グランピングで建築確認が不要な宿泊棟とは?テント・工作物の判定基準とタイプ別比較

グランピング施設の宿泊棟を検討するとき、「建築確認申請が必要かどうか」は導入コストとスケジュールを大きく左右する分かれ道です。建築確認が必要になれば、設計・申請・審査で数か月の時間と数十万円単位の費用が追加で発生します。逆に建築確認が不要な宿泊棟を選べば、その負担を回避できる可能性があります。

監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)

この記事では、そもそもグランピングの宿泊棟が「建築物」と判定される基準を整理したうえで、建築確認が不要になりやすい宿泊棟タイプを比較します。許可・届出の手続き全般ではなく、「建築確認が不要かどうか」という観点に絞って、宿泊棟選びの判断材料を提供します。
目次

グランピングの宿泊棟と建築確認の関係

グランピングの宿泊棟が建築確認申請の対象になるかどうかは、その構造物が建築基準法上の「建築物」に該当するかで決まります。建築物に該当すれば建築確認申請が必要になり、該当しなければ不要になるのが基本的な考え方です。

ツナグ行政書士事務所の解説でも、解体して移設できるテントを客室とするグランピング施設では建築確認を不要とするケースも多い一方、構造によっては建築物とみなされるケースもあるため、所轄の土木事務所等との事前協議で確認すべきとされています。同じ「テント」でも構造次第で判定が変わるため、タイプごとの特性を理解しておくことが重要です。

参照元:ツナグ行政書士事務所「グランピング施設開業ガイド」

なお、建築確認はあくまで建築基準法上の手続きです。旅館業法の許可や消防法の届出など、建築確認とは別に必要になる手続きもあります。本記事は建築確認の要否に焦点を当てて解説しますので、許可・届出の全体像については手続き全般を扱った記事も合わせて確認してください。

宿泊棟が「建築物」と判定される基準

建築確認が必要かどうかを判断するには、まず「建築物」の定義を理解する必要があります。全国グランピング協会やグランプレスの解説で引用されている建築基準法第2条第1号では、建築物を次のように定義しています。

「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」。この定義を宿泊棟に当てはめると、判定のポイントは大きく3つに整理できます。

参照元:一般社団法人全国グランピング協会「グランピング開発における建築基準法(建築確認)」 / グランプレス「グランピング施設用のテントは建築基準法や旅館業法の対象?」

判定ポイント1.土地に定着しているか

最初のポイントが「土地に定着する工作物」に該当するかです。グランプレスの解説では、撤収を前提として地面に固定せず、ウッドデッキなどにペグやボルトで固定してあるだけのテントは「土地に定着する工作物」ではないと考えられることが多いとされています。

ただし注意したいのは、基礎の有無だけで判断されるわけではない点です。基礎がなくても、恒久的に同じ場所へ設置され続ける実態があれば「定着」と判断される場合があります。「簡単に取り外せる」「解体・移設できる」という実態が判定に影響します。

参照元:グランプレス「グランピング施設用のテントは建築基準法や旅館業法の対象?」

判定ポイント2.屋根が容易に取り外せるか

2つ目のポイントが屋根の構造です。グランプレスの解説によると、建築基準法には「屋根があるものは建築物だが、上部の材料が容易に取り外し自由である場合は建築物ではない」という考え方があるとされています。骨組みに布や膜をかぶせただけで取り外しができるテント構造は、この観点から建築物に該当しないと判断される場合が多いとされています。

逆に、屋根が外れない構造や、しっかりと地面に固定されて半永久的に設置できるものは、建築物の扱いになり建築基準法の対象になります。

参照元:グランプレス「グランピング施設用のテントは建築基準法や旅館業法の対象?」

判定ポイント3.軽微なテント工作物かどうか

3つ目のポイントが規模・利用形態です。建築物として取り扱う膜構造の範囲については、軽微なテント工作物以外は、規模・利用形態・開放形式を問わず建築物として取り扱うという考え方があります。日除け用テントや設営が簡単な寝泊まり用のテントは建築物に該当しないことが明らかとされる一方、規模が大きく恒常的に運営される宿泊棟は建築物と判断されやすくなります。

