グランピングの建築費を安く抑えるには?低コスト開業の費用内訳と構造物の選び方

グランピング施設を開業したいけど、建築費ってどのくらいかかるの?できるだけ低コストで始めたいんだけど…

グランピング施設の開業を検討する際、最も気になるのが建築費をはじめとする初期費用です。ホテルや旅館と比べて低コストで開業できるとされるグランピングですが、「実際にいくらかかるのか」は宿泊構造物の選び方によって大きく変わります。

特に見落としがちなのが、建築確認申請の有無によるコスト差です。宿泊構造物が建築物に該当する場合は、設計費や申請費用が追加で発生し、工期も延びます。逆に、建築確認が不要な構造を選べば、その分のコストと時間を丸ごと節約できます。

監修者

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO
名古屋工業大学 共同研究員
山中典(やまなか つかさ)

この記事では、グランピング開業の建築費を「初期費用の全体像」から整理し、宿泊構造物のタイプ別コスト比較、建築確認の有無によるコスト差、そして安さだけで選ぶリスクまで、低コスト開業を目指す事業者向けに解説します。

初期費用の主な内訳

グランピング施設の開業に必要な初期費用について、複数の業界メディアが目安を公開しています。

スクロールできます
情報元初期費用の目安
Dot Homes最低4,000万円(規模により1億円以上の事例も)
ダイナテック2,000〜5,000万円

参照元:Dot Homes「グランピング開業の初期費用とは?」 / ダイナテック「グランピング経営は儲かる?」

初期費用の主な内訳は以下のとおりです。

  • 土地代(購入または賃借)
  • 宿泊棟の購入・建設費
  • 管理棟の建設・改修費
  • インフラ整備(上下水道・電気引き込み・浄化槽)
  • ウッドデッキ・造成工事
  • 家具・家電・アメニティなどの内装費
  • 設計費・建築確認申請費(該当する場合)
  • 許認可取得の費用(行政書士への依頼費用など)

グランペディアによると、グランピング施設の開業コストで最も大きくなるのは管理棟の整備費用です。管理棟を新築すると大きな投資になるため、「管理棟として活用可能な建物が付帯している土地物件を選択したい」と述べています。

参照元:グランペディア「グランピング事業の開業準備と事業計画立案のポイント」

宿泊棟の費用が初期投資を左右する

管理棟の次に大きなウエイトを占めるのが、宿泊棟の費用です。ホテル・旅館利益向上プロジェクトは「グランピングの建物は一棟1,000万円前後だが、ホテルの場合は1棟建設するために数千万円〜数億円かかる」と比較しており、グランピングの初期投資の優位性はこの宿泊棟コストの低さにあるとしています。

参照元:ホテル・旅館利益向上プロジェクト「グランピングの経営の始め方」

ただし、同じグランピングでも宿泊構造物のタイプによって費用は大きく異なります。コテージなら1棟1,000万円以上、ドームテントなら100万〜350万円、インスタントハウスなら約224万円〜と、選択肢によって数倍の差が生まれます。「何を選ぶか」が初期投資の総額を決めるといっても過言ではありません。

初期投資は予測年商の2倍以内が理想

ダイナテックは「初期投資をしすぎると投資額を回収するまで時間がかかる」として、初期投資は予測年商の2倍までに抑えることが理想的だと述べています。宿泊構造物の選択は、投資回収期間に直結する重要な判断です。

目次

宿泊構造物のタイプ別コスト比較

グランピング施設で採用される宿泊構造物は、大きくコテージ・ドームテント・インスタントハウスの3タイプに分けられます。それぞれの費用感をエビデンスに基づいて比較します。

コテージ・ヴィラ

コテージやヴィラは基礎工事を伴う木造・鉄骨造の建築物です。耐久性と快適性に優れる反面、建築費は高額になります。

グランペディアによると、ヴィラやコテージで10棟以上を整備する場合は「億単位の投資が必要になる」とされています。建築確認申請が必須で、設計士への依頼費用や審査期間も加わるため、開業までのリードタイムも長くなります。

参照元:グランペディア「グランピング事業の開業準備と事業計画立案のポイント」

ドームテント(海外製・国内製)

ドームテントはグランピング施設で最も採用されている宿泊構造物です。Dot Homesによると、海外製は100万円程度から購入できますが、日本の建築確認基準に合わせて作られていないため「最近では申請が通らないドームテントが増えている」と注意を促しています。日本製のドームテントは250万〜350万円ほどとされています。

参照元:Dot Homes「グランピング開業の初期費用とは?」

ただし、ドームテントの購入費だけでは宿泊棟としては完成しません。Dot Homesは「6mのドームテント1棟の購入費用は約100万円だが、建設や内装の費用も加味すると合計800万〜1,000万円はかかる」としています。ウッドデッキ、空調設備、断熱ライナー、家具・家電などの費用が上乗せされるためです。

