「サウナ事業に参入したいけれど、開業費用がどのくらいかかるのか見当がつかない」という声をよく聞きます。検索して出てくるのは2,000万円以上かかる都市型サウナの情報ばかりで、その金額を見て諦めかけている方もいるのではないでしょうか。
実は、サウナ開業の費用は施設の形態によって大きく変わります。屋外にサウナを設置するアウトドア型なら、テナント型よりはるかに小さな投資で始められるケースがあるのです。
監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
この記事では、サウナ開業に必要な費用の目安を形態別に整理したうえで、公衆浴場法をはじめとする許可・法規制、事業計画の立て方までまとめて解説します。既存のグランピング施設やキャンプ場にサウナを追加して客単価を上げたい方にも役立つ内容です。
サウナ事業の市場動向と参入形態
費用の話に入る前に、まずはサウナ事業の全体像を押さえておきましょう。どの形態で参入するかによって、必要な資金も許可のハードルもまったく違ってきます。
サウナ事業が注目される背景
サウナ人気は一時的なブームを超えて、健康習慣のひとつとして定着しつつあります。個室サウナやアウトドアサウナなど利用スタイルも多様化しており、単に「熱い部屋を提供する」だけでなく、体験の独自性が重視される市場に変わってきました。
とくに自然の中で楽しむアウトドアサウナは、外気浴のロケーションそのものが差別化要素になります。都市部の施設には真似できない価値を、土地さえあれば作れるのが特徴です。
都市型サウナとアウトドアサウナの違い
事業としてのサウナは、大きく分けると都市型とアウトドア型の2つに分類できます。両者の違いを表で整理しました。
| 項目 | 都市型(テナント・個室) | アウトドア型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 数千万円規模になりやすい | 設備構成次第で数百万円規模から検討可能 |
| 立地コスト | 賃料が継続的に発生 | 自己所有地・借地なら大幅に抑えられる |
| 差別化要素 | 内装デザイン・設備スペック | 自然環境・外気浴のロケーション |
| 拡張性 | 物件の制約を受ける | 1台から始めて段階的に増設しやすい |
小規模参入ならアウトドアサウナが有力な理由
アウトドアサウナの強みは、初期投資を段階的にコントロールできる点にあります。まず1台のサウナ小屋から始めて、集客の手応えを見ながら増設していく戦略が取りやすいのです。
グランピング施設やキャンプ場をすでに運営している場合は、遊休スペースへの後付けで新しい収益源を作れます。宿泊とサウナを組み合わせたプランは客単価の引き上げにも直結するため、既存事業との相性も良好です。
サウナ開業にかかる費用の目安【形態別】
ここからが本題です。サウナ開業の費用は「どこに・どの規模で作るか」で桁が変わるため、形態別に見ていきます。
都市型・テナント型サウナの初期費用
テナントビルに本格的なサウナ施設を作る場合、総額で2,000万円から5,000万円程度の初期費用を見込むのが一般的とされています。100坪規模の温浴施設になると、内装や設備工事だけで2億円前後という試算もあるほどです。
金額が大きくなる理由は、給排水や換気などの設備工事に加えて、防水・防火まわりの施工に専門性が求められるためです。物件取得費や保証金も上乗せされるので、都市型は資金力のある事業者向けの選択肢といえます。
参照元:STORES Magazine「サウナを開業するには?初期費用・必要資格・公衆浴場法から成功の秘訣まで解説」/mincanコラム「サウナ開業にかかる費用はどのくらい?」
アウトドアサウナの初期費用
アウトドア型の初期費用は、サウナ本体の選び方でほぼ決まります。費用の内訳は次のとおりです。
- サウナ本体(テント型・バレル型・ドーム型など)
- ストーブ(電気式または薪式)とサウナストーン
