が必要なケースと不要なケースの判断基準

キャンプ場の許認可で最も重要なのは、「施設側が宿泊設備を提供するかどうか」です。Squareは「施設側が設置した宿泊施設がないタイプ、つまり利用者自身がテントを設営し泊まるタイプのキャンプ場は、旅館業営業許可を取得する必要はありません」と述べています。

参照元:Square「キャンプ場の開業に必要な資格・許可、初期費用」

つまり、テント持ち込み型の区画サイトのみであれば旅館業許可は不要ですが、コテージ、ロッジ、グランピングテントなど施設側が宿泊設備を提供する場合は旅館業許可が必要になります。この判断が、その後の手続き全体の方向性を決めます。

必要な許可・届出の一覧表

キャンプ場で必要になる可能性がある主な許可・届出を、ホテル・旅館利益向上プロジェクト、グランプレス、後藤行政書士事務所の情報をもとに整理しました。

参照元:ホテル・旅館利益向上PJ「キャンプ場経営を始めるには?」 / グランプレス「キャンプ場経営に必要な許可や申請の種類は?」 / 後藤行政書士事務所「キャンプ場運営を徹底解説」

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許可・届出必要になるケース申請先不要なケース
旅館業許可(簡易宿所営業)コテージ、グランピングテント、ロッジなど施設側が宿泊設備を提供する場合保健所利用者が自分のテントを持ち込んで設営する場合
飲食店営業許可食材や料理を提供する場合(BBQ食材の提供を含む)保健所飲食の提供を一切行わない場合
防火対象物使用開始届BBQ施設や飲食施設を設置する場合消防署火気使用設備を設置しない場合
林地開発許可1ha以上の森林を伐採する場合市区町村(森林保全係等)伐採面積が1ha未満の場合
酒類販売業免許缶・ボトルで酒類を販売する場合税務署飲食店営業の範囲内で提供する場合
公衆浴場営業許可旅館業許可なしの施設で、風呂やサウナを利用者に提供する場合保健所旅館業許可を取得済みで宿泊者のみに提供する場合
食肉販売業許可精肉を販売する場合保健所パック済み食材を開封せず提供する場合
「何を提供するか」で必要な許可が決まる

キャンプ場の許認可は、「宿泊設備を提供するか」「食材を提供するか」「入浴設備を提供するか」「酒類を販売するか」「森林を伐採するか」の5つの判断軸で整理できます。自施設のサービス内容と照らし合わせて、必要な許可を漏れなく確認しましょう。

旅館業許可(簡易宿所営業)

キャンプ場の許認可で最も判断に迷うのが、旅館業許可の要否です。結論から言うと、「施設側が宿泊設備を提供するかどうか」で決まります。

旅館業許可が必要になるケース

グランプレスによると、「利用者が宿泊できる設備を設置し、宿泊料を受ける場合には旅館業の営業許可が必要」です。具体的には以下のような設備が該当します。

  • コテージ、ロッジ、バンガロー
  • グランピングテント(施設側が設営・寝具を提供)
  • トレーラーハウス(設置状況による)

グランプレスは「無許可での営業が発覚すると、懲役6か月以下もしくは罰金100万円以下に処せられることがある」と注意を促しています。

参照元:グランプレス「キャンプ場経営に必要な許可や申請の種類は?」

許可が不要なケース(テント持ち込み型のキャンプ場)

後藤行政書士事務所は「テントを設置しないオートキャンプ場は旅館業許可が不要」と明記しています。利用者が自分のテントを持ち込んで自分で設営するスタイルであれば、施設側は「宿泊設備を提供」していないため、旅館業には該当しません。

なお、後藤行政書士事務所は興味深い事例として「ガレージキャンプ場」についても触れています。経済産業省が令和3年2月に発表したグレーゾーン解消制度によれば、車庫ガレージとキャンプ用品を貸与するアウトドアレジャーサービスは、旅館業法の規定に該当しないとされました。ガレージ内での宿泊はできず、利用客が隣接スペースに自らテントを設置する形態であることがポイントです。

