「週末はいつも満室で予約を断っている」「人気が出てきたから客室を増やしたいが、コストと時間が心配」。グランピング施設を運営していると、こうした増設の悩みに直面することがあります。客室を増やせば売上を伸ばせるとわかっていても、1棟あたり数百万円から1,000万円規模の投資や、数か月の工期を考えると、なかなか踏み切れないものです。
監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)
この記事では、グランピングの客室をコストを抑えてスピーディに増設する方法を解説します。増設が新規開業より有利な理由から、宿泊棟タイプごとのコスト・工期の違い、増設時に見落としがちな注意点まで、既存施設のオーナーが次の一手を判断するための材料を提供します。
客室の増設は新規開業よりも有利
既存のグランピング施設に客室を増設するのは、ゼロから新規開業するよりも効率的です。すでに整っている経営資源を活かせるため、1棟あたりの投資対効果を高めやすいからです。
ホテル・旅館利益向上プロジェクトの解説でも、グランピングは管理棟やBBQができるテラス、炊事棟などがあれば運営でき、ロビーや廊下のような共用スペースが少ないことが費用を抑えやすい理由の一つだと指摘されています。増設の場合、これらの共用設備はすでに整っているため、追加するのは客室棟とその周辺整備が中心になります。
参照元:ホテル・旅館利益向上プロジェクト「グランピングの経営の始め方」
増設が新規開業より有利になる主な理由を整理すると、次のとおりです。
- 管理棟・炊事棟・トイレなどの共用設備が既にあり、客室棟への投資に集中できる
- 電気・水道などのインフラが引き込み済みで、引き込み工事のコストを抑えられる
- すでに集客チャネルと運営ノウハウがあり、増設した客室をすぐ稼働させやすい
- 稼働実績のデータがあるため、増設後の収益を予測しやすく投資判断がしやすい
つまり「増設で抑えられるコスト」と「スピーディに稼働させる仕組み」を理解すれば、リスクを抑えながら売上を伸ばすことが可能になります。
宿泊棟タイプ別のコストと工期
客室を増設するときに最も重要なのが、どの宿泊棟タイプを選ぶかです。タイプによって、1棟あたりのコストも工期も大きく変わります。
ドームテントのコスト感
Dot Homesの解説では、直径6mのドームテントの場合、1棟の購入費用は約100万円とされています。ただし購入だけでなく建設や内装の費用も加味すると、合計800万円から1,000万円ほどかかることもあるようです。ダイナテックの解説でも、ドームテントの平均価格は1棟につき200万円前後で、冷暖房などの設備がないものなら数十万円から購入できる製品もあると紹介されています。
つまりテント本体の価格と、ウッドデッキ・基礎・インフラ・内装まで含めた総額には大きな開きがあります。増設の場合はインフラが一部流用できるため、新規開業時よりも総額を抑えやすくなります。
参照元:Dot Homes「グランピング開業の初期費用とは?」 / ダイナテック「グランピング経営は儲かる?」
タイプ別の比較
増設で選ばれることの多い宿泊棟タイプを、コスト・工期・建築確認の観点で整理します。
| 宿泊棟タイプ | 1棟あたりの費用感 | 工期の目安 | 建築確認 |
|---|---|---|---|
| コットンテント・ベルテント | 低い | 短い | 不要になりやすい |
| ドームテント | 本体100~200万円前後+付帯工事 | 数日~ | 構造・自治体による |
| 工作物扱いの構築物(インスタントハウス等) | 約224万円~(税込・設営費込み) | 数時間(約6時間) | 原則不要(行政判断による) |
| トレーラーハウス | 本体300~800万円台が主流 | 製作・搬入に期間を要する | 車両扱いで不要になりやすい |
| コンテナハウス・木造コテージ | 数百万~1,000万円超 | 数か月 | 必要になりやすい |
※費用・工期は各製品・各社の一例であり、仕様や設置条件によって変わります。導入前に各メーカーへ最新の情報を確認してください。
「コストを抑えてスピーディに」という観点では、建築確認が原則不要で工期が短いタイプが有利になります。一方、居住性や高単価を狙うならコンテナハウスや木造コテージという選択肢もあり、施設のコンセプトと予算に応じた使い分けが大切です。
コストを抑えてスピーディに増設する3つのポイント
客室増設のコストとスピードは、宿泊棟タイプの選び方と工夫次第で大きく変わります。低コスト・短工期を実現するための3つのポイントを解説します。
ポイント1.建築確認が不要なタイプを選ぶ
建築確認申請が必要になると、設計・申請・審査で数か月の時間と数十万円単位の費用が追加で発生します。建築確認が原則不要なタイプ(コットンテント、工作物として扱われる構築物など)を選べば、この負担を抑えられます。増設をスピーディに進めたいなら、まず建築確認の要否で候補を絞り込むのが効率的です。
ポイント2.基礎工事が不要なタイプを選ぶ
基礎工事は、コストと工期の両方に影響する要素です。基礎を打つと、その分の費用と養生期間が必要になり、撤去時にも解体費用が発生してしまいます。基礎工事が不要でペグやビスで固定するタイプなら、設置がスピーディで、将来のレイアウト変更にも柔軟に対応できます。
ポイント3.既存インフラを活かせる配置にする
増設の最大のメリットは、既存のインフラを活かせることです。電気・水道の引き込み口に近い場所に増設すれば、配線・配管の延長コストを最小限に抑えられます。管理棟やトイレ・炊事棟からの動線も考慮して配置すれば、追加の共用設備を作らずに済み、コストとスペースの両方を節約できます。
- 増設する宿泊棟は建築確認が必要か(管轄の土木事務所へ事前協議)
- 既存のインフラ容量(電気・水道)に増設分の余裕があるか
- 旅館業法の許可内容の変更や、消防設備の追加が必要か
