キャンプ場の開業は、アウトドアブームの追い風を受けて注目される土地活用の一つです。オートキャンプ白書2025によれば、2024年の平均キャンプ回数は5.0回/年を維持しており、キャンプブームは一過性のものではなく定着しつつあります。
ただし、キャンプ場の開業には土地の選定から許認可の取得、設備の整備、レイアウトの設計まで、多くの準備が必要です。「何にいくらかかるのか」「どんな許可が必要なのか」を把握しないまま進めると、予算オーバーや手続きの遅延を招きかねません。
監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
この記事では、キャンプ場の開業方法を基本ステップから整理し、費用の目安、立地条件の選び方、区画サイトのレイアウト設計、さらにはグランピングへの事業拡張まで、開業を検討する事業者向けに解説します。
キャンプ場開業の基本ステップ
キャンプ場の開業は、コンセプト設計から営業開始まで複数のステップで構成されます。全体の流れを把握したうえで、一つずつ進めていきましょう。
開業までの全体フロー
どのタイプのキャンプ場にするか(区画サイト/フリーサイト/オートキャンプ/グランピング併設)を決め、ターゲット層、収支計画、差別化ポイントを整理します。
立地条件、用途地域、インフラ状況を確認し、候補地を選定します。所有地の活用、土地の購入、既存キャンプ場の事業承継など、取得方法は複数あります。
提供するサービスの内容に応じて、旅館業許可、飲食店営業許可、林地開発許可などを取得します。申請から許可取得まで数か月かかるものもあるため、早めの準備が必要です。
整地・伐採、管理棟の建設、トイレ・シャワー・炊事場の設置、電気・水道の引き込みなどを行います。
公式サイトの制作、予約システムの導入、SNSアカウントの開設、OTAへの掲載準備を行います。
許認可を取得し、設備が整ったら営業を開始します。プレオープンで運営上の課題を洗い出しておくのも有効です。
必要な許認可の一覧
キャンプ場の開業で必要な許認可は、提供するサービスの内容によって異なります。ホテル・旅館利益向上プロジェクトの情報をもとに整理すると、以下のとおりです。
参照元:ホテル・旅館利益向上プロジェクト「キャンプ場経営を始めるには?」
| 許認可 | 必要になるケース | 申請先 |
|---|---|---|
| 旅館業許可(簡易宿所営業) | コテージ、グランピングテント、バンガローなど施設側が寝具を提供する場合 | 保健所 |
| 飲食店営業許可 | 食材や料理を提供する場合 | 保健所 |
| 酒類販売業免許 | 缶・ボトルで酒類を販売する場合 | 税務署 |
| 林地開発許可 | 1ha以上の森林を伐採する場合 | 市区町村(森林保全係等) |
| 防火対象物使用開始届 | BBQ施設や飲食施設を設置する場合 | 消防署 |
利用者が自分のテントを持ち込んで設営する「区画サイトのみ」のキャンプ場であれば、旅館業許可は原則不要です。ただし、施設側がテントや寝具を提供するグランピングサービスを行う場合は旅館業許可が必要になります。開業前に保健所に事前相談しておきましょう。
キャンプ場の開業費用
キャンプ場の開業費用は、土地の条件や施設の規模によって大きく変わります。複数の業界メディアが公開している情報をもとに、費用の全体像を整理します。
初期費用の目安
キャンプ場の初期費用について、各メディアでは以下のような目安が示されています。
| 情報元 | 初期費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| ZOUS | 500万〜3,000万円 | 土地代+整備コスト+管理棟等の建設コスト |
| Square | 500万〜3,000万円 | 山林・農地からの開業を想定 |
| ZOUS | 土地代200万〜3,000万円 | 郊外の自然豊かな場所を想定。接道状況や面積で変動 |
参照元:ZOUS「キャンプ場をつくるには?」 / Square「キャンプ場の開業に必要な資格・許可、初期費用」