主要メーカーのドームテント本体価格は以下のとおりです(詳細は別記事で解説しています)。

スクロールできます
メーカー本体価格(税込目安)価格に含まれる範囲
FDomes(ポーランド製)約179万〜388万円外幕・フレーム・内張・ドアなどセット
deluxs(中国製・国内代理店)約95万〜114万円外幕+フレームのみ

参照元:ドムハカタログ FDomes紹介ページ / deluxs公式サイト

インスタントハウス

インスタントハウスは、テント生地を空気で膨らませて内側から硬質ウレタンフォームを吹き付けて形成するドーム型の構造物です。法的に「工作物」として扱われるため、建築確認申請が原則不要です(行政判断による)。

インスタントハウスの価格は以下のとおりです。

スクロールできます
ラインナップサイズ価格(税込)
シンプル432,244,000円
シンプル503,080,000円
シンプル604,356,000円
ベーシック432,475,000円
ベーシック503,278,000円
ベーシック604,950,000円

本体価格に設営費が含まれているわかりやすい価格設定になっています。ドームテントとの大きな違いは以下の3点です。

  • 構造体自体が断熱材のため、断熱ライナーの別途購入が不要
  • 基礎工事不要・ペグやビスで固定する構造のため、ウッドデッキの施工費を削減可能
  • 建築確認申請が原則不要のため、設計費・申請費がかからない

つまり、本体価格だけでなく「付帯費用の削減」という面でもコストメリットがある構造です。

宿泊構造物の費用を比較するときは、「本体価格」だけでなく「内装・断熱・デッキ・建築確認を含めた総額」で見ることが大切です。本体が安くても、付帯費用で逆転するケースは珍しくありません。

建築確認が不要だと何が節約できるのか

グランピングの建築費を抑えるうえで、見落としがちなのが「建築確認申請の有無」によるコスト差です。宿泊構造物が建築基準法上の「建築物」に該当すると、本体価格には含まれない費用が追加で発生します。

建築確認申請で発生する費用

リゾートグランピングドットコムが公開している投資計画の費用項目には、「設計費用」「建築確認申請・設計料」が明記されています。建築確認が必要になると、以下のような費用が追加で発生します。

参照元:リゾートグランピングドットコム「グランピング経営情報/事業計画・モデル収支・開発費用」

  • 設計士(建築士)への設計料
  • 構造計算書の作成費用
  • 建築確認申請の審査手数料
  • 完了検査の手数料
  • 申請に伴う行政書士等への依頼費用(該当する場合)

これらの費用は、1棟あたり数十万円〜のオーダーになるケースがあります。10棟を整備する場合は、その棟数分が積み上がる形です。

さらに、建築確認の審査期間(通常1〜2か月程度)が加わることで、開業スケジュール全体が後ろ倒しになり、その間の土地賃借料や人件費といった「機会コスト」も発生します。

「建築確認不要」が初期投資に与えるインパクト

法的に「工作物」として扱われる構造物(インスタントハウスなど)を選べば、上記の設計費・申請費がそのまま不要になります。加えて、基礎工事が不要なためデッキ工事のコストも削減できます。

グランペディアは「テントでグランピング事業を計画する場合は、デッキ工事費、テント購入費、管理棟建築費、電気引き込み工事、水道設備工事、家具、家電の購入費などを合算しても一室500万円までで整備できる場合がある」と述べています。特に管理棟の整備が不要な場合は、初期投資の回収が1〜2年になるケースもあるとのことです。

参照元:グランペディア「グランピング事業の開業準備と事業計画立案のポイント」

スクロールできます
費用項目建築確認が必要な構造物建築確認が原則不要な構造物
設計費・建築確認申請費発生(数十万円〜/棟)原則不要
構造計算書の作成発生原則不要
審査期間1〜2か月程度不要
基礎工事必要不要(ペグやビスで固定)
断熱材の追加費用別途必要(ドームテントの場合)不要(構造体自体が断熱材)
「建築確認不要」は単なる手続きの話ではない

建築確認が不要ということは、設計費・申請費・審査待ち期間・基礎工事費という複数のコスト項目がまとめて削減できるということです。「手続きが楽になる」だけでなく、初期投資の総額と開業スケジュールの両方に大きなインパクトを与えます。

安さだけで選ぶリスクとトータルコストの考え方

建築費を安く抑えたいのは当然ですが、「本体価格が安い=トータルコストが安い」とは限りません。安さだけで宿泊構造物を選んだ結果、ランニングコストが膨らんだり、建築確認が通らず計画変更を迫られたりするリスクもあります。

天幕交換・メンテナンスの費用

ドームテントの場合、フレームとは別に天幕(外幕)の定期交換が必要になります。パレスリンクの情報によると、ドーム型テントは2〜3年ごとに天幕を交換する必要があり、その費用は1張あたり40万〜50万円とされています。

参照元:パレスリンク「グランピングを事業にしたい!建設費用を安くあげる方法とは?」

仮に10棟を運営している場合、3年ごとに400万〜500万円の天幕交換費用が発生する計算です。本体価格が安くても、このランニングコストを見込んでおかなければ、長期的な収益計画に狂いが生じます。