判定は最終的に自治体が行う

ここで挙げた3つのポイントはあくまで一般的な判断の目安です。「簡単に取り外せる」「解体できる」などの基準は自治体によって異なり、最終的な判定は管轄の土木事務所・建築指導課が行います。全国グランピング協会も、一部のエリアでは建築物の判定を受ける可能性が高い地域があると指摘しています。宿泊棟のタイプを決める前に、必ず管轄の土木事務所へ事前協議を行ってください。

参照元:一般社団法人全国グランピング協会「グランピング開発における建築基準法(建築確認)」

建築確認の要否で見る宿泊棟タイプ比較

建築物判定の3つのポイントを踏まえ、グランピングで使われる主要な宿泊棟タイプを「建築確認が必要になりやすいか・なりにくいか」の観点で整理します。

スクロールできます
宿泊棟タイプ建築確認の要否判定のポイント
コットンテント・ベルテント不要になりやすい骨組みに布をかぶせた構造で取り外し・撤収が容易
ドームテント構造・自治体により分かれる固定方法や常設性によって判定が変わる。事前協議が重要
工作物扱いの構築物(インスタントハウス等)原則不要(行政判断による)工作物として扱われ、ペグやビスで固定
トレーラーハウス不要になりやすい車両扱い。随時かつ任意に移動できる状態の維持が条件
コンテナハウス必要になりやすい建築物として扱われるのが一般的
木造コテージ・キャビン必要土地に定着し屋根・柱・壁を備えた建築物

コットンテント・ベルテント

コットン生地のテント(ベルテントなど)は、骨組みに布をかぶせただけの構造で撤収が容易なため、建築物に該当しないと判断されることが多いタイプです。全国グランピング協会でも、夏季などのハイシーズンに設営されるコットン生地のテントは建築物に該当しない判断が行われていると説明されています。導入コストが低く参入しやすい反面、断熱性や耐候性に課題があり、通年営業や悪天候時の対応には工夫が必要です。

参照元:一般社団法人全国グランピング協会「グランピング開発における建築基準法(建築確認)」

ドームテント

ドームテントは、建築確認の判定が最も分かれやすいタイプです。全国グランピング協会も、テントの中で土木事務所への説明が特に重要になるのがドームテントだと指摘しています。固定方法や常設性、規模によって建築物と判定される場合があり、エリアによっては建築物の判定を受ける可能性が高い地域もあるとされています。ドームテントを検討する場合は、設置予定地の土木事務所との事前協議が欠かせません。

参照元:一般社団法人全国グランピング協会「グランピング開発における建築基準法(建築確認)」

工作物扱いの構築物(インスタントハウスなど)

工作物として扱われる構築物は、建築確認申請が原則不要になりやすいタイプです。たとえばインスタントハウスは、LIFULLと名古屋工業大学大学院の共同研究から生まれたドーム型の構築物で、法的に「工作物」として扱われるため建築確認申請が原則不要とされています(行政判断による)。基礎工事不要でペグやビスで固定し、設営は数時間(約6時間)で完了します。

断熱材を360°に使用しているため外気温の影響を受けにくく、コットンテントの弱点だった断熱性・通年運用の課題をカバーできる点も特徴です。建築確認の負担を抑えつつ、宿泊棟としての快適性も確保したい場合の選択肢になります。

トレーラーハウス・コンテナハウス・木造コテージ

トレーラーハウスは「車両」として扱われるため建築確認が不要になりやすいですが、随時かつ任意に移動できる状態を維持する必要があり、固定方法によっては建築物と判断されるリスクがあります。一方、コンテナハウスや木造コテージは、土地に定着し屋根・柱・壁を備えた建築物として扱われるのが一般的で、建築確認申請が必要になります。居住性は高い反面、手続きの負担と工期・コストが大きくなる点を踏まえて検討してください。