既存のキャンプ場を事業承継で引き継ぐ場合は、道具や設備がそろっているケースもあるため、ゼロからの開業よりも初期費用を抑えられる可能性があります。マネーフォワードによると、日本オートキャンプ協会でキャンプ場売買のマッチングが行われています。
費用の内訳
初期費用の主な内訳は以下のとおりです。
- 土地の購入代または賃借料
- 整地・伐採費用(ZOUSによると専門業者への依頼で1平方メートルあたり約3,000円が目安)
- 管理棟の建設費(ZOUSによると最低限の設備を備えた管理棟で約1,000万円)
- トイレ・シャワー・炊事場の設置費用
- 電気・水道の引き込み工事
- 浄化槽の設置費用(下水道が未整備の地域)
- 駐車場の整備費用
費用の中で最も大きくなりやすいのが、土地代と管理棟の建設費です。管理棟として活用できる建物が付帯している土地を選べば、建設費を大幅に抑えられます。
ランニングコストの考え方
開業後のランニングコストとしては、水道光熱費、人件費、設備のメンテナンス費用、消耗品の補充費用、広告・集客費用などがかかります。
ホテル・旅館利益向上プロジェクトは「キャンプ場にもオンシーズンとオフシーズンがあり、日本キャンプ協会のキャンプ白書2021によると、キャンプをする人が多いのは5月、8〜10月で、11〜3月は利用者が減少する」と述べています。オフシーズンでもランニングコストは発生するため、通年での収支計画を立てておくことが重要です。
参照元:ホテル・旅館利益向上プロジェクト「キャンプ場経営を始めるには?」
キャンプ場の立地条件の選び方
キャンプ場の成功は立地で決まるといっても過言ではありません。アクセス、周辺環境、インフラ状況、法規制の4つの観点から確認しましょう。
アクセス・周辺環境のチェックポイント
Squareは「キャンプの多様化はキャンプ場の運営形態の多様化にもつながっている」と述べており、ターゲットとする客層に応じた立地選びが重要です。
立地選定時にチェックしておきたい主なポイントは以下のとおりです。
- 主要都市からのアクセス時間(車で1.5〜2時間以内が理想的)
- 最寄りICや駅からの距離と道路状況
- 周辺の自然環境(山・川・海・森林などのロケーション)
- 近隣の商業施設(食材・日用品の買い出しスポット)
- 近隣の温浴施設(敷地内に温泉がない場合の代替手段)
- 競合キャンプ場の有無と差別化の余地
インフラ(水道・電気・通信)の確認
ZOUSは「キャンプ場をつくるための初期費用は土地の広さや立地、購入した土地の状況によって異なる」としています。特にインフラの整備状況は初期費用に大きく影響します。
Squareも「山林や農地である土地を購入してキャンプ場を開業するには、土地の購入コスト、伐採、整地、転用などの整備コストが必要」と述べています。土地代が安くても、上水道の引き込みが遠かったり、浄化槽の設置が必要だったりすると、インフラ整備だけで大きなコストがかかります。
土地を選ぶ際は、以下のインフラ状況を事前に確認しましょう。
- 上水道の引き込み可否と距離(井戸水の場合は水質検査が必要)
- 下水道の有無(未整備の場合は浄化槽の設置が必要)
- 電気の引き込み可否と電柱からの距離
- 通信環境(光回線の引き込み可否、モバイル回線の電波状況)
用途地域・法規制の確認
キャンプ場を開業する土地が農地に該当する場合は、農地転用の手続きが必要です。山林の場合は1ha以上の伐採で林地開発許可が必要になります。また、管理棟を新築する場合、都市計画区域内であれば建築確認が必要です。
HCT(トレーラーハウス販売)は「形態によってターゲット層が異なるほか、必要な許認可も違ってくるため、どのようなスタイルで経営するのかをしっかり定める必要がある」と述べています。コンセプトが固まった段階で、自治体の都市計画課や保健所に事前相談を行いましょう。
キャンプ場のレイアウトと区画設計
土地が決まったら、次はキャンプサイトのレイアウト設計です。区画の大きさ、間隔、動線を適切に設計することで、利用者の満足度と収益性の両方を高められます。
区画サイトとフリーサイトの違い
キャンプ場のサイト設計には、大きく「区画サイト」と「フリーサイト」の2種類があります。
