グランピング宿泊棟に3Dプリンター住宅・タイニーハウスはアリ?費用・工期・法的扱いを比較

グランピング施設の宿泊棟といえばドームテントやコテージが定番でしたが、近年は3Dプリンター住宅やタイニーハウスといった新しい建築トレンドも選択肢に加わってきました。「他にはない宿泊棟で差別化したい」「最新の建築技術を取り入れたい」と考える事業者にとって、これらは気になる存在です。

監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)

この記事では、3Dプリンター住宅とタイニーハウスをグランピングの宿泊棟として見たときの特徴を、コスト・工期・法的扱いの観点から整理します。あわせて、工作物として扱われるインスタントハウスとの違いも比較し、新しい建築トレンドを宿泊棟に採用する際の判断材料を提供します。
目次

グランピング宿泊棟の新しい選択肢が広がっている

グランピングの宿泊棟は、自然に溶け込むテントが主流でしたが、ドームテントやトレーラーハウス、ツリーハウスなど、施設ごとの個性を打ち出す形へと多様化してきました。グランプレスの解説でも、こうした多様化の流れの中で2022年頃から3Dプリンターを使った宿泊棟が注目を集めていると紹介されています。

参照元:グランプレス「グランピングで3Dプリンターハウスを体験!」

新しい建築トレンドは話題性があり、SNSでの拡散や集客の起点になりやすい強みがあります。一方で、コストや法的な扱い、導入のしやすさには大きな差があります。話題性だけで選ぶのではなく、事業として成立するかを冷静に見極めることが大切です。

3Dプリンター住宅をグランピング宿泊棟にする

3Dプリンター住宅は、専用の3Dプリンターで壁などを造形して建てる住宅です。工期の短さと低コストが大きな特徴で、グランピングの宿泊棟としても実例が出てきています。

グランピング用途から実用化が進んだ経緯

日本では建築に関する法規制が厳しいため、3Dプリンター住宅は当初、グランピング施設やガレージなど住居以外の用途での活用が中心でした。すみかうるの解説によると、2023年にセレンディクス社が一般住宅仕様の「serendix50」を販売し、居住用としての実用化が前進したとされています。実際に2022年夏には北海道新冠町で、3Dプリンター建築に宿泊できるグランピング施設がオープンしています。

参照元:すみかうる「3Dプリンター住宅の最前線を解説!」 / グランプレス「グランピングで3Dプリンターハウスを体験!」

コスト・工期・法的扱い

セレンディクス社の「serendix50」は、水回り設備を完備した50平米の住宅で、価格は550万円とされています。施工時間は44時間台という短さで、建築基準法に適合した壁式鉄筋コンクリート造として検査済証も発行されています。つまり建築基準法上の「建築物」として扱われ、建築確認の手続きを経て建てられる点が特徴です。

参照元:ダイヤモンド不動産研究所「3Dプリンター住宅が2025年から550万円で本格販売フェーズに!」

3Dプリンター住宅の押さえどころ
  • 造形そのものは短時間だが、基礎工事や設備工事、建築確認の手続きは別途必要
  • 鉄筋コンクリート造で堅牢性が高く、話題性・デザイン性で集客の起点になりやすい
  • 建築物として扱われるため、設置場所の用途地域や建築規制の確認が必要

タイニーハウスをグランピング宿泊棟にする

タイニーハウスは、明確な定義はないものの、一般的に10〜25平米程度の小さな建物を指します。コンパクトながら居住性を備え、グランピングやセカンドハウスなど多様な用途で活用されています。

タイニーハウスの種類と法的扱い

LIBERA CABINの解説によると、タイニーハウスは基礎付きのスモールハウス・マイクロハウス、車で牽引できるトレーラーハウス、車を改造したキャンパーなど、種類によって特徴が異なります。グランピングの宿泊棟として考える場合、特に重要なのが法的な扱いの違いです。

  • 基礎付きの定置型(スモールハウス)は、土地に定着する建築物として建築確認の対象になりやすい
  • トレーラー型は、随時かつ任意に移動できる状態を保てば車両として扱われ、建築確認が不要になりやすい

参照元:LIBERA CABIN「タイニーハウスの価格相場と種類を解説」

コストの目安

アットホームの解説では、小型のプレハブ住宅や移動型のトレーラーハウスでは本体価格300万円から800万円台が主流とされています。SUUMOが紹介する市販品には、トレーラー上に約8畳の居住空間を据えキッチン・シャワー・トイレを標準装備したモデルで税込770万円からといった例もあります。中古であれば数十万円から、ハイエンドモデルでは1,000万円クラスまで、価格帯はかなり幅広いのが実情です。

参照元:アットホーム「タイニーハウスとは?」 / SUUMO「タイニーハウスとは?」

タイニーハウスの押さえどころ
  • 定置型かトレーラー型かで建築確認の要否が変わるため、導入前に種類と法的扱いを確認する
  • 水回りを完備したモデルは居住性が高い反面、価格も上がる
  • 木造の小屋型は趣を出しやすく、自然に溶け込むグランピングの世界観と相性がよい

3Dプリンター住宅・タイニーハウス・工作物の比較

新しい建築トレンドである3Dプリンター住宅・タイニーハウスと、工作物として扱われるインスタントハウスを並べて比較します。それぞれ強みが異なるため、施設のコンセプトと予算に合わせて選ぶことが大切です。

