
グランピング施設の稼働率が上がってきたから棟数を増やしたい。でも増設ってどんな手続きが必要で、どのくらい費用と時間がかかるんだろう?
グランピング施設の客室増設は、売上拡大の最も直接的な手段です。既存施設の稼働率が高まってきたタイミングで、追加棟の導入を検討するオーナーは少なくありません。
ただし、グランピングの増設は「宿泊構造物を買って置くだけ」では完了しません。旅館業法上の手続き、建築確認の要否、消防法令への対応など、新規開業時と同様の手続きが必要になるケースがあります。
監修者


株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
この記事では、グランピング施設の増設で必要な手続き・費用・工期を構造物のタイプ別に整理し、既存施設オーナーが押さえておくべきポイントを解説します。
グランピング施設の増設で必要な手続き
増設の規模や構造物のタイプによって、必要な手続きは異なります。まずは法的な手続きの全体像を把握しておきましょう。
旅館業法上の手続き(変更届 or 新規許可)
グランピング施設の客室を増設する場合、旅館業法上の手続きが必要です。ここで重要なのは、増設の規模によって「変更届」で済むのか「新規の許可申請」が必要なのかが分かれる点です。
ツナグ行政書士事務所の解説によると、既に許可を取得している営業施設で建築延べ面積の50%以上にわたる増改築・移転等を行う場合は、新規で許可を取得する必要があるとされています。
宮城県の公式サイトでは、施設の同一性を失わない程度の修繕・模様替え程度で、新規許可時の収容定員の5割以内の変更の場合は変更届で対応できるとされています。
| 増設の規模 | 必要な手続き |
|---|---|
| 収容定員の5割以内の変更、かつ施設の同一性を維持する程度の変更 | 変更届(保健所) |
| 建築延べ面積の50%以上にわたる増改築 | 新規の営業許可申請(保健所) |
上記はあくまで一般的な基準です。「変更届で済むのか、新規許可が必要か」の判断は自治体(保健所)によって運用が異なるケースがあります。増設を計画した段階で、管轄の保健所に事前相談を行ってください。
建築確認の要否(増設する構造物による)
増設する宿泊構造物が建築基準法上の「建築物」に該当する場合、建築確認申請が必要になります。これは新規開業時と同じ論点ですが、増設時にも同様にチェックが入ります。
グランプレスの解説によると、解体・撤去が容易なテント型の構造物は建築物に該当しないとされるケースが多い一方、コテージやキャビンのように基礎工事を伴う構造物は建築物に該当し、建築確認が必要です。また、海外製のドームテントについては自治体によって判断が分かれるとされています。
参照元:グランプレス「グランピング施設用のテントは建築基準法や旅館業法の対象?」
増設で建築確認が必要になると、申請書類の準備・審査期間・設計士への依頼費用が発生し、工期が数か月単位で延びる可能性があります。建築確認が不要な構造物を選ぶことで、増設の工期とコストを大幅に圧縮できるのは、既存施設オーナーにとって大きなメリットです。
消防法令適合通知書の再取得
宿泊棟を増設すると、消防設備の配置や避難経路が変わるため、消防法令適合通知書の再取得が必要になる場合があります。増設後の施設全体が消防法令に適合しているかどうか、管轄の消防署に事前相談を行い、必要な消防設備(消火器、自動火災報知設備、誘導灯など)を追加・調整しましょう。
増設する宿泊構造物の費用比較
増設時に選ぶ構造物のタイプによって、費用は大きく変わります。ここでは、グランピング施設の増設で選ばれることの多いドームテントとインスタントハウスについて、エビデンスのある価格情報をもとに比較します。
ドームテントで増設する場合の費用
既存施設にドームテントを追加するケースは、グランピング業界で最も一般的な増設パターンの一つです。主要メーカーの価格は以下のとおりです。
| メーカー | サイズ | 価格(税込) | 価格に含まれる範囲 |
|---|---|---|---|
| deluxs | 直径5m(面積19.6㎡) | 947,100円〜 | 外幕+フレームのみ |
| deluxs | 直径6m(面積28.2㎡) | 1,144,440円〜 | 外幕+フレームのみ |
| deluxs | 直径7m(面積38.4㎡) | 1,554,300円〜 | 外幕+フレームのみ |
| FDomes | 20㎡ | 1,792,000円〜 | 外幕・フレーム・内張・ドアなどセット |