| タイプ | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 区画サイト | 1組ごとに区画を割り当て | 予約管理がしやすい。隣との距離を確保でき、トラブルが少ない | 整地や区画の区切りに費用がかかる |
| フリーサイト | 利用者が自由に場所を選ぶ | 整備コストが低い。開放感がある | 混雑時のトラブルリスク。予約管理が難しい |
マネーフォワードは「1組ごとに区画を確保する区画サイト」をキャンプ場の基本形態として紹介しています。収益の安定性と管理のしやすさを考えると、特に開業当初は区画サイトをベースにするのが堅実です。
オートキャンプサイトの基本構成
ホテル・旅館利益向上プロジェクトによると、オートキャンプサイトは一般的に以下のスペースから構成されます。
- テントスペース(テントを設営するエリア)
- 駐車スペース(車1台分を確保)
- リビングスペース(タープやテーブル・チェアを設置するエリア)
1区画のサイズは一般的に10m×10m(100平方メートル)程度が目安とされていますが、ゆとりのあるレイアウトにする場合は10m×12m以上を確保する施設もあります。区画間の間隔を十分に取ることで、プライベート感が高まり利用者の満足度が上がります。
なお、ホテル・旅館利益向上プロジェクトは「長時間のアイドリング禁止をはじめとした騒音対策や、移動制限なども検討が必要」と指摘しています。レイアウト設計の段階で、利用ルールとセットで検討しておきましょう。
共用設備(管理棟・トイレ・炊事場)の配置
共用設備の配置は、利用者の動線と設備の利用率に直結します。ZOUSによると、管理棟には受付やシャワー・トイレなどの最低限の設備を備える必要があり、建設費は約1,000万円が目安です。
トイレと炊事場は、どの区画からもアクセスしやすい位置に配置するのが基本です。ただし、宿泊エリアに近すぎると夜間の利用時に騒音が気になるため、適度な距離感を保つことが大切です。
開業当初は区画サイトのみでスタートし、需要に応じてグランピング棟やサウナを増設する段階的な拡張も有効な戦略です。最初のレイアウト設計の段階で、将来の拡張用スペースを確保しておくと、後から計画変更する手間を省けます。
キャンプ場からグランピングへの事業拡張
キャンプ場経営を安定させたら、次のステップとして検討したいのがグランピング棟の増設です。HCTは「グランピング施設を経営するメリットとして収益性が高い点が挙げられる」としており、客単価の向上による売上改善が期待できます。
グランピング棟を増設するメリット
キャンプ場にグランピング棟を併設することで、以下のメリットが期待できます。
- 客単価の大幅な向上(キャンプサイト利用料の全国平均が約4,314円に対し、グランピング施設は1泊数万円の価格帯が一般的)
- キャンプ初心者やファミリー層、女性客など新しい客層の取り込み
- 冬場やオフシーズンの稼働率改善(断熱性の高い構造物+サウナで通年営業が可能に)
- 既存のキャンプ場インフラ(管理棟・トイレ・炊事場)を共用でき、追加投資を抑えられる
マネーフォワードは「得られる収入は施設形態(グランピング施設・オートキャンプ場など)によっても異なる」としており、グランピング施設はオートキャンプ場より収益性が高い傾向にあります。一方で、旅館業許可の取得や設備の充実など、追加の手続きと投資が必要になる点も考慮が必要です。

低コスト・短工期で増設できる宿泊構造物の選択肢
グランピング棟を増設する場合、宿泊構造物の選択が費用とスケジュールに直結します。建築確認が原則不要な構造物を選べば、設計費・申請費を抑えつつ短期間で増設が可能です。
たとえばインスタントハウスは、法的に「工作物」として扱われるため建築確認申請が原則不要です(行政判断による)。基礎工事不要・ペグやビスで固定する構造で、設営も数時間(約6時間)で完了します。

構造体自体が断熱材(硬質ウレタンフォーム)のため、断熱ライナーの追加購入が不要で、冬場でも快適な宿泊環境を提供できます。キャンプ場の空きスペースにグランピング棟を数棟増設し、段階的に事業を拡張していくアプローチは、投資リスクを抑えながら収益性を高める現実的な選択肢です。
キャンプ場開業でよくある質問
- キャンプ場の開業費用はどのくらいですか?
