スキー場の飲食店では、繁忙期になると席不足や行列が発生し、売上機会を逃してしまうケースが少なくありません。そこで注目されているのが「外のスペース」を活用した飲食空間です。
監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
本記事では、グランピングテントの購入を検討している方に向けて、スキー場の環境でも活用できるドーム型空間「インスタントハウス」の特徴や導入ポイントを分かりやすく解説します。
スキー場の飲食店が「外のスペース」を求める3つの理由

スキー場の飲食店では、店内席だけでは繁忙期の需要を受け止めきれないケースが多く見られます。外部空間を活用した席や待機スペースを確保することで、売上機会を逃さない運営が可能になります。実際にスキー場では、外の休憩スペースやテイクアウトスペースを整備する施設が増えています。こうした流れの中で、断熱性のあるドーム空間は外席を快適な空間に変える手段として検討されるようになっています。
繁忙期の席不足・行列を解消して回転率を上げたい
スキー場の飲食店では、繁忙期に席が足りず長い行列が発生することがあります。席数を増やす外部空間を確保することは、回転率を改善する現実的な方法です。スキー客の多くが短時間で食事や休憩を済ませるため、席数が増えるだけで売上機会が増えるからです。例えばドーム型空間を外に設置すれば、店内席が満席でも追加の飲食スペースとして活用できます。結果として行列の解消につながり、繁忙期でも売上機会を逃しにくくなります。
レッスン待ち/レンタル待ちの“滞留”を売上に変えたい
スキー場では、レッスン待ちやレンタル待ちなどで人が滞留する時間帯があります。この待ち時間を飲食や休憩の時間に変えることで売上につながります。寒い屋外で待つより暖かい休憩空間があれば、飲み物や軽食を購入する利用者が増えるためです。例えばホットドリンクや軽食のテイクアウトと組み合わせれば、待機時間そのものが消費の機会になります。滞留スペースを活用することが、売上を増やす導線づくりになります。
雪景色×あたたかさで体験価値を上げ、客単価を伸ばしたい
スキー場では景色を楽しむ体験価値も重要です。雪景色を眺めながら暖かく過ごせる空間は、来場者にとって魅力的な休憩場所になります。単なる飲食スペースではなく「滞在体験」として価値が生まれるためです。例えば透明窓のあるドーム空間で雪景色を楽しみながら食事ができると、通常席より付加価値の高い席として提供できます。その結果、客単価を上げる導線をつくることができます。
スキー場のドームテント選びで失敗しないチェック項目

スキー場でドームテントを導入する際は、一般的な屋外テントとは異なる条件を確認する必要があります。積雪や強風などの自然環境に加え、設営条件や設備制約を把握することが重要です。これらを事前に確認しておくことで、設置後のトラブルを防ぎやすくなります。特に飲食用途の場合は、運営オペレーションを考慮した設備計画が重要になります。
積雪・強風への備え(耐雪仕様の考え方まで確認)
スキー場では積雪と強風への対応が重要になります。理由は、一般的なテントでは積雪荷重や風圧に対応できない場合があるためです。インスタントハウスは雪が積もりにくい形状になっていることに加え、屋根上の積雪40cmまで、耐雪仕様では60cmまで対応する設計となっています。実際に標高1000m以上のスキー場で設置された事例もあります。
また、地面に固定することで風速80m/s程度の風洞実験をクリアしています。
このような性能確認を行うことで、雪国でも安全に運用できる空間を選びやすくなります。
断熱・換気・結露(寒暖差が大きい環境での快適性)
スキー場では外気温が低く、室内外の温度差が大きくなります。そのため断熱性と換気のバランスが重要です。断熱性能が低いと暖房効率が悪くなり、結露の原因にもなります。インスタントハウスはテント内部に断熱材を吹き付ける構造で、外気の影響を受けにくい室内環境をつくります。マイナス20度を超える寒さの厳しい冬でも、インスタントハウス内はオイルヒーターをつけるだけで半袖で過ごせるほど快適です。