- 水風呂・シャワーなどの水まわり設備
- 外気浴スペース(デッキ・チェア)
- 更衣スペース・照明・電源まわりの整備
本体は数十万円台のテント型から、数百万円規模の小屋型・ドーム型まで幅があります。土地を自己所有していれば物件取得費が不要になるため、都市型と比べて初期投資を大きく圧縮できるのがアウトドア型の魅力です。
見落としやすいのが電源工事の費用でしょう。電気ストーブの多くは200V電源や動力契約を前提としており、山間部や農地では引き込み工事だけで想定外の出費になることがあります。100V電源で稼働する機種を選べば、電気工事そのものを省けるため、候補選定の段階で電源要件を必ず確認してください。
見落としがちなランニングコスト
開業後に効いてくるのが運営コストです。燃料費や光熱費、水風呂の水道代はいずれも高騰傾向にあり、収支計画の前提を狂わせる要因になっています。
ほかにも薪の調達費、設備のメンテナンス費、予約システムの利用料、損害保険料、人件費などが毎月積み上がります。とくに木製サウナは定期的な再塗装や部材交換が発生しやすいので、本体価格だけでなく維持の手間まで含めて比較するのが賢明です。
参照元:マネーフォワード クラウド会社設立「サウナを開業するには?必要な営業許可や資金を解説」
サウナ開業に必要な許可・法規制
費用と並んで参入前に押さえておきたいのが許可の問題です。「屋外の小さなサウナだから許可は要らないだろう」と考えて設備を買ってしまうと、あとで営業できないという最悪の事態になりかねません。
公衆浴場法の営業許可が原則必要
公衆浴場は「温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」と定義されており、営業には公衆浴場法に基づく都道府県知事の許可が必要です。営利目的で不特定の利用者にサウナを提供する場合、銭湯などの一般公衆浴場とは別枠の「その他の公衆浴場」に該当するのが一般的とされています。
無許可での営業は罰則の対象になります。規模の大小や屋内外を問わず、事業としてサウナを提供するなら許可取得を前提に計画を組んでください。
参照元:厚生労働省「公衆浴場法概要」
消防法・建築基準法との関係
サウナ開業で確認すべき法律は公衆浴場法だけではありません。ストーブという火気設備を扱う以上、消防法に基づく確認や届出が関わってきます。薪ストーブを使う場合はとくに、煙突の設置基準や可燃物との離隔距離について消防署への相談が欠かせません。
サウナ小屋の規模や設置方法によっては建築基準法の手続きが必要になる場合もあります。どの手続きが必要かは構造物の種類と自治体の判断によって変わるため、設置前の確認が安全です。
参照元:株式会社秀建「サウナ開業に必要な営業許可|公衆浴場法・消防法・建築基準法の基準」
自治体条例の差と保健所への事前相談
実務上もっとも注意したいのがこの点です。公衆浴場の構造設備基準は都道府県などの条例で定められており、同じ設備でも自治体によって許可の判断が分かれることがあります。脱衣スペースの仕様、換気能力、水質管理の方法など、求められる要件は地域ごとに異なるのが実情です。
サウナ本体を購入してから「この構造では許可が下りない」と判明するのが、いちばん避けたい失敗パターンです。候補設備の図面や仕様書を持って、契約前に管轄保健所へ相談する流れにしておくと、手戻りのリスクを大きく減らせます。
宿泊施設に併設する場合の注意点
グランピング施設や旅館にサウナを併設するケースでは、旅館業法の許可を持っていても、入浴サービスの提供形態によって公衆浴場法の許可が別途必要と判断される場合があります。宿泊者専用か、日帰り利用も受けるか、貸切か共用かといった条件で扱いが変わるため、ここも自治体判断の領域です。
許可取得までの一般的な流れは次のようになります。
設備の図面・仕様書を持参し、構造設備基準を満たせるか確認します。消防署・建築部局への相談もこの段階で並行させると効率的です。