建築確認不要の宿泊棟を選ぶときの注意点

建築確認が不要な宿泊棟を選ぶ場合でも、いくつか押さえておくべき注意点があります。「建築確認が不要=何の手続きもいらない」ではない点に気をつけてください。

  • 建築確認が不要でも、旅館業法の許可や消防法の届出は別途必要になる
  • 判定基準は自治体によって異なるため、設置前に必ず管轄の土木事務所へ事前協議を行う
  • 当初は建築物に該当しないと判断されても、年に1度のテント撤去を求められるなど運用上の条件が付くことがある
  • 固定方法や常設性を後から変えると、建築物と再判定される可能性がある

全国グランピング協会も、年に1度はテントを解体撤去することを求められたり、土木事務所での協議内容の報告を求められたりするケースが出てきていると指摘しています。建築確認の要否だけでなく、運用フェーズで生じる条件まで含めて、事前協議で確認しておくことが大切です。

参照元:一般社団法人全国グランピング協会「グランピング開発における建築基準法(建築確認)」

建築確認とグランピング宿泊棟に関するよくある質問

グランピングのテントは建築確認が必要ですか?

テントの構造によって変わります。骨組みに布や膜をかぶせただけで取り外し・撤収が容易なテントは、建築物に該当せず建築確認が不要と判断されることが多いです。一方、固定して常設するものや屋根が外れない構造のものは建築物として扱われ、建築確認が必要になります。最終判定は自治体が行うため、事前協議で確認してください。

建築確認が不要なら基礎工事もいらないのですか?

建築確認が不要なタイプの多くは基礎工事を伴いませんが、両者は別の概念です。「土地に定着する」かどうかの判断に基礎の有無は直接関係せず、基礎がなくても恒久的に設置される実態があれば建築物と判断される場合があります。基礎工事の要否は宿泊棟のタイプごとに確認してください。

工作物扱いの構築物とテントは何が違いますか?

どちらも建築確認が不要になりやすい点は共通しますが、断熱性や快適性に違いがあります。一般的なテントは布や膜の構造で断熱性に課題があるのに対し、インスタントハウスのような工作物扱いの構築物は断熱材を使用しており、通年運用にも対応しやすいのが特徴です。法的な扱いも「テント」と「工作物」で異なります。

建築確認が不要なら旅館業の許可もいらないのですか?

いいえ、別の手続きです。建築確認は建築基準法上の手続きで、宿泊料を取って人を泊める場合は旅館業法の許可(または住宅宿泊事業法の届出)が別途必要になります。消防法に基づく設備や届出も求められます。建築確認が不要でも、これらの手続きは必要になる点に注意してください。

建築確認の判定は全国共通ですか?

判定基準の根拠となる建築基準法は全国共通ですが、「簡単に取り外せる」「解体できる」といった具体的な判断は自治体によって運用が異なります。エリアによっては建築物の判定を受けやすい地域もあるため、設置予定地を管轄する土木事務所・建築指導課への事前協議が不可欠です。

まとめ

この記事のポイント
  • 宿泊棟が「建築物」に該当すると建築確認申請が必要になる
  • 判定のポイントは「土地に定着しているか」「屋根が容易に取り外せるか」「軽微なテント工作物か」の3つ
  • コットンテントや工作物扱いの構築物は建築確認が不要になりやすく、コンテナ・木造コテージは必要になりやすい
  • ドームテントは構造・自治体により判定が分かれるため事前協議が特に重要
  • 建築確認が不要でも、旅館業法の許可や消防法の届出は別途必要

グランピングの宿泊棟選びでは、建築確認の要否がコストとスケジュールを大きく左右します。建築確認を避けたい場合の選択肢になるのが、コットンテントや工作物として扱われる構築物です。なかでも断熱性や通年運用まで重視するなら、工作物扱いで建築確認が原則不要なインスタントハウスのような構築物も検討に値します。

ただし建築確認の判定は最終的に自治体が行い、運用上の条件が付く場合もあります。宿泊棟のタイプを決める前に、必ず管轄の土木事務所へ事前協議を行い、あわせて旅館業法や消防法の手続きも確認しておきましょう。

監修者

山中典(やまなか つかさ)

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO/名古屋工業大学共同研究員。インスタントハウスの開発・事業を軸に、災害支援から多様な空間活用まで幅広く展開している。

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