参照元:後藤行政書士事務所「キャンプ場運営を徹底解説」

簡易宿所営業の構造設備基準

旅館業許可(簡易宿所営業)を取得する場合は、旅館業法施行令で定められた構造設備基準を満たす必要があります。主な基準項目は以下のとおりです。

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基準項目内容
客室の延床面積33平方メートル以上(宿泊者数10人未満の場合は3.3平方メートル×宿泊者数)
換気・採光適当な換気、採光、照明、防湿、排水の設備を有すること
入浴設備宿泊者の需要を満たす規模の入浴設備(近隣に公衆浴場がある場合を除く)
洗面設備宿泊者の需要を満たす適当な規模の洗面設備
トイレ適当な数の便所を有すること
玄関帳場(フロント)宿泊者の本人確認・鍵の受渡しができる設備(自治体により基準が異なる)

自治体によっては条例で独自の上乗せ基準を設けている場合があります。計画地を管轄する保健所に必ず事前相談してください。

飲食店営業許可と食品衛生法

キャンプ場でBBQ食材や料理を提供する場合は、旅館業許可とは別に飲食店営業許可が必要です。

BBQ食材・料理提供で必要な許可

グランプレスは「食材や料理の提供をする場合は飲食店業の許可と消防署への届出(防火対象物使用開始届)が必要です。バーベキュー食材を提供するだけでも必要です」と述べています。

さらに後藤行政書士事務所は「バーベキュー用の精肉を販売するには食肉販売業の許可が必要」としています。飲食店営業許可だけでなく、提供するメニューの内容に応じて追加の許可が必要になるケースがあるため、管轄の保健所に確認しましょう。

食品衛生責任者の設置

飲食店営業許可を取得するには、施設ごとに食品衛生責任者を1名以上配置することが義務付けられています。yamakas.jpによると、食品衛生責任者の資格は各自治体が開催する講習会を受講することで取得可能です。栄養士、調理師、製菓衛生師などの資格保有者は講習が免除されます。

参照元:yamakas.jp「キャンプ場を開設する際に必要な免許や運転資金の目安とは」

また、上水道以外の水(井戸水や貯水槽の水)を使用する場合は、水質検査の実施も必要です。山間部に立地するキャンプ場では水源の確認を早めに行っておきましょう。

消防法への対応

キャンプ場で火気使用設備や飲食施設を設置する場合は、消防法への対応が必要になります。

防火対象物使用開始届

グランプレスによると、バーベキュー施設や飲食施設を設置する場合は「消防署へ防火対象物使用開始届を行う必要がある」とされています。管理棟やコテージなど建物を建設する場合も同様です。

防火対象物使用開始届は、建物の使用開始7日前までに管轄の消防署に届け出るのが原則です。キャンプ場の開業スケジュールに組み込んでおきましょう。

消防設備の基本

キャンプ場で管理棟やコテージ、グランピング棟など防火対象物に該当する建物がある場合は、以下のような消防設備の設置が必要になる可能性があります。

  • 消火器
  • 自動火災報知設備(延床面積や用途に応じて)
  • 誘導灯(避難口・通路)
  • 防炎物品の使用(カーテン、じゅうたん等)

宿泊施設を提供するキャンプ場(旅館業許可を取得する場合)は、消防法令適合通知書の取得も必要です。消防署への事前相談で、必要な消防設備の種類と設置要件を確認しましょう。

テント持ち込み型でも消防への相談は推奨

旅館業許可が不要なテント持ち込み型キャンプ場でも、キャンプファイヤーやBBQ施設など火気使用設備がある場合は消防署への届出が必要です。また、利用者の安全確保のために消火器を配備しておくことは事業者の責務です。