-
ZOUSやSquareによると、山林や農地からキャンプ場を開業する場合の初期費用は500万〜3,000万円程度が目安です。土地代、整地・伐採費用、管理棟の建設費、インフラ整備費などが含まれます。既存のキャンプ場を事業承継で引き継ぐ場合は、初期費用を抑えられる可能性があります。
- キャンプ場の開業に資格は必要ですか?
-
キャンプ場の運営自体に特別な資格は不要ですが、提供するサービスに応じて許認可が必要になります。コテージやグランピングテントを提供する場合は旅館業許可、食材を提供する場合は飲食店営業許可、酒類を販売する場合は酒類販売業免許がそれぞれ必要です。利用者が自分のテントを設営するだけの区画サイトであれば、旅館業許可は原則不要です。
- 区画サイト1区画の広さはどのくらい必要ですか?
-
オートキャンプサイトの場合、1区画10m×10m(100平方メートル)程度が一般的な目安です。テントスペース、駐車スペース、リビングスペースを含む広さが必要になります。ゆとりのあるレイアウトにする場合は10m×12m以上を確保する施設もあります。
- キャンプ場経営は儲かりますか?
-
イエウール土地活用の試算例では、10区画・利用料5,000円・稼働率60%のオートキャンプ場で年間約495万円の収入が見込まれています。ただしオフシーズン(11〜3月)の稼働率低下がキャンプ場経営の大きな課題です。グランピング棟やサウナの併設で通年での収益安定を図る施設も増えています。
- キャンプ場にグランピング棟を後から増設できますか?
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可能です。キャンプ場の空きスペースにグランピング棟を増設する施設は増えています。建築確認が原則不要な構造物(インスタントハウスなど)を選べば、設計費・申請費を抑えつつ短期間で増設できます。ただしグランピング棟では旅館業許可が必要になるため、保健所への事前相談が必要です。
まとめ
- キャンプ場の初期費用は500万〜3,000万円が目安。土地代と管理棟の建設費が大きなウエイトを占める
- 必要な許認可はサービス内容に応じて異なる。利用者が自分でテントを張るだけなら旅館業許可は原則不要
- 立地選びでは、アクセス・自然環境・インフラ状況・法規制の4点を事前に確認
- 区画サイトは10m×10m程度が目安。将来のグランピング棟増設を見据えた拡張用スペースの確保も検討
- キャンプ場からグランピングへの段階的な事業拡張は、投資リスクを抑えながら収益性を高める有効な戦略
キャンプ場の開業は、ホテルや旅館と比べて低コストで始められる事業です。ただし、オフシーズンの稼働率低下という構造的な課題を抱えています。この課題を解決する有効な手段の一つが、グランピング棟やサウナの増設による通年営業の実現です。
まずはキャンプ場として開業し、需要を確認しながら段階的にグランピングへ拡張していくアプローチは、投資リスクを最小限に抑えた現実的な経営戦略です。グランピング棟の増設を検討される際は、建築確認が原則不要で短期間で設営できるインスタントハウスもぜひ選択肢に入れてみてください。