施設の平面図、設備仕様書、衛生管理の計画などを整えて営業許可を申請します。必要な書類は自治体ごとに異なるため、事前相談の際に一覧をもらっておくと確実です。
完成した施設が基準を満たしているか、保健所の担当者が現地で確認します。指摘があった場合は、是正して再検査という流れです。
許可証の交付を受けて、いよいよ営業開始です。検査や審査にかかる期間を見込み、開業予定日から逆算して準備を進めてください。
アウトドアサウナ事業計画の立て方
費用と許可の全体像がつかめたら、事業計画に落とし込んでいきます。融資や補助金の申請では事業計画書の提出を求められるのが通例なので、早い段階で骨組みを作っておくと後の手続きがスムーズです。
事業計画書に盛り込む基本項目
アウトドアサウナの事業計画書では、一般的な項目に加えて立地特有の要素を明記すると説得力が増します。押さえたい項目は次のとおりです。
- コンセプトとターゲット(貸切プライベート型か、イベント型かなど)
- 立地の強み(水辺・眺望・アクセス)と水風呂の水源計画
- 初期投資の内訳と資金調達方法
- 収支計画(客単価・稼働率・季節変動の想定)
- 許可取得のスケジュールと関係機関への相談状況
- 運営体制と安全管理(熱中症対策・入浴前の注意喚起)
収支シミュレーションの考え方
アウトドアサウナの売上は「1組あたりの単価 × 1日の組数 × 営業日数 × 稼働率」で組み立てます。貸切型なら1組単価を高めに設定できる一方、回転数には限りがあるため、単価と回転のバランスが計画の肝になります。
忘れてはいけないのが季節変動です。外気浴が気持ちいい秋冬は集客の追い風になる反面、真夏や悪天候の日は稼働が落ち込みやすくなります。年間を通じた稼働率を強気に置きすぎず、閑散期の販促企画まで織り込んでおくと、金融機関からの評価も得やすいでしょう。
資金調達の選択肢(融資・補助金)
自己資金で足りない分は、日本政策金融公庫や民間金融機関の融資でまかなうのが王道です。サウナ事業は宿泊・観光分野の設備投資と位置づけられることが多く、国や自治体の補助金・助成金を活用できるケースもあります。
公募時期や要件は年度ごとに変わるため、最新の公募情報の確認が欠かせません。グランピング・宿泊施設向けの補助金については、こちらの記事で詳しく解説しています。

事業用サウナの形態比較(テント型・バレル型・ドーム型)
アウトドアサウナ本体は、大きくテント型・バレル型・ドーム型の3タイプに分かれます。個人レジャー向けの比較記事は多いのですが、事業で使う場合は耐久性やメンテナンスの手間、許可の取りやすさという別の物差しが必要です。
| 項目 | テント型 | バレル型 | ドーム型 |
|---|---|---|---|
| 本体価格の傾向 | 低い(数十万円台から) | 中程度 | 中程度 |
| 設営・設置 | 利用のたびに設営が必要な製品が多い | 基礎や設置工事が必要になるのが一般的 | 製品により短期間で設置可能 |
| 断熱・熱効率 | 幕質に左右されやすい | 木材の厚みに依存 | 断熱構造の製品は熱を保ちやすい |
| メンテナンス | 幕の消耗・乾燥の手間 | 木材の再塗装・部材交換 | 構造による(樹脂系は木材より手間が少ない傾向) |
テントサウナは低コストだが事業用には課題も
テントサウナは導入コストの低さが最大の武器で、イベント出店やレンタル事業では今も主力の選択肢です。ただし毎回の設営・撤収と乾燥の手間、幕体の消耗を考えると、固定の施設として毎日稼働させる事業には向き不向きがあります。
バレルサウナの特徴
木の樽型フォルムが印象的なバレルサウナは、雰囲気づくりの面で強みがあります。一方で屋外に置く木製構造物なので、定期的な再塗装などの維持管理と、設置時の基礎まわりの検討が前提になるのが一般的です。
ドーム型サウナの特徴
ドーム型は室内の熱が対流しやすい形状で、断熱構造を備えた製品なら少ない熱源でもサウナらしい温度環境を作りやすいタイプです。燃料費・電気代というランニングコストに直結する部分なので、事業用としては注目度が高まっています。