その他の許可・届出

旅館業許可、飲食店営業許可、消防法の対応に加えて、キャンプ場の立地やサービス内容によっては以下の許可・届出も必要になります。

林地開発許可

yamakas.jpによると、キャンプ場を開設するために1ha以上の森林を伐採する場合は、林地開発許可が必要です。市区町村の森林保全係や林業振興課の窓口で申請します。許可が下りるまで3か月弱かかることもあるため、早めの申請が推奨されています。

参照元:yamakas.jp「キャンプ場を開設する際に必要な免許や運転資金の目安とは」

公衆浴場法(風呂・サウナの提供)

キャンプ場で入浴設備やサウナを利用者に提供する場合は、公衆浴場法の許可が必要になるケースがあります。ここで重要なのが「旅館業許可の有無」による違いです。

後藤行政書士事務所は、旅館業許可の有無による違いを以下のように整理しています。

  • 旅館業許可あり → 宿泊者が利用する浴場は公衆浴場法の適用外
  • 旅館業許可なし → 公衆浴場の許可が必要

また、後藤行政書士事務所は「テントサウナを設置してキャンプ利用客に利用させる場合も、お風呂と同じ扱いを受け、公衆浴場法の許可が必要になる」と注意を促しています。旅館業許可がないキャンプ場でサウナを提供する場合は、公衆浴場営業許可の取得が必要です。

参照元:後藤行政書士事務所「キャンプ場運営を徹底解説」

酒類販売業免許

キャンプ場の売店で缶ビールやボトルワインなど酒類を販売する場合は、酒類販売業免許が必要です。yamakas.jpによると「飲食店業の許可と異なり、酒類販売業免許は税務署へ申請するため、申請忘れや申請先の間違いに注意しましょう」とされています。

なお、飲食店営業許可を取得した上で、その飲食提供の一環として酒類を提供する場合(たとえば食事と一緒にグラスで提供する場合)は、酒類販売業免許は不要です。

トイレの設置基準と配置の考え方

キャンプ場のトイレについては、「何基設置しなければならない」という直接的な法定基準はありません。ただし、旅館業許可を取得する場合は「適当な数の便所を有すること」が構造設備基準として定められています。

参考として、事業者の従業員向けには労働安全衛生規則第628条で「男性用大便所は60人以内ごとに1個以上、男性用小便所は30人以内ごとに1個以上、女性用便所は20人以内ごとに1個以上」という設置基準があります。キャンプ場の利用者向けに直接適用される規定ではありませんが、施設の規模に応じた目安として参考になります。

参照元:厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」

実務的には、以下の点を考慮してトイレの数と配置を決定するとよいでしょう。

  • 最大収容人数に対して十分な数のトイレを確保する
  • 男女別のトイレを設ける
  • どの区画からもアクセスしやすい位置に配置する
  • 宿泊エリアからは適度な距離を保つ(夜間の利用音に配慮)
  • 清潔な水を供給する手洗い設備を併設する
  • 下水道が未整備の場合は浄化槽の設置が必要(規模に応じた容量が必要)

リゾートグランピングドットコムのアンケート調査では、女性がグランピングを支持する理由として「トイレ」が上位に挙がっています。トイレの清潔さと数の充実度は、特に女性客やファミリー層の満足度に直結します。

トイレは「最低限の数」ではなく「快適な数」を目指す

法的な最低基準を満たすだけでは、利用者の満足度は上がりません。特に繁忙期の混雑時にトイレの待ち時間が長くなると、口コミ評価にも影響します。予算と相談しながらも、余裕を持った設置数を確保しましょう。

グランピング棟を増設する場合の追加許認可

テント持ち込み型のキャンプ場として開業した後、グランピング棟を増設して事業を拡張するケースも増えています。この場合、キャンプ場の開業時には不要だった許認可が追加で必要になります。

