「新しい事業を始めたいけれど、初期投資が大きすぎて踏み出せない」。これは新規事業を検討する小規模事業者に共通する悩みです。設備や施設に数百万円を投じたあと、もし思うように軌道に乗らなかったらどうしよう。そのリスクを前に、一歩を踏み出せないまま時間だけが過ぎてしまうケースは少なくありません。
監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
この記事では、初期投資の不安を和らげる2つのアプローチを組み合わせた方法を紹介します。補助金で費用負担を減らし、低リスクな設備で始めることで、新事業のハードルを下げる考え方を解説します。
新事業の「初期投資が不安」を分解する
初期投資への不安は、漠然と「お金がかかる」という感覚で語られがちですが、分解すると2つの要素に整理できます。
- 費用負担そのものの大きさ……設備や施設に必要な初期費用が高額であること
- 撤退できないリスク……うまくいかなかったときに、投じた費用を回収できず撤退も難しいこと
この2つは別々の課題なので、対策も分けて考えると効果的です。費用負担の大きさには「補助金で一部をまかなう」、撤退できないリスクには「撤去・移設しやすい設備を選ぶ」というアプローチが噛み合います。次の章から、それぞれの具体策を見ていきます。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画にもとづいて行う販路開拓などの取り組みを支援する、中小企業庁が所管する制度です。全国商工会連合会・日本商工会議所が事務局を担い、商工会・商工会議所の窓口で申請サポートを受けられる点が特徴です。
補助金・助成金ナビの解説でも、ものづくり補助金やIT導入補助金と比べて申請要件がシンプルで申請書類も比較的少ないため、補助金申請の入門として活用しやすい制度だとされています。新規事業の第一歩に補助金を取り入れたい小規模事業者にとって、はじめに検討しやすい制度といえます。
参照元:補助金・助成金ナビ「小規模事業者持続化補助金2026年度ガイド」
補助上限額・補助率の目安
2026年度(令和8年度)も制度は継続されています。一般型・通常枠の補助上限額は50万円で、特例を活用した場合は最大250万円まで上乗せが可能とされています。補助率は原則2分の1から3分の2が目安で、賃金引上げ特例を活用する赤字事業者については4分の3となるケースもあるようです。
| 項目 | 内容(2026年度の目安) |
|---|---|
| 補助上限額 | 通常枠50万円(特例活用で最大250万円) |
| 補助率 | 原則2/3(賃金引上げ特例の赤字事業者は3/4のケースあり) |
| 対象者 | 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は従業員5人以下、製造業その他は20人以下などの小規模事業者 |
| 申請窓口 | 商工会・商工会議所(電子申請、GビズIDプライムが必要) |
補助上限額・補助率・要件は公募回によって変わります。最新の数字は必ず中小企業庁の公式サイトや最寄りの商工会・商工会議所で確認してください。
参照元:補助金ポータル「小規模事業者持続化補助金【2026年・令和8年度】」 / 起業の「わからない」を「できる」に「2026年最新版 小規模事業者持続化補助金とは」
補助対象となる主な経費
一般型で補助対象となる経費には、機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託・外注費などがあります。新事業の立ち上げに必要な設備や販路開拓の取り組みを、これらの経費区分で計上していくことになります。
参照元:補助金の窓口「2026年の小規模事業者持続化補助金について解説」
補助金を使う前に押さえるべき注意点
補助金を新事業の設備投資に活用する場合、対象経費の判断には注意が必要です。「設備を買えば何でも補助される」わけではありません。特に重要な注意点を整理します。
「販路開拓の取り組み」として申請する必要がある
SoLaboの解説では、機械装置等費は単純な購入費用としてではなく、販路拡大や生産性向上の施策として申請しないと不採択になる可能性があると指摘されています。小規模事業者持続化補助金は事業に対して支払われるものであり、購入費用そのものに支払われるわけではないためです。設備を「何のための事業に、どう使うのか」という経営計画とセットで申請することが前提になります。
参照元:SoLabo「小規模事業者持続化補助金の機械装置等費で補助対象経費になるもの」
対象外になりやすいケースに注意する
補助金の窓口の解説では、機械装置等費の対象外となる例として、実質的に労働を伴わず有償でスペースや機械を貸与する事業(駐車場経営・貸倉庫経営・コワーキングスペース事業・コインランドリー事業など)における機械装置等が挙げられています。また、汎用性が高い設備(パソコンなど)や、単なる取り替え更新の購入も対象外とされています。
つまり、設備を「ただ貸すだけ」の事業ではなく、自ら運営してサービスや商品を提供し、販路開拓につなげる事業計画であることが重要です。新事業の設計段階で、この点を意識しておく必要があります。