建築確認NGリスク

Dot Homesは「海外製の安価なドームテントは日本の建築確認基準に合わせて作られていないため、最近では申請が通らないドームテントが増えている」と指摘しています。

参照元:Dot Homes「グランピング開業の初期費用とは?」

建築確認が通らなかった場合、別の構造物への変更や、設計の修正・再申請が必要になります。すでに発注済みのテントが使えなくなるリスクもあり、「安く買ったつもりが結局高くついた」という事態を招きかねません。計画地を管轄する土木事務所への事前相談は、費用の大小にかかわらず必須です。

1年あたりのコストで比較する視点

パレスリンクは「購入価格が安いものと、購入価格が高くても将来的に客単価を高く見込めるものを適切に組み合わせることで、結果的にコストを安く抑えることができる」と述べています。

参照元:パレスリンク「グランピングを事業にしたい!建設費用を安くあげる方法とは?」

宿泊構造物を選ぶ際は、以下の計算式で「1年あたりのコスト」を比較してみてください。

1年あたりコスト =(本体価格 + 付帯費用 + メンテナンス費用の合計)÷ 想定使用年数

本体価格だけの比較では、天幕交換が不要な構造物や断熱材の追加費用がかからない構造物のコスト優位性が見えてきません。トータルコストと1年あたりのコストで比較することで、より適切な投資判断ができます。

グランピングの建築費・低コスト開業でよくある質問

グランピング開業の初期費用はどのくらいですか?

Dot Homesは最低4,000万円、ダイナテックは2,000〜5,000万円を目安としています。ただし管理棟を新築するかどうか、宿泊構造物に何を選ぶかで大きく変わります。管理棟の新築が不要で、テントタイプの宿泊棟を採用する場合は、グランペディアによると1室500万円以内で整備できるケースもあります。

ドームテント1棟の導入費用は本体価格だけですか?

本体価格だけでは済みません。Dot Homesによると、6mのドームテント1棟の購入費用は約100万円ですが、建設や内装の費用も含めると合計800万〜1,000万円かかるとされています。ウッドデッキ、空調、断熱ライナー、家具・家電などの費用が上乗せされます。

建築確認が不要な宿泊構造物を選ぶと、どのくらいコストが変わりますか?

建築確認が不要になると、設計費・建築確認申請費・構造計算書の作成費・審査期間中の機会コストが丸ごと削減できます。金額は案件によって異なりますが、1棟あたり数十万円〜の節約になるケースがあります。棟数が増えるほどインパクトは大きくなります。

安い海外製ドームテントを選んでも大丈夫ですか?

Dot Homesによると、海外製の安価なドームテントは日本の建築確認基準に合わせて作られていないため、最近では申請が通らないケースが増えています。建築確認が通らなければ別の構造物への変更や設計の修正・再申請が必要になり、かえってコストが膨らむリスクがあります。計画地の土木事務所に事前相談のうえ判断しましょう。

初期投資の回収期間はどのくらいですか?

グランペディアによると、2016年頃に開業したグランピング施設の多くは2〜3年で初期投資を回収しています。初期投資を小さく抑えれば黒字確保の難易度が下がり、稼働率20%程度から採算を合わせられるリスクの低さが特徴です。ダイナテックは「初期投資は予測年商の2倍以内」を理想としています。

まとめ

グランピング建築費・低コスト開業のポイント
  • グランピング開業の初期費用は2,000万〜5,000万円が目安。管理棟の整備と宿泊構造物の選択が費用を左右する
  • 宿泊構造物はコテージ(億単位の可能性)、ドームテント(本体100万〜350万円+付帯費用)、インスタントハウス(約224万円〜、設営費込み)と選択肢によって数倍の差がある
  • 建築確認が不要な構造物を選べば、設計費・申請費・基礎工事費・審査待ち期間をまとめて削減できる
  • 本体価格の安さだけで判断するのはリスクが高い。天幕交換コストや建築確認NGリスクも含めたトータルコストで比較を
  • 「1年あたりのコスト」で比較することで、長期的に最適な投資判断ができる

グランピングの建築費を安く抑えることは、経営リスクの低減と投資回収の早期化に直結します。ただし、安さだけを追求するのではなく、建築確認の要否、付帯費用、メンテナンスコストまで含めた「トータルコスト」で判断することが、低コスト開業を成功させるカギです。

インスタントハウスは、建築確認が原則不要(行政判断による)で、本体価格に標準設営費が含まれ、構造体自体が断熱材のため追加コストも少ない構造物です。グランピングの建築費を抑えつつ、快適な宿泊環境を実現したい事業者の方は、ぜひ詳細をご確認ください。

監修者

山中典(やまなか つかさ)

株式会社LIFULL ArchiTech 取締役COO/名古屋工業大学共同研究員。インスタントハウスの開発・事業を軸に、災害支援から多様な空間活用まで幅広く展開している。

東証プライム上場LIFULLグループ|導入実績240棟以上

目次