電気工事不要で始められるインスタントサウナという選択肢
断熱材の発泡ウレタンを用いた独自の構造により、高い断熱性能と熱循環効率を実現した新しいサウナであるインスタントサウナは、小規模からサウナ事業を始めたい方に向いたドーム型サウナです。サイズは直径約2.2m、高さ約2.9mで、少人数の貸切利用にちょうどよい空間を確保できます。
100V/1500Wの電気ストーブで稼働し電気工事が不要
インスタントサウナの大きな特徴は、100V/1500Wの電気ストーブで稼働するため、電気工事が不要という点です。一般的な家庭用コンセントと同じ電源環境で使えるので、200V電源や動力契約の引き込み工事にかかる費用と時間をまるごと省けます。
薪ストーブのような火気の取り扱いが発生しないことも、運営面では見逃せません。薪の調達・保管や灰の処理が不要になり、少人数でも回しやすいオペレーションを組めます。断熱構造によって熱を保ちやすいことは、電気代を抑えたい事業者にとってもうれしいポイントです。
グランピング施設・キャンプ場への後付けで客単価アップ
すでにグランピング施設やキャンプ場を運営しているなら、遊休スペースにインスタントサウナを設置して「サウナ付きプラン」を作る展開が考えられます。宿泊料金にサウナ利用をオプションとして上乗せできれば、大きな追加投資なしに客単価を引き上げられるでしょう。
導入を検討する際は、設置予定地を管轄する保健所への事前相談とセットで進めてください。製品の詳細は下記からご覧いただけます。

サウナ開業に関するよくある質問
- サウナの営業許可は個人でも取得できますか?
-
個人事業主でも取得できるとされています。法人か個人かよりも、施設が構造設備基準を満たしているかが審査の中心になるため、事前に管轄保健所へ相談したうえで準備を進めるのが確実です。
- 電気ストーブと薪ストーブはどちらが事業に向いていますか?
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運営のしやすさを重視するなら電気式、体験の演出を重視するなら薪式が選ばれる傾向にあります。薪式は火気を扱うため消防面の確認事項が増えるのが一般的です。電源容量によっては電気工事不要で導入できる電気式もあり、少人数運営では管理しやすい選択肢になります。
- サウナ事業に補助金は使えますか?
-
活用できる場合があります。宿泊・観光関連の設備投資を支援する補助金の対象になるケースが一般的ですが、公募時期や要件は年度ごとに変わるため、申請前に最新の公募要領の確認が必要です。
- 水風呂は必ず設置しなければいけませんか?
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法令上の要否は自治体の基準によります。事業面では利用者の満足度を大きく左右する設備のため、井戸水・簡易水風呂・シャワーなど、立地に合わせた水源計画を事業計画の段階で検討しておくのが一般的です。
まとめ|サウナ開業は小さく始めて育てる時代へ
- 都市型サウナの初期費用は2,000万〜5,000万円程度が目安とされる一方、アウトドア型は設備構成次第で大きく抑えられる
- 営利目的のサウナは公衆浴場法の営業許可が原則必要で、基準は自治体条例により異なるため保健所への事前相談が必須
- 事業計画では季節変動と水源計画を織り込み、融資・補助金の活用も視野に入れる
- 100V電源で稼働する機種を選べば電気工事が不要になり、参入のハードルをさらに下げられる
サウナ事業は、数千万円の投資で勝負する都市型だけの世界ではなくなりました。土地の魅力を活かしたアウトドアサウナなら、小さく始めて手応えを見ながら育てていく参入方法が現実的に選べます。
成功の分かれ目は、設備選びと許可手続きを同時並行で進められるかどうかです。気になる設備が見つかったら、まず図面を持って保健所へ。その一歩が、開業までの最短ルートになります。