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追加で必要になる手続き理由
旅館業許可(簡易宿所営業)施設側が宿泊設備(テント・寝具)を提供するため
消防法令適合通知書の取得旅館業許可の申請に添付が必要
建築確認申請(構造物が建築物に該当する場合)宿泊構造物が建築基準法上の「建築物」に該当する場合

建築確認申請が必要かどうかは、宿泊構造物の構造によって異なります。建築確認が原則不要な構造物(インスタントハウスなど、法的に「工作物」として扱われるもの)を選べば、建築確認の手続きを省略でき、増設のスピードとコストを抑えられます。

グランピング施設の許可手続きについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

キャンプ場の許可・申請でよくある質問

テント持ち込み型のキャンプ場でも何か許可は必要ですか?

利用者が自分のテントを持ち込んで設営するだけのキャンプ場であれば、旅館業許可は原則不要です。ただし、食材を提供する場合は飲食店営業許可、BBQ施設を設置する場合は消防署への届出、1ha以上の森林を伐採する場合は林地開発許可がそれぞれ必要になります。

キャンプ場に風呂やサウナを設置する場合、公衆浴場法の許可は必要ですか?

旅館業許可の有無で異なります。後藤行政書士事務所によると、旅館業許可を取得済みで宿泊者のみが利用する浴場は公衆浴場法の適用外です。一方、旅館業許可がないキャンプ場で入浴設備やテントサウナを利用者に提供する場合は、公衆浴場営業許可が必要になります。

BBQ食材を提供するだけでも飲食店営業許可は必要ですか?

グランプレスによると、BBQ用の食材を提供するだけでも飲食店営業許可は必要です。さらに精肉を販売する場合は食肉販売業許可も別途必要になります。管轄の保健所に相談して、必要な許可を確認しましょう。

トイレは何基設置すれば法律上問題ないですか?

キャンプ場の利用者向けに「何基以上」という直接的な法定基準はありません。旅館業許可を取得する場合は「適当な数の便所を有すること」が構造設備基準に含まれます。実務的には、最大収容人数に対して男女別トイレを十分に確保し、保健所との事前相談で適正数を確認するのが確実です。

許可の申請から取得まで、どのくらいかかりますか?

ホテル・旅館利益向上プロジェクトは「なかには、申請から取得までに数か月かかるものもあります」としています。林地開発許可も3か月弱かかるケースがあります。開業スケジュールに余裕を持たせ、事前相談はできるだけ早い段階で開始しましょう。

まとめ

キャンプ場の許可・申請チェックポイント
  • 旅館業許可の要否は「施設側が宿泊設備を提供するかどうか」で判断。テント持ち込み型は原則不要
  • 食材を提供する場合は飲食店営業許可が必要(BBQ食材の提供だけでも必要)。食品衛生責任者の配置も義務
  • BBQ施設や飲食施設を設置する場合は消防署への防火対象物使用開始届が必要
  • 入浴設備やサウナの提供は、旅館業許可の有無で公衆浴場法の許可の要否が変わる
  • トイレは法定の最低基準を満たすだけでなく、利用者の満足度を意識した「快適な数」を確保する
  • グランピング棟の増設時は、旅館業許可・消防法令適合通知書・建築確認(該当する場合)が追加で必要

キャンプ場の許認可は、提供するサービスの内容によって必要な手続きが変わります。「何を提供するか」を軸に必要な許可を洗い出し、保健所・消防署・自治体への事前相談を早めに進めることが、スムーズな開業のカギです。

将来的にグランピング棟を増設する計画がある場合は、建築確認が原則不要な構造物を選ぶことで、追加の許認可手続きを最小限に抑えられます。インスタントハウスは法的に「工作物」として扱われるため、建築確認申請が原則不要です(行政判断による)。

監修者

山中典(やまなか つかさ)

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO/名古屋工業大学共同研究員。インスタントハウスの開発・事業を軸に、災害支援から多様な空間活用まで幅広く展開している。

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