さらに自然換気を行う仕組みも採用されており、空気の入れ替えができる点も特徴です。寒暖差の大きい環境ではこうした性能が快適性を左右します。
設営条件(地盤・水平・トラック動線・固定方法)
ドームテントの導入では設営条件の確認が重要です。理由は、設営場所の条件によっては設置できないケースがあるためです。インスタントハウスは、原則設営地から70m以内に3トントラックが停車できるスペースが必要とされています。
また傾斜地では設営できないため、必要に応じてウッドデッキで水平面を確保します。設営条件を事前に確認することで、導入計画をスムーズに進めることができます。
火気・水回り・電気(設備の組み合わせで、自由度の高いオペレーションを実現)
屋外構造物では室内に一般的な建物と同じ設備を設置できない場合が多いため、用途に合わせて追加で組み合わせが必要な設備や動線についても検討が必要です。初期投資を抑えたシンプルな構造に必要な設備を追加することで、自由度の高い運用が可能です。例えば、既存の調理設備やキッチンユニット、水回りユニットを別途組み合わせ、インスタントハウス内をくつろぎスペースとして活用することで、開放感あふれる特別な飲食体験を提供できます。テイクアウト中心の飲食スペースとして運用することで、初期投資を抑えるオペレーションを設計することも考えられます。
電気は延長コードなどで引き込む形となり、スピーディーな運営開始が可能です。インスタントハウス特有の軽快な構造を活かしつつ、必要な周辺設備を組み合わせることで、より利便性が高い店舗オペレーションを構築できます。
※インスタントハウスでは室内での火気使用は禁止されているためご注意ください。
インスタントハウスとは|名古屋工業大学発の研究から生まれた新しい構築物

インスタントハウスは名古屋工業大学発の研究から生まれた新しい構築物です。テント生地と断熱材を組み合わせた構造により、短時間で設営できる空間を実現しています。屋外でも快適に過ごせる断熱性とデザイン性を兼ね備えている点が特徴です。宿泊施設やイベントスペースなど、さまざまな用途で活用されています。
ドーム形状が雪・風を受け流す「形」そのものの強み
インスタントハウスの特徴の一つがドーム形状です。丸い形状は風を受け流しやすく、雪も積もりにくい構造になっています。理由は、角が少ない形状ほど風圧や積雪荷重が分散されるためです。屋根角度は約45度で、雪が自然に滑り落ちやすい形状になっています。
このような構造は雪国の屋外空間でも活用しやすく、スキー場の環境にも適しています。
断熱性・デザイン性を兼ね備えた空間で“外席”を室内化
外席を快適な空間に変えることもインスタントハウスの強みです。理由は、テント内部に断熱材を吹き付けて構造体と一体化させる仕組みだからです。一般的なアウトドアテントよりも断熱性が圧倒的に高く、冷暖房の効率も高くなります。実際にスポットクーラーやヒーターを利用することで、年間を通して利用できる空間として活用されています。
そのため屋外スペースを快適な飲食空間に変えることができます。
数時間で設営できる仕組み(導入ハードルを下げるポイント)
インスタントハウスは設営時間が短いことも特徴です。理由は、テントを膨らませた後に内側から断熱材を吹き付けて構造体を形成する工法を採用しているためです。設営作業は約6時間程度で完了します。
一般的な建築と比較すると工期が短く、導入のハードルが低い点がメリットです。イベントやシーズン営業などにも活用しやすい仕組みです。
スキー場での活用アイデア|売上を伸ばす使い方
スキー場ではドーム空間をさまざまな用途で活用できます。飲食スペースだけでなく、物販や待機スペースなど複数の使い方が可能です。用途を分けて運用することで、売上の導線を増やすことができます。
外のイートイン/休憩ドーム(席数増+滞在時間UP)
最もシンプルな活用方法が外のイートインスペースです。屋外に座席を増やすことで、繁忙期の席不足を解消できます。例えば店内が満席でもドーム席があれば来店を断らずに済みます。暖かい休憩スペースとしても利用できるため、滞在時間を伸ばす効果も期待できます。結果として売上の取りこぼしを減らすことができます。