スクロールできます
比較項目3Dプリンター住宅タイニーハウスインスタントハウス
価格の目安550万円程度~(serendix50の例)本体300~800万円台が主流約224万円~(税込・設営費込み)
法的扱い建築物(鉄筋コンクリート造の例)定置型は建築物/トレーラー型は車両工作物
建築確認必要種類による原則不要(行政判断による)
基礎工事必要定置型は必要不要(ペグ・ビス固定)
設置・施工造形は短時間だが付帯工事は別途製作・搬入に期間を要する数時間(約6時間)
話題性高い(最新技術)高い(ミニマル志向)高い(ドーム型の独自構造)

※価格・仕様は各製品・各社の一例であり、モデルや時期によって変わります。導入前に各メーカーへ最新の情報を確認してください。

手続きの軽さ・短工期を重視するなら工作物という選択肢

3Dプリンター住宅は堅牢性と話題性、タイニーハウスはミニマルな世界観という強みがあります。一方で、建築確認の手続きや基礎工事の負担を抑えたい場合は、工作物として扱われる構築物が選択肢になります。

インスタントハウスは、LIFULLと名古屋工業大学大学院の共同研究から生まれたドーム型の構築物で、法的に「工作物」として扱われるため建築確認申請が原則不要とされています(行政判断による)。基礎工事不要でペグやビスで固定し、設営は数時間(約6時間)で完了します。断熱材を360°に使用しているため外気温の影響を受けにくく、通年での運用にも対応しやすい点が特徴です。

本体価格に設営費が含まれているわかりやすい価格設定で、サイズを調整することも可能です。特注仕様の場合は製作期間が別途必要となります。動産として扱われるのが一般的なため、撤去や移設の柔軟性も確保できる点も見逃せません。新しい建築トレンドの話題性と、導入のしやすさを両立したい場合の有力な選択肢になります。

新しい建築トレンドとグランピングに関するよくある質問

3Dプリンター住宅はグランピングに使えますか?

使えます。実際に北海道新冠町で3Dプリンター建築に宿泊できるグランピング施設がオープンしており、日本では当初グランピングなど住居以外の用途から実用化が進みました。建築基準法に適合した鉄筋コンクリート造の住宅として検査済証が発行される例もあり、建築物として建築確認の手続きを経て建てられます。

3Dプリンター住宅は本当に短期間で建てられますか?

造形そのものは短時間です。セレンディクス社の「serendix50」は施工時間44時間台とされています。ただし、これは造形にかかる時間が中心で、基礎工事や設備工事、建築確認の手続きには別途時間が必要です。全体のスケジュールは造形時間だけで判断しないようにしましょう。

タイニーハウスは建築確認が必要ですか?

種類によって変わります。基礎付きの定置型(スモールハウス)は、土地に定着する建築物として建築確認の対象になりやすい一方、トレーラー型は随時かつ任意に移動できる状態を保てば車両として扱われ、建築確認が不要になりやすいです。導入前に種類と法的扱いを確認してください。

タイニーハウスの宿泊棟はいくらくらいですか?

小型のプレハブ住宅や移動型のトレーラーハウスでは本体価格300万円から800万円台が主流とされています。水回りを完備したトレーラー型のモデルには税込770万円からといった例も見られます。中古なら数十万円から、ハイエンドモデルでは1,000万円クラスまで、価格帯はかなり幅広いのが実情です。

話題性のある宿泊棟で手続きの負担も抑えたい場合は?

工作物として扱われる構築物が選択肢になります。インスタントハウスはドーム型の独自構造で話題性があり、工作物扱いで建築確認が原則不要(行政判断による)、基礎工事も不要で設営は数時間(約6時間)です。話題性と導入のしやすさを両立したい場合に向いています。ただし最終的な法的判定は自治体が行うため、事前協議は必要です。

まとめ

この記事のポイント
  • 3Dプリンター住宅・タイニーハウスは話題性のある新しいグランピング宿泊棟の選択肢
  • 3Dプリンター住宅は造形が短時間で堅牢だが、建築物として建築確認や基礎・設備工事が必要
  • タイニーハウスは定置型かトレーラー型かで建築確認の要否が変わる
  • 手続きの軽さや短工期を重視するなら、工作物扱いのインスタントハウスも選択肢になる
  • いずれも法的扱いは構造や設置方法で変わるため、導入前に自治体への事前協議が不可欠

3Dプリンター住宅やタイニーハウスは、グランピング施設に話題性と新しさをもたらす建築トレンドです。それぞれ堅牢性やミニマルな世界観といった魅力がある一方、法的な扱いやコスト、導入のしやすさには差があります。

話題性と導入のしやすさを両立したい場合は、工作物として扱われるインスタントハウスのような構築物も比較検討に値します。どの選択肢でも、構造や設置方法によって法的扱いが変わるため、宿泊棟のタイプを決める前に必ず管轄の自治体へ事前協議を行いましょう。

監修者

山中典(やまなか つかさ)

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO/名古屋工業大学共同研究員。インスタントハウスの開発・事業を軸に、災害支援から多様な空間活用まで幅広く展開している。

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