参照元:補助金の窓口「小規模事業者持続化補助金の対象となる事業・経費を解説」
金額に応じた手続きルールがある
行政書士事務所リーガルネイビーの解説によると、単価50万円(税抜き)以上の機械装置等は「処分制限財産」に該当し、補助金の支払いを受けた後でも一定期間は処分(目的外使用・譲渡・廃棄など)が制限されます。また、1件あたり100万円(税込)を超える購入では、2者以上からの見積もりが必要になります。設備の金額によって手続きが変わる点を、計画段階で把握しておきましょう。
参照元:行政書士事務所リーガルネイビー「小規模事業者持続化補助金の経費について 機械装置等費編」
どの経費が補助対象になるかは、公募回ごとの公募要領と事業計画の内容によって判断が変わります。この記事の内容は一般的な傾向を整理したものです。実際に申請する設備が対象になるかどうかは、必ず最新の公募要領を確認し、商工会・商工会議所や認定支援機関に相談したうえで判断してください。
低リスクで新事業を始めるためのインスタントハウス活用
初期投資の不安のうち「撤退できないリスク」に対しては、設備の選び方が効いてきます。撤去・移設が柔軟で、初期費用を抑えやすい設備を選べば、「まず小さく始めて、手応えを見てから判断する」という進め方が可能になります。その選択肢のひとつがインスタントハウスです。
インスタントハウスとは
インスタントハウスは、2011年の東日本大震災での被災地支援をきっかけにした名古屋工業大学大学院の北川啓介教授の研究をもとに、LIFULLと名古屋工業大学大学院による共同研究にて開発した新しい構築物です。法的に「工作物」として扱われ、グランピング施設・農泊・店舗・サウナなど、さまざまな新事業の設備として活用されています。
「低リスクな新事業」と相性がよい4つの特性
- 初期費用を抑えやすい……本体価格に設営費が含まれているわかりやすい価格設定で、税込2,244,000円(シンプル43)から導入できる
- 動産として扱われるのが一般的……撤去・移設の柔軟性が高く、事業がうまくいかなかった場合の撤退コストを抑えやすい
- 建築確認申請が原則不要(行政判断による)……手続きの負担が軽く、新事業の立ち上げスピードを上げやすい
- 設営は数時間(約6時間)……基礎工事不要でペグやビスで固定し、短期間で事業を開始できる
断熱材を360°に使用しているため外気温の影響を受けにくく、通年での運用にも対応しやすい点も特徴です。サイズを調整することも可能なため、店舗・客室・受付棟・休憩スペースなど用途に合わせた使い方ができます。特注仕様の場合は製作期間が別途必要となります。

「補助金 × 撤退しやすい設備」で不安を二重に減らす
ここまでの2つのアプローチを組み合わせると、初期投資の不安を二方向から減らせます。補助金で費用負担の一部をまかない、撤去・移設しやすい設備で撤退リスクを抑える。この組み合わせが、新事業の一歩を踏み出しやすくする考え方です。
| 初期投資の不安 | 対策 | 効果 |
|---|---|---|
| 費用負担が大きい | 小規模事業者持続化補助金で経費の一部を補助 | 自己負担額を圧縮できる |
| 撤退できない | 動産扱いで撤去・移設しやすいインスタントハウス | うまくいかないときの撤退コストを抑えやすい |
インスタントハウスを補助対象経費として申請できるかどうかは、どのような事業に、どう活用するのかという経営計画の内容と、公募回ごとの公募要領によって判断が変わります。前章のとおり「単にスペースを貸すだけ」の事業は対象外になりやすい点にも注意が必要です。申請を検討する際は、事業計画とあわせて商工会・商工会議所や認定支援機関に相談し、対象になるかを確認してください。
補助金申請の基本的な流れ
小規模事業者持続化補助金の申請は、大きく次のステップで進みます。締切間際の準備不足を防ぐため、早めに流れを把握しておきましょう。
電子申請に必要なGビズIDプライムのアカウントを準備します。取得には一定の日数がかかるため、早めの手続きが安心です。
最寄りの商工会・商工会議所に相談し、経営計画や提出書類の確認を進めます。事業支援計画書(様式4)の発行を依頼する必要があるため、締切から逆算して早めに動きましょう。
販路開拓につながる経営計画と、補助対象経費を含む補助事業計画を作成します。設備を「どの事業に、どう活用するのか」を明確に記載することがポイントです。
電子申請システムから必要書類を提出します。郵送申請は受け付けられないため、締切時刻までに電子申請を完了させる必要があります。
採択されたら交付決定を受け、計画に沿って事業を実施します。実績報告を行ったあとに補助金が支払われる流れです。補助金は原則として後払いのため、いったん費用を立て替える資金繰りも想定しておきましょう。
公募スケジュールや必要書類は公募回ごとに異なります。申請を予定する際は、中小企業庁の公式サイトや事務局の公募要領で最新情報を確認してください。
参照元:Trinity「2026年最新 小規模事業者持続化補助金情報まとめ」
補助金とインスタントハウスの活用に関するよくある質問
- 小規模事業者持続化補助金はいくらまで補助されますか?