テイクアウト受け渡し・物販の“もう一つの売場”
テイクアウトの受け渡し専用スペースとして活用する方法もあります。理由は、店内の混雑を減らしながら販売数を増やせるためです。例えばホットドリンクや軽食、グッズ販売などをドーム空間で行うと、別の売場として機能します。来場者の動線に合わせて配置することで、自然に売上につながる導線をつくることができます。
予約席・VIP席・団体控室(単価UPの導線づくり)
ドーム空間を予約席として活用する方法もあります。特別感のある空間は付加価値を生みやすく、客単価を上げる導線になります。例えば団体客やツアー客の控室として利用すれば、事前予約の席として運用できます。雪景色を楽しめる空間として提供することで、通常席との差別化も可能です。こうした使い方は客単価向上につながります。
従業員の休憩・更衣スペース(現場オペの安定化)
従業員スペースとして利用する方法もあります。スキー場ではスタッフの休憩スペースが不足するケースがあります。ドーム空間を休憩室や更衣室として使えば、スタッフの作業環境が改善されます。スタッフが安定して働ける環境を整えることは、店舗運営の効率化にもつながります。結果としてサービス品質の向上にもつながります。
サイズ・レイアウトの考え方(43/50/60の選び方)
スキー場でドーム空間を導入する際は、サイズ選びとレイアウト設計が重要になります。インスタントハウスには主に43・50・60のサイズがあり、広さはそれぞれ約14.5㎡、約19.6㎡、約28.2㎡です。
用途に合わせて選ぶことで、飲食スペースや休憩スペースとして効率よく活用できます。席数だけで決めるのではなく、動線やオペレーションも含めて設計することが、実際の使いやすさを左右します。
必要な広さは「席数」より先に“動線”から逆算する
ドームのサイズは席数だけで決めるより、まず人の動きから考えることが重要です。理由は、飲食スペースでは通路や受け渡しスペースが必要になるためです。例えばテイクアウト受け渡しを行う場合、入口付近に待機スペースを確保しないと混雑が起きやすくなります。43サイズは小規模な休憩スペース、50サイズはテーブル席中心、60サイズは団体利用や物販併用などに向いています。動線を意識した設計にすることで、同じ広さでも使い勝手が大きく変わります。
入口扉・窓・網戸・庇など、雪国で効くオプションの選び方
雪国ではオプション選びも重要です。理由は、風雪や寒さへの対策が快適性に影響するためです。インスタントハウスではアルミ扉やガラス扉などの入口扉を選ぶことができ、耐候性やセキュリティを高めることができます。窓は標準で2ヶ所ですが、追加して5ヶ所にすることで開放感を高めることも可能です。
また網戸付き窓にすると通風が確保できます。スキー場では景色を楽しめる窓配置を考えることも、体験価値を高めるポイントになります。
スキー場ではウッドデッキが有効になるケースが多い
スキー場では斜面地が多いため、ウッドデッキを併用して水平面を確保するケースがよくあります。インスタントハウスは水平で平滑な地盤が必要とされており、傾斜地の場合はデッキなどで水平面を確保します。
またウッドデッキは水はけの改善にも役立ちます。実際に長野県の宿泊施設「くうねるたす」では、景色の良い高台にウッドデッキとドーム空間を組み合わせた施設が設置されています。
参考サイト:くうねるたす
費用と税金のポイント|固定資産税が気になる人へ
グランピングテントや屋外施設を検討する際、費用や税金が気になる方も多いと思います。インスタントハウスは建物とは異なる扱いになるケースが多く、建築に伴う附帯費用が出にくい特徴があります。こうした点が、気軽に導入しやすい理由の一つです。ただし行政判断による部分もあるため、設置前の確認は重要になります。
設計料・確認申請などの“附帯費用”が出にくい理由
インスタントハウスの特徴の一つが、建築に伴う附帯費用が発生しにくい点です。理由は、土地に定着した建築物ではなく移動可能な構造として扱われるケースがあるためです。そのため設計料や建築確認申請などの費用が不要になる場合があります。また不動産取得税や固定資産税、都市計画税がかからないとされています。