| FDomes | 40㎡ | 2,809,000円〜 | 外幕・フレーム・内張・ドアなどセット |
参照元:deluxs公式 ドームテント一覧 / ドムハカタログ FDomes紹介ページ
ドームテントで増設する場合、本体価格に加えてウッドデッキ・空調設備・内装・家具などの費用が別途発生します。また、自治体によってはドームテントが建築物と判断される場合があり、その場合は建築確認申請の費用と審査期間も見込む必要があります。
インスタントハウスで増設する場合の費用
インスタントハウスは、法的に「工作物」として扱われるため、建築確認申請が原則不要(行政判断による)で、基礎工事不要・ペグやビスで固定する構造です。設営も数時間(約6時間)で完了するため、増設時の工期短縮に大きなアドバンテージがあります。
本体価格に標準設営費が含まれているわかりやすい価格設定になっています。
| ラインナップ | サイズ | 価格(税込) |
|---|---|---|
| シンプル | 43 | 2,244,000円 |
| シンプル | 50 | 3,080,000円 |
| シンプル | 60 | 4,356,000円 |
| ベーシック | 43 | 2,475,000円 |
| ベーシック | 50 | 3,278,000円 |
| ベーシック | 60 | 4,950,000円 |


断熱材を360°に使用した構造で外気温の影響を受けにくいため、ドームテントのように断熱ライナーを別途購入する必要がありません。増設時に「本体以外に何がかかるか」が少なく済むのは、既存施設のオーナーにとって予算管理しやすいポイントです。
増設時のコスト比較表
| 比較項目 | ドームテント(海外製) | インスタントハウス |
|---|---|---|
| 本体価格(1棟) | 約95万〜281万円(deluxs〜FDomes) | 約224万〜495万円(シンプル43〜ベーシック60) |
| 価格に含まれる範囲 | 製品により異なる(外幕+フレームのみ〜宿泊装備セット) | 本体+標準設営費 |
| 断熱対策 | 内張・断熱ライナーの追加が必要(別途費用) | 素材自体が断熱材(追加費用なし) |
| 建築確認 | 自治体により判断が分かれる | 原則不要(行政判断による) |
| 基礎工事 | ウッドデッキ等の施工が一般的 | 不要(ペグやビスで固定) |
| 設営時間 | 組み立て式(半日〜数日) | 数時間(約6時間) |
※ドームテントの価格はdeluxs公式・ドムハカタログ、インスタントハウスの価格は公式メディアに基づきます。為替レートや仕様変更により価格は変動する場合があります。
グランピング増設の工期を左右するポイント
増設を検討する既存施設オーナーにとって、「いつから新しい棟で営業を開始できるか」は売上に直結する重要な問題です。工期を左右する2つのポイントを押さえておきましょう。
構造物の選定が工期に直結する理由
宿泊構造物のタイプによって、発注から設営完了までの期間は大きく異なります。
ドームテントの場合、deluxs公式サイトによると納期はおおよそ2か月程度(入金後に製作開始)とされています。FDomesは海外からの輸入となるため、さらに時間がかかる可能性があります。到着後の組み立て作業やウッドデッキの施工、空調設備の設置を含めると、発注から営業開始まで3か月以上を見込むのが現実的でしょう。
参照元:deluxs公式 直径6mモデル
インスタントハウスの場合、設営自体は数時間(約6時間)で完了します。基礎工事も不要なため、構造物の設営だけを見れば工期は極めて短いのが特徴です。ただし、特注仕様の場合は製作期間が別途必要となります。
建築確認の有無による工期の差
増設する構造物が建築基準法上の「建築物」に該当する場合、建築確認申請の審査期間が工期に上乗せされます。一般的に審査には数週間〜数か月を要し、申請書類の準備期間も含めると、さらに時間がかかります。
一方、建築確認が不要な構造物であれば、この審査期間がまるごと不要になります。増設では「稼働率が高い今のうちに棟数を増やしたい」「繁忙期に間に合わせたい」というタイムプレッシャーがあるケースが多いため、建築確認の要否は工期に直結する重要な判断材料です。
新規開業と異なり、増設は「すでに需要がある状態」で行うものです。増設の意思決定から営業開始までの期間が長引くほど、その間の機会損失が発生します。構造物の選定・建築確認の要否・手続きの所要期間をトータルで見て、最短で営業開始できるルートを検討しましょう。
グランピング施設の増設でよくある質問
- 客室を1〜2棟増設する場合でも旅館業法の手続きは必要ですか?