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2026年度の一般型・通常枠の補助上限額は50万円で、特例を活用した場合は最大250万円まで上乗せが可能とされています。補助率は原則2分の1から3分の2が目安です。補助上限額・補助率は公募回によって変わるため、最新の数字は中小企業庁の公式サイトや商工会・商工会議所で確認してください。
- インスタントハウスは補助金の対象になりますか?
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対象になるかどうかは、どのような事業にどう活用するのかという経営計画の内容と、公募回ごとの公募要領によって判断が変わります。販路開拓につながる事業の設備として計画に位置づけられるかが重要です。なお、単にスペースを貸すだけの事業は対象外になりやすい点に注意が必要です。申請を検討する際は、事業計画とあわせて商工会・商工会議所や認定支援機関に相談してください。
- 補助金はいつ受け取れますか?
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補助金は原則として後払いです。採択後に事業を実施し、実績報告を行ったあとに支払われる流れになります。そのため、設備費用などはいったん自己資金で立て替える必要があります。資金繰りを計画段階で想定しておくことが大切です。
- 補助金を使わずにインスタントハウスで新事業を始めることもできますか?
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できます。インスタントハウスは本体価格に設営費が含まれたわかりやすい価格設定で、税込2,244,000円から導入でき、撤去・移設も柔軟です。補助金はあくまで費用負担を軽減する手段のひとつで、必須ではありません。補助金の採択を待たずに始めたい場合は、自己資金での導入も選択肢になります。
- どの補助金が自分の事業に合うか分かりません。
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小規模事業者持続化補助金は申請要件が比較的シンプルで、補助金の入門として活用しやすい制度です。まずは最寄りの商工会・商工会議所に相談すると、自社に合う申請枠や経営計画の作り方についてアドバイスを受けられます。事業規模や取り組み内容によっては、他の補助金が適している場合もあるため、窓口で相談しながら検討するのがおすすめです。
まとめ
- 初期投資の不安は「費用負担の大きさ」と「撤退できないリスク」に分解できる
- 費用負担には小規模事業者持続化補助金、撤退リスクには撤去しやすい設備が噛み合う
- 補助金は「販路開拓の取り組み」として申請が必要で、単にスペースを貸すだけの事業は対象外になりやすい
- インスタントハウスは動産扱いで撤去・移設しやすく、初期費用も抑えやすいため低リスクな新事業と相性がよい
- 補助対象になるかは事業計画と公募要領しだい。商工会・商工会議所や認定支援機関への相談が前提
新事業の初期投資への不安は、「補助金で費用負担を減らす」「撤去しやすい設備で撤退リスクを抑える」という2つのアプローチを組み合わせることで、大きく和らげられます。小規模事業者持続化補助金は申請のハードルが比較的低く、新規事業の最初の一歩に取り入れやすい制度です。
そこに、動産として扱われ撤去・移設も柔軟なインスタントハウスを組み合わせれば、「まず小さく始めて、手応えを見てから判断する」という低リスクな進め方が現実的になります。まずは事業計画を整理し、最寄りの商工会・商工会議所に相談するところから始めてみてください。




