インスタントルーム完全ガイド|避難所の個室空間を15分で実現する新製品



集団での過酷な避難所生活において、「プライバシーがないこと」は精神的・身体的ストレスの大きな要因です。着替えも睡眠も授乳も、すべて周囲の目がある空間で行わなければならない。そんな避難所の課題を解決するために生まれたのが、LIFULL ArchiTechの新製品「インスタントルーム」です。

インスタントルームは、ダンボールの多層構造を活かした避難所向けの個室空間。工具を使わずに約15分で設営でき、断熱性・遮音性・プライバシー保護を同時に実現します。2026年5月13日に販売が開始され、能登半島地震の被災地で活用された実績をもとに改良された製品です。

監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)

この記事では、インスタントルームの特徴や基本スペックから、インスタントハウスとの違い、一般的な避難所パーテーションとの比較、そして自治体や企業が導入を検討する際のポイントまでまとめて解説します。
目次

インスタントルームとは|避難所の個室空間を15分で実現する新製品

開発の背景と目的

災害時の集団避難生活では、断熱性のない体育館や公民館に多くの方が身を寄せることになります。冬場の寒さによる健康被害、密集空間での感染症の蔓延、そしてプライバシーの欠如によるストレス。こうした身体的・精神的負担は深刻な問題です。

インスタントルームは、こうした避難所の過酷な環境を改善するために開発されました。眠る、着替える、授乳する。そんな当たり前の時間を、少しでも安心して過ごせる空間をつくりたい。その想いが、この製品の出発点になっています。

インスタントルームの基本スペックと特徴

まずはインスタントルームの基本的なスペックを確認しておきましょう。

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項目スペック
サイズ(組立時)幅 約2m × 奥行 約2m × 高さ 約2.7m(約4.00㎡ / 2.42畳)
サイズ(保管時)約120cm × 64cm × 16cm × 2箱(1ユニットあたり、平積み可能)
素材ダンボール(多層構造)、留め具はクリップ使用
重量約20kg
設営時間約15分(大人2名、工具不要)
主な機能断熱性、遮音性、プライバシー保護、ユニット連結対応

高さが約2.7mあるため、立ち上がっても圧迫感がありません。一般的なダンボールパーテーションは高さ0.9〜1.8m程度のものが多いので、この天井高は大きな差別化ポイント。周りからの視線を遮れる個室空間を実現しています。

ユニットを連結すれば、家族単位でひとつの広い空間を確保することも可能です。授乳室や着替え室として使うなど、避難所での多様なニーズに柔軟に対応できる設計になっています。

インスタントルームとインスタントハウスの違いを比較

LIFULL ArchiTechの製品には「インスタントハウス」と「インスタントルーム」がありますが、名前が似ているので混同しやすいですよね。実はこの2つ、素材も構造も用途もまったく異なる製品です。

素材・構造の違い

インスタントハウスは、テント生地を空気で膨らませた後、内側から硬質発泡ウレタンを吹き付けて固化させるドーム型の構築物です。断熱材そのもので360°覆われた構造になっており、外気温の影響を受けにくい設計が特徴。屋外に設置して長期間使用することを想定しています。

一方のインスタントルームは、ダンボールの多層構造による屋内設置型の個室空間です。体育館や公民館などの避難所の中に設置し、プライバシーと断熱性を確保するために使います。

設置時間・設置場所の違い

設営スピードにも大きな差があります。インスタントルームは大人2名で約15分。工具も一切不要で、クリップで留めるだけの簡単な組み立てです。対するインスタントハウスは、専門スタッフによる設営が必要で、1棟あたり数時間(約6時間)かかります。

価格帯と用途の選び分け

両製品の主な違いを一覧表にまとめました。

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比較項目インスタントルームインスタントハウス
素材ダンボール(多層構造)テント生地+硬質発泡ウレタン
設置場所屋内(避難所の体育館等)屋外(グランピング場、災害支援拠点等)
設営時間約15分(大人2名、工具不要)数時間(約6時間、専門スタッフによる設営)
サイズ約2m × 2m × 高さ2.7m(連結可能)シンプル43〜ベーシック60まで複数展開
重量約20kg約200kg ※サイズにより異なります
耐候性屋内使用が前提耐風80m/s、耐震震度6強、積雪40cm対応
価格帯段ボール製品のため安価(詳細は要問い合わせ)シンプル43 2,244,000円〜ベーシック60 4,950,000円(税込、設営費込)
主な用途避難所の個室空間、授乳室、着替え室グランピング宿泊、ワークスペース、災害支援拠点
使用後解体・再設営可能。パーツ交換可能。使用後はダンボールとしてリサイクル可能。解体・移設が可能(パージ型)
選び分けのポイント