-
はい、必要です。増設の規模によって「変更届」か「新規許可申請」かが変わります。宮城県の例では、収容定員の5割以内の変更で施設の同一性が維持される場合は変更届で対応できるとされています。ただし自治体により運用が異なるため、管轄の保健所に事前相談してください。
- 増設時も消防法令適合通知書は必要になりますか?
-
宿泊棟の増設により消防設備の配置や避難経路が変わる場合は、消防法令適合通知書の再取得が必要になる可能性があります。増設の規模や構造物の配置によって対応が異なるため、計画段階で管轄の消防署に相談しましょう。
- 既存施設にドームテント以外の構造物を追加しても問題ありませんか?
-
問題ありません。既存のドームテント施設にインスタントハウスやコテージなど異なるタイプの構造物を追加することは可能です。実際に、複数タイプの客室を展開してゲストの選択肢を広げている施設もあります。ただし、追加する構造物が旅館業法の構造設備基準を満たしている必要があります。
- 増設にかかる期間はどのくらいですか?
-
構造物のタイプと建築確認の要否によって大きく異なります。ドームテントの場合、deluxs公式では納期約2か月とされており、施工やウッドデッキ設置を含めると3か月以上が目安です。インスタントハウスは設営自体が数時間(約6時間)で完了しますが、特注仕様の場合は製作期間が別途必要です。いずれの場合も、行政手続きの所要期間が別途加算されます。
- 増設で建築確認申請が不要な構造物はありますか?
-
法的に「工作物」として扱われる構造物であれば、建築確認申請が原則不要です(行政判断による)。インスタントハウスは、基礎工事不要・ペグやビスで固定する構造のため、建築確認が原則不要とされています。ただし最終判断は自治体によるため、計画地を管轄する土木事務所に確認してください。
まとめ
- 増設の規模によって、旅館業法上の手続きは「変更届」か「新規許可申請」に分かれる。管轄の保健所への事前相談が必須
- 増設する構造物が建築物に該当する場合、建築確認申請の費用と審査期間が上乗せされる
- 建築確認が原則不要な構造物(インスタントハウスなど)を選ぶと、手続き・工期・コストの面で増設のハードルを下げられる
- 増設は「すでに需要がある状態」で行うもの。意思決定から営業開始までのスピードが売上機会に直結する
- 消防法令適合通知書の再取得も忘れずに。保健所・土木事務所・消防署への事前相談をセットで進めよう
グランピング施設の増設は、稼働率が高まっている施設にとって最も効果的な収益拡大策です。ただし、手続き・費用・工期のバランスは、増設する構造物のタイプによって大きく変わります。
特に工期を短縮したい場合は、建築確認が原則不要で設営が数時間で完了する構造物を検討する価値があります。複数の選択肢を比較した上で、自施設の状況に最適な増設プランを組み立ててください。