- 客室間のプライバシーを保てる距離・配置になっているか
なお、客室を増設すると旅館業法の許可内容の変更届や、消防法に基づく設備の追加が必要になる場合があります。建築確認が不要なタイプを選んでも、これらの手続きは別途確認が必要です。増設の計画段階で、管轄の保健所・消防署にも相談しておきましょう。
スピーディな増設に向く工作物という選択肢
「建築確認が原則不要」「基礎工事が不要」「短工期」という3つのポイントをすべて満たす選択肢として、工作物として扱われる構築物があります。なかでもインスタントハウスは、客室の増設に向いた特性を備えています。
インスタントハウスは、2011年の東日本大震災での被災地支援をきっかけにした名古屋工業大学大学院の北川啓介教授の研究をもとに、LIFULLと名古屋工業大学大学院による共同研究にて開発した新しい構築物です。法的に「工作物」として扱われ、グランピングの客室増設をスピーディに進めやすい点が特徴です。

増設にうれしい4つの特性
- 建築確認申請が原則不要(行政判断による)……申請・審査の待ち時間がなく、増設の意思決定から稼働までを短縮できる
- 基礎工事不要・ペグやビスで固定……既存施設の空きスペースに設置しやすく、造成コストを抑えられる
- 設営は数時間(約6時間)……繁忙期前に短期間で増設でき、次のハイシーズンに間に合わせやすい
- 断熱材を360°に使用……外気温の影響を受けにくく、増設棟を通年で稼働させやすい
本体価格に設営費が含まれているわかりやすい価格設定です。サイズを調整することも可能なため、客室棟だけでなく、増設にあわせてラウンジや受付棟を追加する用途にも使えるのが強みです。特注仕様の場合は製作期間が別途必要となります。
動産として扱われるのが一般的なため、増設後にレイアウトを変えたくなった場合の移設や、繁忙期だけの一時増設といった柔軟な運用にも対応しやすい点もメリットです。「まずは2〜3棟だけ増やして反応を見たい」という段階的な増設とも相性がよい選択肢です。
断熱材の発泡ウレタンを用いた独自の構造により、高い断熱性能と熱循環効率を実現した新しいサウナであるインスタントサウナは、100V電源で運用可能な電気サウナストーブを採用しており電気工事が不要です。客室の増設にあわせてサウナを併設すれば、客単価アップと差別化を同時に図れます。

グランピングの客室増設に関するよくある質問
- 客室を1棟増設するのにいくらかかりますか?
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宿泊棟タイプによって変わります。ドームテントは本体100~200万円前後ですが、ウッドデッキや内装を含めると総額はさらに上がる点に注意が必要です。工作物として扱われる構築物には、設営費込みで約224万円からの価格設定のものもあります。増設の場合は既存インフラを活かせるため、新規開業時よりも総額を抑えやすいのが一般的です。
- できるだけ早く客室を増やすにはどうすればいいですか?
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建築確認が原則不要で、基礎工事も不要なタイプを選ぶのが近道です。建築確認の申請・審査や基礎の養生期間がない分、設置までの時間を大幅に短縮できます。工作物として扱われる構築物のなかには、設営が数時間で完了するものもあり、繁忙期前の増設にも対応しやすくなります。
- 客室を増設するとき、建築確認は必要ですか?
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増設する宿泊棟が建築基準法上の「建築物」に該当するかで決まります。コットンテントや工作物として扱われる構築物は建築確認が不要になりやすく、コンテナハウスや木造コテージは必要になりやすいです。判定は自治体によって異なるため、増設前に管轄の土木事務所へ事前協議を行ってください。
- 増設のときに必要な手続きはありますか?
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建築確認の要否とは別に、旅館業法の許可内容の変更届や、消防法に基づく設備の追加が必要になる場合があります。客室数が増えることで求められる消防設備が変わることもあるため、計画段階で管轄の保健所・消防署に相談しておくと安心です。
- 少しずつ客室を増やすことはできますか?
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可能です。基礎工事が不要で動産として扱われる構築物なら、まず2~3棟だけ増設して反応を見てから、追加で増やすという段階的なアプローチが取りやすくなります。需要を確認しながら投資を進められるため、リスクを抑えた増設につながります。
まとめ
- 増設は共用設備やインフラを活かせるため、新規開業より投資対効果が高い
- 宿泊棟タイプによって1棟あたりのコストと工期が大きく変わる
- 低コスト・短工期のカギは「建築確認不要」「基礎工事不要」「既存インフラ活用」の3点
- 工作物として扱われるインスタントハウスは、建築確認原則不要・基礎工事不要・設営約6時間で増設に向く
- 建築確認が不要でも、旅館業法の変更届や消防設備の追加など別の手続きは要確認
グランピングの客室増設は、共用設備やインフラ、集客チャネルがすでに整っている分、新規開業よりも有利に進められます。コストとスピードを重視するなら、建築確認や基礎工事が不要な宿泊棟タイプを選び、既存インフラを活かせる配置にするのがポイントです。
なかでも工作物として扱われるインスタントハウスは、建築確認が原則不要で基礎工事も不要、設営も数時間で完了するため、繁忙期に間に合わせたい増設や、段階的に客室を増やしたい場合の選択肢になります。まずは管轄の自治体への事前協議から始め、自施設に合った増設プランを描いてみてください。