避難所の屋内で「すぐに・軽く・多数」設置したいならインスタントルーム。屋外で「断熱・耐候・長期」使える空間が必要ならインスタントハウス。用途に応じた選び分けが大切です。

一般的な避難所パーテーションとインスタントルームの違い

避難所で使われる間仕切りといえば、ダンボール製のパーテーションが一般的です。タカムラ産業のシステムパーテーションや、ハコデルームなど、さまざまな製品が市場に出ています。ではインスタントルームは、これらの一般的なパーテーションと何が違うのでしょうか。

断熱性・遮音性の差

一般的なダンボールパーテーションは、視線を遮ることが主な目的です。1枚のダンボール板で仕切るだけなので、断熱効果や遮音効果はほとんど期待できません。冬場の体育館で使っても、寒さは壁の向こう側と同じまま。

インスタントルームは、ダンボールの多層構造を活かして断熱性と遮音性を確保しています。壁面だけでなく天井まで覆われた「個室」なので、体感的な暖かさや静かさが段違いです。

高さ・連結・プライバシー保護の差

もうひとつの大きな違いが「高さ」です。多くの避難所用パーテーションは高さが0.9m〜1.8m程度。座った状態で視線を遮る程度の設計で、立ち上がれば周囲から丸見えになってしまいます。

インスタントルームの高さは約2.7m。天井まで完全に閉じた個室空間なので、着替えや授乳も安心して行えます。

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比較項目一般的なダンボールパーテーションインスタントルーム
高さ0.9m〜1.8m程度約2.7m(天井あり)
構造仕切り板(間仕切り型)壁面+天井の完全個室型
断熱性ほぼなしダンボール多層構造で断熱効果あり
遮音性ほぼなし多層構造による遮音効果あり
連結一部製品で対応ユニット連結で広さを自由に変更可能
設営時間数分〜10分程度約15分(大人2名)
感染症対策視線は遮るが飛沫は防げない個室空間による隔離機能あり

インスタントルームの5つのメリット

ここまでの比較をふまえて、インスタントルームならではのメリットを5つに整理してみます。

1. 15分で設営完了、工具は一切不要

大人2名がいれば、約15分で1ユニットの設営が完了します。ガムテープもドライバーも不要で、クリップで留めるだけ。発災直後の混乱した状況でも、避難所に到着した職員やボランティアがすぐに組み立てられるのは大きな強みです。

たとえば、100ユニット分を10組の2名チームで一斉に設営すれば、わずか30分程度で100世帯分の個室空間を確保できる計算になります。

2. ユニット連結で広さを自在に変更できる

1ユニットは約2m × 2m(約2.42畳)ですが、複数のユニットを連結することで広さを自由に変えられます。1人暮らしの方はそのまま1ユニットで。4人家族なら2ユニットを連結して約4.84畳のスペースに。

授乳室や着替え室、おむつ替えスペースなど、避難所運営に必要な機能別の空間も柔軟に設けられます。

3. パーツ交換で衛生管理が容易

避難所生活が長期化すると、衛生面の管理が課題になってきます。インスタントルームはパーツ構成になっているため、汚れや破損が発生しても、その部分だけをすぐに交換できます。全体を入れ替える必要がなく、効率的に清潔な環境を維持できる設計です。

4. 使用後はリサイクルに回せる

素材がダンボールなので、役目を終えたあとはリサイクルに出せます。災害後は大量のがれきや廃棄物が発生しますが、インスタントルームは廃棄物処理の負担を最小限に抑えながら、環境負荷の低い形で処分が可能です。

5. インスタントハウス モバイルとの備蓄連携

自治体にとって悩ましいのが「平時の備蓄スペースの確保」。新たに防災倉庫を建てたり、施設を改修したりするには大きな予算が必要です。

この課題を解決するのが、同じLIFULL ArchiTechの「インスタントハウス モバイル」との組み合わせ。インスタントハウス モバイルは3tトラックで輸送可能な移動式の空間で、インスタントルームを最大40棟分収納できる容量を備えています。

インスタントハウス モバイルとの連携イメージ
  • 平時は屋外に設置して備蓄品の保管場所として活用
  • 発災時は必要な場所へトラックで運搬し、中のインスタントルームを避難所に展開
  • インスタントルームを搬出した後のモバイル本体は、医務室やボランティア拠点として多目的に利用可能