ただし行政によって見解が異なる可能性があるため、税金については導入前に確認しておくことが重要です。
繁忙期だけの運用でも回収しやすい「売上増」の作り方
スキー場では繁忙期の売上が大きな割合を占めます。そのため短期間でも売上を増やせる仕組みを作ることが重要です。例えば外の休憩スペースとして使うことで、飲食店の席不足を解消できます。さらにテイクアウトの受け渡しスペースや予約席として活用すれば、客単価を上げる導線も作れます。こうした使い方を組み合わせることで、シーズン営業でも導入メリットを作りやすくなります。
導入までの流れと、スキー場特有の注意点
ドーム空間の導入は、一般的な建築よりも短い期間で進めることができます。ただしスキー場では立地条件が特殊なため、事前確認が重要になります。特に積雪条件や電源確保などは、計画段階で整理しておく必要があります。ここでは導入までの基本的な流れを紹介します。
相談→現地確認→見積→納品までの全体像
導入の流れは比較的シンプルです。まず相談を行い、用途や設置場所を確認します。その後、必要に応じて現地確認を行い、設営可能かどうかを判断します。設営条件が確認できたら見積を作成し、発注後に納品という流れになります。インスタントハウスの場合、発注から納品までは原則3週間程度です。
設営作業は6時間程度で、比較的短期間で利用を開始できます。
豪雪地域の運用ルール(積雪管理・耐雪仕様・安全運用)
豪雪地域では積雪管理が重要になります。理由は、屋根上の雪が一定量を超えると安全性に影響するためです。インスタントハウスは屋根上積雪40cmまでが目安とされ、耐雪仕様では60cmまで対応します。
そのため積雪量を確認しながら、必要に応じて雪下ろしなどの管理を行うことが推奨されています。こうした運用ルールを決めておくことで、安全に利用することができます。
冬の暖房・電源引き込み
スキー場で利用する場合、暖房設備と電源確保が重要になります。インスタントハウスでは室内で火気は使用できないため、電気ヒーターなどを利用する形になります。電気は延長コードなどで室内に引き込むことが可能です。
また壁にエアコン下地を設置しておけば、壁掛けエアコンを取り付けることもできます。利用方法に合わせて電源計画を考えておくことが重要です。
よくある質問(スキー場向け)
スキー場での導入を検討する際には、設営条件や設備などについて多くの質問をいただきます。ここでは特に多い質問をまとめて解説します。導入前に確認しておくことで、運用イメージが具体的になります。
雪上でも使える?設営時に必要なことは?
雪上でも使用できますが、設営前には接地面の雪を取り除き、地面を露出させた状態で作業を行います。こうした設営条件を満たすことで、雪国でも設営が可能になります。
水回りは設置できる?できない場合の代替策は?
インスタントハウスでは外部の給排水管と接続する水回り設備は設置できません。これは、移動可能な仮設建築物としての特性によるものです。飲食用途で利用する場合は、店舗本体で調理を行い、ドーム空間は飲食スペースや休憩スペースとして使う方法が一般的です。またテイクアウト販売の受け渡しスペースとして活用する方法もあります。用途を分けて運用することで、効率よく利用できます。
強風・耐久性・保証は?
耐久性についてもよく質問をいただきます。インスタントハウスは地面に固定することで風速80m/s程度の風洞実験をクリアしています。
一般的なアウトドアテントより耐久性能が高いテント生地が採用されています。また保証期間は1年間となっており、保証期間内の不具合には補修対応が行われます。こうした仕様を理解したうえで利用することが重要です。
まとめ|スキー場の外スペースを「すぐに」「快適に」増やす選択肢
スキー場の飲食店では、席不足や待機スペースの不足が売上機会の損失につながることがあります。外のスペースを活用したドーム空間を導入することで、席数や売場を増やすことができます。インスタントハウスは短時間で設営できる断熱空間として、スキー場でも活用できる選択肢です。外席を快適な空間に変えることで、滞在体験を高めながら売上機会を広げることができます。