防災倉庫の新設や施設改修が不要になるため、自治体の財政的負担を抑えながら避難所運営の質を向上させられる仕組みです。

インスタントルームの導入を検討する自治体・企業が押さえたいポイント

インスタントルームの導入を検討する際に、確認しておきたいポイントを整理します。

備蓄スペースと保管方法

保管時のサイズは約120cm × 64cm × 16cmの箱が2つ(1ユニットあたり)で、平積みが可能です。コンパクトに収まるため、既存の防災倉庫や学校の備蓄室にも保管しやすい設計になっています。

たとえば50ユニット分(約100箱)を備蓄する場合でも、パレット積みで数平米のスペースに収まります。先ほど紹介したインスタントハウス モバイルを備蓄倉庫として使えば、さらに省スペースかつ移動可能な運用が実現できます。

平時の活用と防災訓練での利用

備蓄品は「買って終わり」にしがちですが、インスタントルームは防災訓練で実際に組み立て体験を行うことができます。15分で設営できるという手軽さを訓練参加者に体感してもらうことで、有事の際にスムーズな展開が期待できます。

ダンボール素材で約20kgと軽量なので、訓練で繰り返し使っても運搬の負担が小さいのもポイント。学校の防災授業やイベントでの展示利用にも適しています。

導入前の確認チェックリスト
  • 避難所として想定している施設の面積と収容人数を確認する
  • 備蓄スペース(保管場所)を確保できるか検討する
  • インスタントハウス モバイルとの備蓄連携が適しているか確認する
  • 防災訓練での組み立て体験を計画に組み込む
  • 必要ユニット数を算出し、価格の見積もりを依頼する

価格や納期などの詳細はお問い合わせフォームから確認できます。

インスタントルームに関するよくある質問

インスタントルームとインスタントハウスはどう使い分けますか?

インスタントルームは体育館や公民館など「屋内の避難所」で使う個室空間です。一方、インスタントハウスは屋外に設置する構築物で、グランピング施設や災害支援拠点に使われます。屋内で迅速に個室をつくりたいならインスタントルーム、屋外で耐候性のある空間が必要ならインスタントハウスという選び分けが基本です。

ダンボール製で耐久性に問題はありませんか?

インスタントルームは避難所の屋内で使用することを前提とした製品です。屋外の風雨に直接さらされる使い方は想定されていませんが、屋内環境であれば多層構造のダンボールは十分な強度を持っています。パーツ構成になっているため、部分的に破損や汚れが生じても該当パーツだけを交換可能。長期の避難所生活でも衛生的に使い続けることができます。

能登半島地震での活用実績はありますか?

はい。インスタントルームは令和6年能登半島地震の被災地で実際に活用されました。過酷な避難生活の中でプライバシーを確保できるスペースとして、また授乳室や着替え室、おむつ替えスペースとしても使われています。今回販売が開始された製品は、この被災地での実績をもとにさらに改良を加えたものです。

まとめ|平時の備えが有事の安心をつくる

インスタントルームは、避難所生活の「当たり前の時間」を守るために生まれた製品です。15分で設営できる手軽さ、断熱・遮音・プライバシー保護を兼ね備えた個室空間、そして使い終わったらリサイクルできるダンボール素材。災害対応のスピードと避難者の生活の質を両立する、これまでにない選択肢といえます。

この記事のまとめ
  • インスタントルームはダンボール多層構造の避難所向け個室空間で、大人2名・約15分・工具不要で設営可能
  • インスタントハウスとは素材・設置場所・用途が異なり、屋内の避難所で使うのがインスタントルーム
  • 一般的なダンボールパーテーションとは「間仕切り」vs「個室」の差があり、断熱性・遮音性・天井の有無が大きく異なる
  • ユニット連結やパーツ交換に対応し、多様な避難所ニーズに柔軟に対応できる
  • インスタントハウス モバイルとの組み合わせで、備蓄スペース問題と有事の展開を同時に解決できる
  • 能登半島地震の被災地での活用実績をもとに改良された製品で、2026年5月に販売開始

防災は「備えたときにはもう遅い」ではなく「備えたからこそ間に合う」もの。インスタントルームの導入について詳しく知りたい方は、LIFULL ArchiTechのお問い合わせフォームから相談してみてください。

参照元: LIFULL ArchiTech、集団避難生活での居住性とプライバシーを守る「インスタントルーム」を販売開始(https://lifull.com/news/48679/

参照元: LIFULL ArchiTech、車で輸送可能な「インスタントハウス モバイル」の販売を開始(https://lifull.com/news/48132/

参照元: 内閣府「災害関連死事例集(増補版)(令和5年5月増補)」(https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/kanrenshijirei.html

監修者

山中典(やまなか つかさ)

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO/名古屋工業大学共同研究員。インスタントハウスの開発・事業を軸に、災害支援から多様な空間活用まで幅広く展開している。

東証プライム上場LIFULLグループ|導入実績240棟以上

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